たくさんのことを全部できないけど

忙しいな、と思うとき、たぶんいつもより早く歩いているんだと思う。なのに、周りの人はもっと早い足取りで歩いていく。世の中の流れはどんどん加速していて、とても追いつけないなと思う。

たくさんのものを抱えていると、どうしてもこぼしてしまうものが出てくる。それでも、たくさんのことをやりたくて、たくさんのものを抱え込んでしまう。全部できないけど、全部やってみたい。読んでいない本がどんどん溜まっていくのもそのせいかもしれない。

街の道で、歩いていて突然立ち止まったら、周りの人はびっくりするだろうか。でも、なんとなくときどき立ち止まりたくなる。立ち止まって、ゆっくりとカメラを取り出してその景色を切り取る。これがいま私が見ている世界なんだ、と残しておきたいから。

立ち止まって、考える。たくさんの楽しそうなこと、やりたいこと、やっぱりできそうにないこと、いつかはやってみたいこと。全部やることはできないけれど、ちょっとその世界を覗いてみたくなる。いつもとは違う道を通ってみたくなる。

春はちょっとわくわくする。だれかの新しい一歩をみて、いいなぁと思う。楽しそうだな、と思う。でもそんな春の熱にあてられすぎると倒れてしまうから、全部はできないよ、と心にブレーキをかける。わたしの歩く速さはゆっくりだから。はやる気持ちと、ゆっくりしかできない歩み。こころとからだが少しちぐはぐして、春はなんだか忙しく感じる。

そんなふうにいったりきたりしながら、新しい季節はめぐる。