雑談という日常にありふれた地獄について考えてみたこと
地獄というものは何もトイチの借金に手を出してヤクザに追い回されているとか、かろうじて一回だけエンタの神様に出演したことのある芸人の、地方のイオンモールお笑いショーに客自分一人だけとか、スタバの隣の席に座った人が昨日恋人と別れたばかりでその友人による恋愛反省会をこっちも聞かされるとかそういうことではなくて、もっとずっと日常にありふれている。つまり雑談だ。
仕事柄、雑談の機会に不幸にも恵まれているが、これだけは本当に頂けない。
▼雑談累積難易度問題
雑談の累積難易度について考えたい。雑談のネタに困るとはよく聞く悩みだが、正直なところ最初の方は困らない。天気とか交通ルートとか最近の調子とか相手の仕事とか私生活について、ライトなところから話始めていく。
問題は、質問を重ねていくとそれと比例する形でこれまで交わした情報量が増えてしまって、それを整理し、記憶するのが大変になってしまうことだ。グラフを見て欲しい。会話の持続時間が長くなればなるほど、所有した情報量とすでに聞いた質問事項が増えている。雑談は今の話題に集中しながら、直近に得られた情報の短期記憶と整理を同時並行する行為である。
その上すでに得た情報に対して、辻褄が合うように別の質問をして行かねばならない。記憶・整理・理解・想像を一度に同時に行いつつ、相手への興味関心を保ち続けることはなかなか容易なことではない。
自分の場合は、話の中で直近に出た話題に集中してしまったり考えてしまうので、相手がすでに話した周辺情報や最初の設定をつい、忘れてしまうことが多い。それで噛み合わない質問を返してしまって、相手に怪訝な顔をされてしまう。話に興味がないわけではなく、実は興味があって考えてしまうから、ベースとなっていた話題のことを忘れてしまいやすいのだが、それは当然相手に伝わりにくい。地獄。
雑談とは、実は要点の記憶力とマルチタスクの勝負なのだ。
情報を忘れないようにしてみたら、と思うだろうが雑談の間は自分の自由時間ではなく、相手のペースにも帳尻を合わせる必要がある。むやみにじっと考え込んだり止まったりいちいち確認したりしてはいけない。経験則的にこれをすると、真面目すぎるとか暗いと思われやすい。また、相手に失礼の無いように質問内容は配慮する必要があるから、脊髄反射的に対応していればいいわけではない。
この情報の累積爆増問題は、ビジネス上の会話や商談でも発生しているように見えるが、目的のある会話はもっと楽である。確認事項がはっきりしているし、会話をする目的があるので得るべき情報量はコントロールしやすい。また、雑談とは違って途中で確認したりこれまでの振り返りと称した話の整理がしやすい。論点を露わにできるので、次に話すべき話題やテーマに困ることはない。
雑談はもっとラフで自由なように見せかける必要があるので、難しい。地獄。
▼雑談2ラウンド目問題
雑談の“2ラウンド目”と呼んでいる事態がある。飲み会やパーティーなどでひととおり話して、疲れ切ってエネルギー切れを起こした頃合いに、会場からの帰り道などでさっき話していた人とまた会って、駅まで一緒に行かなくてはいけない状況下のことだ。飲み会など話す本番は1ラウンド目で、大抵は他人と喋ることは折り込み済みなので気合が入っているし、それなりにベストを尽くす。しかしそれがひと段落した後は、もう人間の絞りカスみたいなものだ。何も出ない。
変に「じゃあちょっとコンビニ寄ってきますね」とか「トイレに行きます」といって一人になるのも何か嘘くさい。仮に相手が「あ、私も〜」などと言われた暁には、絶望しかない。
飲み屋のような開かれた場所で第三者を話に混ぜてネタの新規性を図ったり、食事内容とか店の雰囲気に言及するとか、最近の調子を聞くという王道のネタが使えない。これはまんじりとした柔らかい精神的密室空間、路上のように見えて閉ざされた空間、目の前を行き交う車とか夜景とか酔っ払いの群れとか実のところ目に入ってこない。
何と言っても先ほどは張り切って会話していただけに、「あれ、この人さっきはあんなに明るかったのに・・・?」みたいな感じが相手に漂っていると本当に辛い。さっきの自分はもう品切れで、もう死んだということにしたい。
これらの問題について、解決しうるアイデアをお持ちの方、ぜひ教えてください。
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