弁護士 山本衛

法律事務所創衛代表弁護士。 全日本男子プロテニス選手会監事。 スポーツ法に強い関心を持…

弁護士 山本衛

法律事務所創衛代表弁護士。 全日本男子プロテニス選手会監事。 スポーツ法に強い関心を持ち、特にテニス関係事業者支援、選手支援に力を入れています。 中小企業法務、一般民事から刑事事件まで幅広い事件を取り扱っています。

マガジン

  • テニス関係者の法律相談室~弁護士の視点~

    • 46本

    テニス関係者に損をして欲しくない!そんな思いから、テニスバカな法律関係者が、テニス関係者が遭遇する様々な場面を法律的な面から解説します!

最近の記事

「オールドルーキー」のドーピング回

こんにちは。弁護士の山本です。 先日、ドラマ「オールドルーキー」でドーピング問題を取り扱った回を見て、Twitterでつぶやきました。 結構反響をいただきありがとうございます。 今日は、これに関連して、ちょっとTweetとは別の考察をしてみようと思います。 【この記事は「オールドルーキー」のストーリーに関するネタバレを含みます!!!ご注意ください】 「オールドルーキー」終盤の、社長の一言この回は、スポーツマネジメント会社に勤務する主人公がサポートしていた水泳選手が、アン

    • NFTゲームと投資

      NFTとは? 仮想通貨(暗号資産)の発達に伴い、近時「NFT」という概念が注目を集めているのをご存じでしょうか。 NFTとは「Non-Fungible Token」の略称で、直訳すると「代替不可能なトークン」ということになります。 ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨は、法定通貨などと同様に価値代替物(厳密には物ではなくて、データ)であり代替性があるのに対し、NFTは非代替的だということです。なぜ非代替的かというと、そのNFTにはブロックチェーン技術を用いた固有のデータ

      • 【続報】カミラ・ワリエワ(Kamila Valieva)事案のアンチ・ドーピング規則上の整理

        一昨日、この問題に関する記事を書きました。 その段階ではプレスリリースしかなかったのですが、その後、決定書の全文が公開されたため、続報を書くことにしました。 決定文はこちらです。 一昨日の投稿では、決定の核心となる部分を、 と紹介しました。 今日紹介したいのは、まさにこの部分です。 前回の議論でも紹介したとおり、 です。 説明を簡単にするために前回の投稿では(※)部分の説明を省略していましたが、今回は議論の前提になるので少し踏み込みます。 アンチ・ドーピング規則上、禁

        • カミラ・ワリエワ(Kamila Valieva)事案のアンチ・ドーピング規則上の整理

          お茶の間を賑わせている表題の案件ですが、報道などで言及されている事実がどういう意味を持つのかについて誤解を招くような報道や、報道を受けて誤解のある市民の意見(もちろん、大変複雑なのでやむを得ないですが・・・)が見られましたので、アンチ・ドーピング規則に従って整理してみようと思います。 この記事にいうアンチ・ドーピング規則は、世界アンチ・ドーピング規則(WADC)を指しています(実際に直接適用になるのはロシアのアンチ・ドーピングルールですが、本件においてはほぼ同じ内容と考えて良

        「オールドルーキー」のドーピング回

        マガジン

        • テニス関係者の法律相談室~弁護士の視点~
          46本

        記事

          テニスにおけるオリンピック代表選手決定の方法③紛争事例の紹介

           前回の投稿で、オリンピックにおけるテニス競技の国別代表選手の決まり方について解説しました。  今回は、実際に紛争になった2つの事例を紹介します。  一つは、2008年の北京大会のものです。スポーツ仲裁裁判所(CAS。スイスのローザンヌにあるスポーツ紛争の解決組織です)のアドホックディヴィジョン(オリンピックの時だけ設置される特別部)の事例です。  この事例は、シングルスのドイツ代表が誰になるべきかが争われた事件でした。代表選手としてドイツから選出された選手の一人が、ライ

          テニスにおけるオリンピック代表選手決定の方法③紛争事例の紹介

          テニスにおけるオリンピック代表選手決定の方法②テニス競技の「決まり」を見てみる

          前回の投稿で、オリンピック代表選手の決定方法は、IF(国際競技連盟)が定めるOlympic Qualification System(以下、「OQS」といいます)によって決められているという話をさせていただきました。 では、テニスにおける代表選手決定の方法を見てみましょう。 東京五輪において、テニス競技のIFであるITFが策定したOQSは、こちらです。 まず、これを見ると、代表選考の方法は「(The quota place is allocated to the)athle

          テニスにおけるオリンピック代表選手決定の方法②テニス競技の「決まり」を見てみる

          テニスにおけるオリンピック代表選手決定の方法①オリンピックでの代表の決め方とは?

