発酵・捏ね不要+材料2種の速成パンを全行程1時間で作成した

細かい話は後にして、まずはレシピ。

レシピ

材料
・天ぷら粉 米用の計量容器 4杯
・ビール(または炭酸飲料) 350ml 1缶
    ・使用する炭酸飲料の味がパンの味に直結する
    ・IBUの高いIPAなどのビールを使うと必要以上にパンが苦くなる
    ・IBUの低いラガーや白ビールなどであれば苦くならない
    ・ヨーロッパのビール缶は330mlなので、その場合は粉量を調整する
オプション
・油 分量外 バターやオリーブオイルなどが良さそう
・砂糖 大さじ4 甘くしたい場合
・はちみつ 入れたいだけ 甘くしたい場合
手順
1. ボウルに天ぷら粉とビールを入れて混ぜる
2. 生地が全体的に濡れればよい。混ぜすぎない
3. ミートローフ型や大きいパウンドケーキ型に油を塗る(型離れを気にしないなら塗らなくても良い)
4. 生地を型に入れて180度に予熱したオーブンで50分焼く

細かい話

まえがき
ホームベーカリーが売れるのは、そもそもパン作りが面倒だからではないか。いくらパンが好きだったとしても、生地を捏ねたり何時間もイースト菌の発酵を待つなんて、趣味がパン作りという人以外はとても続けられない。料理の手間を考えれば、近所の美味しいパン屋の方がずっとコスパは高いはずだ。本レシピはそんな面倒なパン作りを極力簡単に行えるようにしたもので、Beer Bread(ビールパン)を原型としている。私が様々なビールパンのレシピを見比べたところ、共通する要件としては小麦粉 + ベーキングパウダー + ビールのようであった。このうち小麦粉 + ベーキングパウダーの部分を天ぷら粉で代替したのが今回のレシピである。

I. ビールパンがビールを使う理由の考察
実は通常のパン焼きで用いるドライイーストの代わりとして、ビールに含まれる酵母で発酵させるわけではない。市販のビールの多くは酵母を濾過済みで、発酵用途には適さない。ビールパンでは、代わりにベーキングパウダーという膨張剤を利用する。主にアイルランドで食されるソーダブレッドのような速成パンでは、ベーキングソーダ(重曹)という膨張剤が発生させる二酸化炭素のみで生地を膨らませるが、ビールパンは膨張剤に加えてビールの炭酸を生地に含ませることで、よりふっくらと仕上がる。この原理からすると、ビールパンのレシピに使用する飲料は炭酸飲料でさえあればよく、コーラや炭酸水、トニックウォーターであってもビールと同様の役割を果たすことになる。私はビール以外の炭酸飲料を試したことはないが、きっとユニークなフレーバーのパンが出来上がることだろう。ではなぜ他の炭酸飲料ではなく、あえてビールを使用するレシピが今日まで生き残ったのか。おそらくベーキングパウダー発明前、重曹とビールの酸性度を利用してビールパン作っていた際に、ビールと原材料の近しい小麦粉自体の風味を生かし、重曹からくる独特な苦みとも相性が良く、食味が良好だったからではないかと私は推察している。

II. ビールパンで使用する粉について
ビールパンに使用される小麦粉については以下が一般的なようだった。

All Purpose Flour(中力粉) + ベーキングパウダー
もしくは
Self Rising Flour(ベーキングパウダー入りの小麦粉)

しかし実際は、米粉や(Nixtamalization済の)トウモロコシ粉など、どんな種類の粉を使ったとしても、ベーキングパウダーとビール(などの炭酸飲料)を混ぜさえすればある程度膨らんでパンになるはずだ。ただし、普段からお菓子を焼くような人間でなければベーキングパウダーはキッチンに存在しないだろう。手に入れようと思えば100均などにも売っているので、様々な粉でビールパンを焼いてみたくなった人は手に取ると良い。そしてSelf Rising Flourについては、そもそも日本のスーパーに売られているのを見たことがないものの、実は似たような配合の粉が販売されている。それが今回のレシピで紹介した日本料理用の魔法の粉、天ぷら粉である。原材料に小麦粉のほかベーキングパウダーが含まれており、粉だけ計ってビール1缶分と混ぜるだけで計量や洗い物の手間も少ない上、塩などで調味されており味も決まる。この話でいくと、お好み焼き粉でも同様のレシピでパンが焼けるが、お好み焼き粉の場合には出汁が入っていたりするので、パンを甘くしたいという場合には向かず、お好み焼きの風味もかなり強い。

III. ベーキングパウダーをレシピから抜くとどうなるか
出来上がるのは日本では乾パンの名で知られるHardtack(堅パン)だ。余談だが小麦粉と水の比率を4:1から2:1程度で塩を加えて混ぜた後、こねて1-2cm程度の板状にしたものを型どりし、楊枝などで穴あけをして180度に予熱したオーブンで30分程度焼くと伝統的な堅パンが出来上がる。もちろん保存性も高いが、いかんせん防災時の保存食としてどこのスーパーでも市販されているような堅パンを、どうしても家で作りたいというニーズはあまりないのではなかろうか。

Appendix: 様々なアレンジのアイデア
レシピの材料をビール以外の炭酸飲料に替える、あるいは前述したような小麦粉以外に替える、または塩や砂糖の量を変えるのは根本的な味の変化につながる。あるいはレシピはそのままで、好みの材料を足すことで、アレンジを加えることもできる。以下に実際に私が試した材料と今後試したい材料のアイデアを記載しておく。

試したアレンジ
・ミックスナッツ(砕くと良い)
・ハーブ(ローズマリー、タイムなど)
・チーズ
・ごま
・胡椒
試したい素材
・ドライフルーツ
・チョコレート
・ベーコン
・ガーリックパウダー
・オニオンパウダー

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