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はだしのゲンについて

最近、とあるニュースをネットで知った。
広島市教育委員会が平和教育教材から「はだしのゲン」を削除することを決めたことに対して、教職員組合や被爆者団体などが撤回を求めた件である。
今日ははだしのゲンについて書いていきたいと思う。

1 はだしのゲンとの出会い

私がはだしのゲンをはじめて読んだのはやはり小学生のときだ。
小学生のときは活字よりも漫画を読みたかった子供であり、図書室で漫画を求めて彷徨っていた。
横山三国志や学習漫画の他に劇画調の漫画を発見したのだった。
それこそがはだしのゲンである。
この漫画を読んでみたら、登場人物たちが生き生きとしていて驚いた。
戦時中から戦後の広島が舞台であるのだ。
歴史の授業で広島・長崎に落とされた原爆の凄惨さは教師に説明された。
だから、湿度の高い作品だなと思った。
しかし、登場人物たちはあの時代だからこそ闇市を開いたり、暴力をふるったりする生き生きさを持っていた。
そういえば、「仁義なき戦い」も戦後すぐの広島が舞台であるし、暴力と金と血が絡み合った映画だった。

だが、この漫画を読んで私の中には何故か大人への怒りが生まれた。
何故なのかこの時の私にはまだ分からなかった。

2 空っぽの日本人

私は就活中に偶然見つけた。
宮台真司氏のネットニュースだ。
宮台真司氏が三島由紀夫の発言から「敗戦後、天皇主義者から民主主義者に変わった」と引用した。

'70年、自決前の三島由紀夫は「日本はからっぽ」と書きました。日本では一夜にして天皇主義者が民主主義者に豹変する。価値を貫く構えがなく、上と横を見てポジション取りをする。

https://gendai.media/articles/-/101911?page=1&imp=0
既得権益を温存し衰退する日本…社会学者・宮台真司「愚かな総理を生み出したのは、からっぽの民衆だ」


その記事を読んだとき、私ははだしのゲンを思い出した。
はだしのゲンには鮫島という人物が登場している。
鮫島という男は、戦時中は戦争に反対していた中岡一家(ゲンの家族)を苛め抜き、敗戦後は平和主義者に転向して政治家になった。
また、記憶が定かではないが教師たちも戦時中は戦争や体制に抵抗したゲンに体罰を加えたくせに、戦後は平和の時代だからといっていることに怒りを覚えた。
まさにこれらが示すように「空っぽの日本人」だ。

3 何故空っぽなのか

そもそも何故日本人は空っぽなのだろうか。
それは太平洋戦争を総括せず、反省したふりをしてなおかつそれを自分たちに許しているからである。
敗戦後、戦争責任を裁かれずに政界に復帰した者はいるし、財界では三井や三菱は解体されたが再統合されており、不徹底に終わっている。
これにはそうせざるを得なかった背景がある。
1950年に朝鮮戦争が勃発した。
当時の西側陣営にとっては共産主義勢力が韓国や日本、そしてアメリカのアジアの覇権に軍靴を鳴らしつつあったのだ。
そのため、自由化したことにより共産化しては西側にとって本末転倒であるため、韓国には軍事独裁政権が存在したし、日本では岸信介などの戦前のファッショたちが戦後に政治家になることができた。
また、東側に独裁政権が多かったことから共産主義を独裁政治、西側陣営つまり資本主義を民主政治だという風に考える者がいる。
それは誤りである。アメリカはCIAを使って、チリに民主的な手続きで成立した社会主義政権をピノチェトと共謀して転覆している。
その後、新自由主義的な経済路線を実施したことは事実であり、西側陣営もしっかりと独裁政権を打ち立てているのである。
また、中国は資本主義的な経済政策を実施しており、権威主義と資本主義は相性が良いことは今生きている我々には明らかなのである。
このことから共産主義を独裁、資本主義を民主という風に区別する連中のことを冷戦脳と呼ぶことにしよう。
話を戻す。
朝鮮戦争が勃発したため、反共のために戦前の保守勢力を登用した。
事情も事情だ。
しかし、戦前の政治家や官僚、軍人たちに天寿を全うしたものがいること、韓国の独裁政権に経済の援助を大義名分に資金を渡して戦争責任をうやむやにすること。
これらの態度は反省したと言えるのか。
こういう議論を教育などで行わなかったことこそ、反省したふりではないのであろうか。
また、我々国民も同罪だ。
政治家が靖国神社に参拝することが中国や韓国に取り上げられる。
あなたは靖国に参拝したって良いだろ、と思うのかもしれない。

戦死して靖国神社に祀られることが最高の栄誉だと信じられたのは、まさに国家の代表が参拝し戦死者の「尊い犠牲」を褒めたたえたからなのだ。

https://www.webchikuma.jp/articles/-/55
首相の「靖国」参拝 何が「問題」か

靖国問題のもっと本質的な問題は、加害者が犠牲者を「英霊」として「顕彰」することによって加害の本質を隠し、次の「犠牲」を強要するイデオロギー機能にあります。

https://www.psaj.org/100points72/
100の論点:72. 靖国神社とは何でしょうか。

以上の引用のように靖国神社は大日本帝国のイデオロギーを担保する霊的施設だ。
先達の臣民が天皇のために戦死したのだからお前も後に続けと強要するのである。
そんな靖国神社に現職の国会議員が参拝して、国民も参拝しても問題ないという無知っぷり。
そんな者をだれが反省していると思うだろうか。

4 結論

私ははだしのゲンを平和教育教材から外すことに反対である。
なぜなら私が一夜にして天皇主義者から民主主義者に転向したものに対する怒りも冷戦脳にも戦後史や靖国神社のことについて興味を持てたのもはだしのゲンがきっかけのひとつだからだ。
ただでさえ戦争を経験している方が亡くなっている現実があるのだ。
風化を防ぐためにもはだしのゲンは忘れられてはならない。


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