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テニスにおけるオリンピック代表選手決定の方法②テニス競技の「決まり」を見てみる

前回の投稿で、オリンピック代表選手の決定方法は、IF(国際競技連盟)が定めるOlympic Qualification System(以下、「OQS」といいます)によって決められているという話をさせていただきました。

では、テニスにおける代表選手決定の方法を見てみましょう。
東京五輪において、テニス競技のIFであるITFが策定したOQSは、こちらです。
まず、これを見ると、代表選考の方法は「(The quota place is allocated to the)athlete(s) by name.」となっています。つまり、ITFが個々の選手個人に対し、その制定した条件に従って代表枠を割り当てることとなっています。
では、どのように割り当てることになっているでしょうか。
とりあえず、男子シングルスを念頭に考えてみます。
下部の「QUALIFICATION PLACES」中の「Singles Qualification」を見てみると、男女別でそれぞれ64名の選手が競技に参加できることとなっています。そして、
「Each singles event shall consist of a draw of 64 athletes, with a maximum of four (4) athletes per NOC.
64 athletes for the men’s and women’s singles events will qualify as follows:
 56 Direct Acceptances, based on the Singles Rankings of 14 June 2021
 8 Final Qualification Places (“ITF Places”)」
という記載があります。
要するに、シングルスのドローサイズは64人の選手で構成され、一つのNOC(一国)につき最大4名の選手によって構成されます。64ドロー中、56名は2021年6月14日付の世界シングルスランキング(以下「ATPランキング」という)に基づいて決まるということです(残り8名は特別枠)。
ここで問題となるのが、国内でATPランキング上位に大勢の選手がいる場合です。スペイン、フランス、ロシアといった強豪国は、対象となるランキングに4名を超える上位選手がいますよね。
こういう場合は、どうするのでしょうか。
このヒントになるのが、やはりOQS上の記載です。
「An NOC/National Association which has more than four (4) athletes inside the cut-off ranking for direct acceptance into a singles event must select its four (4) highest ranked athletes based on the “Singles Rankings” (as defined below) of 14 June 2021.」
つまり、シングルス競技において直接出場資格を得る(Direct Acceptance。以下、「DA」という)のためのカットオフランキング内に4を超える選手を擁するNOC(NF)は、2021年6月14日付けランキングにおいて、最もランキングの高いほうから4名の選手を選ばなければならない(must)、となっています。

ここまでをまとめると、ITFは、ランキングに基づいて56名の選手をDAさせることにしている。ランキング上対象となる個別の選手に出場枠を与えることにしており、NOCはこれに対応する選手を登録することとなる。もし1国あたり4名以上対象選手がいるなら、NOCは最もランキングの高い4名を選ばなければならない。ということになります。

これが制度の説明ですが、実は、オリンピックのテニス競技出場資格に関してスポーツ仲裁裁判所で争われた事例があります。
次回、北京大会の事例と、直近の東京2020大会の事例を紹介して、完結としたいと思います。

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