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夏だからひんやりとした本を

どうも、重い話題ばかりが続いてしまっている気がするので、閑話休題。

夏の読書には水色の本がよく似合う。
そしてだいたい、冷たい食べ物の本だ。

食べ物のアンソロジー本は多い。このシリーズも、いろいろな作家のエッセイが集められていて、冷たい夏の甘いもののエピソードがそれぞれの語り口で楽しめる。

やっぱりひんやりとタイトルをつけたくなる、そのまま氷について書かれた本だ。単に、かき氷の作り方とか美味しいかき氷屋さんを紹介しているのではなくて、氷とわたしたちの生活をつなげる本。食に関する専門書には定評のある池田書店さんのただのかき氷本ではない、氷の本。

ただもうジャケ買いしたくなるような鮮やかな水色と美しいアイス。
旅先の頼りになるガイド、というか全国のてみやげものやおいしいお菓子を、間違いなく教えてくれる甲斐みのりさん。全国の定番ものから変わったものまで、ただただアイスクリームを紹介する。久しく喫茶店でアイスなんて食べてない気がする、食べたい。

中谷宇吉郎さんは、雪の研究者だ。彼の地元(は妻の地元でもある)の加賀には、雪の科学館なるものがあって、そこには雪を作る装置などが実際に置いてあって意外と見どころがあって面白い。
この本に書かれているのは、雪のことだけではなくて、たとえば線香花火の話などもある。淡々と科学的に線香花火を夏休みの研究のように観察しているのだけれど、なぜこんな雪と無縁のことを仕事にしてやっているんだろう、とも思うが、線香花火の美しい火花は、どこか雪の結晶にも似ている。彼の文体はそういう叙情を抜きにした科学者の視点で書かれているが、たまには役に立たない、意味のないものにも興味をつきつめる、そういう科学がどんどん消えていくことの憂いをどこか感じさせる。このシリーズは、だいたい終章に次の世代の子どもたちへのメッセージが込められているが、宇吉郎もまた、型にはまらない科学と自然への向き合い方をおすすめしている。

連休中の、ひんやりとした夏の読書のお供にぜひ。

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