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ブルックリンの「わかりやすい本屋」。

"It has to make you happy when you say it."
「口にするたび、幸せな気持ちになる名前にしたかった」

この夏、ブルックリンのBooks Are Magicという本屋に入って「幸せな気持ち」をもらった。

その二ヶ月ほど前にオープンしたばかりの本屋は、オープンの日にはすでに素晴らしいストーリーが備わっていた。

ニューヨークは私の大好物、古本屋(とカフェ)の宝庫で、数年前の仕事とお金のない日々を、私は本屋巡りして過ごしていた。

ブルックリンのコブルヒルというエリアには長年愛されていたBookCourtという本屋があって、私もわざわざマンハッタンから地下鉄に乗り、ふらっと立ち寄った風を装っていました(笑)。

35年間、family businessとして続いたその書店は、オーナーの「引退(retirement)」を理由に閉店してしまうというニュースが流れた時、多くのアーティストや作家が暮らすブルックリンの住人、そして業界に衝撃が走った。2016年12月6日のNY Timesでも大きく取り上げられました

その時、なのです。アメリカの作家エマ・ストラウブと旦那さんが立ち上がったのは。「私たちが存続させます!」と。

ニューヨーカーも苦笑するほどトレンディーになってしまったブルックリンですが、そんな中でインディペンデントブックストアは「古き良きNY」と繋いでくれる大事なタッチストーンなのだ。このエリアはもともとBookCourt一軒しかなく、なくなったら困る、という住人の声に応えるカタチで、本物のスーパーマン、いや、スーパーカップルが立ち上がりました。

なにがすごいって、日本での知名度は低めかもしれませんが、ストラウブはアメリカではちゃんと(すごく)売れていて、NYタイムズベストセラー作家でもあるということ。まだ30代前半と若く、幼い子供がふたりいる。

それが、ビッグネームのオンラインブックショップの出現によりパタパタと扉を閉めざるを得ない本屋が続くこの時代に、「本屋を開く」とは。

最近、Books Are Magicオープン前のストラウブのインタビューを読んだのですが、そこで彼女が言ってたのが、冒頭の言葉。

お店の名前にしては、アメリカ人も認めるベタ。でもそのストレートさがアメリカンで、わかりやすくて、伝わりやすい。(ネットの時代に突入し、英語でも「ウィットに富んだ(witty)」言葉がもてはやされるようになった今、ベタなほどにストレートな表現を選んだこと自体がひとつの「表現」と捉えらえるかもしれませんね。)

本を愛する人間は、本にもだけど、本を愛する人間に救われてる。それは日本でも、世界中でも、そう。

If you go to Brooklyn, please stop by. ブルックリンに行くことがあったら、ぜひ覗いてみてください。マンハッタンからわざわざ行く価値、ありです。

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