           私のブログでも一度記載したネタですが、noteでも共有すると前回宣言したので展開しようと思います。  今日から数回に分けて、テニス競技におけるオリンピックにおける代表選手の決定について議論したいと思います。  オリンピックにおいて国を代表する選手がどう選ばれているか、ご存知でしょうか。漠然と、国が選んでいる、と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、それは不正確です。  オリンピック憲章によれば、オリンピック競技大会に競技者やスタッフを派遣する権利を有するのは、NO

          テニスにおけるオリンピック代表選手決定の方法①オリンピックでの代表の決め方とは?

          どうでもいい命の話

          1 今日のテーマ  こんばんは。  今日はいつものテニス法関係の記事ではありません。  テニス法研究チームで、「テニス法に限らずいろいろな意見をノートに書いていこう」という話をしたので、今日はテニス法にとらわれないテーマです。  例の、某「メンタリスト」さんの発言の件です。  この発言に対してはたくさんの批判があり、僕の周りだけ見ても「誰にでも生きる権利がある」「皆の命は等しく価値がある」など、様々な意見が聞かれました。僕も全く同感です。  僕は叩かれている人をさらに袋叩

          どうでもいい命の話

          法律家ってどんな専門家?③テニスのルールを題材に

          前々回↓ https://note.com/lawyeryamamoto/n/nb12fe3765daa と、前回↓ https://note.com/lawyeryamamoto/n/n47d56c6fbd3b の続きです。 事例のおさらいをしておきましょう。 私が、かみおひろみち@Kamy1126先生とテニスのシングルスのゲームをしていました。しかし、ゲームの途中、かみお先生が「山本がボールを打つ時のうなり声が大きすぎて集中できない。これは故意の妨害ではないか」と主張し

          法律家ってどんな専門家?③テニスのルールを題材に

          法律家ってどんな専門家?②テニスのルールを題材に

          前回↓の続きです。 https://note.com/lawyeryamamoto/n/nb12fe3765daa 前回は、テニスのルールを題材に、法律を事実に適用するというのはどういうことかを考えてみました。 今回も、同じようにテニスの事例を思い浮かべます。 私が、またかみおひろみち@Kamy1126先生とテニスのシングルスのゲームをしていました。しかし、かみお先生はなかなか本調子が出ない様子。どうやら、私がショットを打つたびに大きなうなり声を出すのが気になって、普段通

          法律家ってどんな専門家?②テニスのルールを題材に

          法律家ってどんな専門家?①テニスのルールを題材に

          裁判官、検察官、弁護士を総称して「法律家」といいます。 法律家というと、どんな専門家だと思いますか? 法律を全部知っていて、聞けば頭の中から法律が出てきて解決してくれる? そういうイメージを持たれる方が多いのですが、さすがにそんなに万能ではありません(笑)。よく使う法律はそうできることもありますが、法律は無数にありますし、さすがに調べないとわからないこともあります。 僕なりの解釈ですが、法律家の専門性とは、法律をたくさん知っていることではなくて「法的な考え方」ができるとい

          法律家ってどんな専門家?①テニスのルールを題材に

          アスリートの盗撮と法的責任

          近時、JOC(公益財団法人日本オリンピック委員会)が、アスリートへの写真・動画による性的ハラスメント防止の取り組みを強化することを発表しました。 これは、アスリートの競技中に性的目的を想起させる構図で写真撮影したり、撮影した写真をSNSに性的文脈でアップするなどの悪用が、アスリートの尊厳を害し、社会問題となっていることから、個々のスポーツ団体や競技会単位による対応ではなく、スポーツ界全体として対応を強化しようとするものです。 問題の発端は陸上競技のアスリートからの被害申告の

          アスリートの盗撮と法的責任

          テニス中の事故と法的責任 4/4「過失が認められた事例」

          テニス事故の法的責任の記事の最後は、法的責任が認められた事例です。 事案は、球拾い中に起こった事故の事例です(横浜地判昭和58年8月24日判時1091号120頁)。 【事案の概要】  本件の原告は,初級者クラスに在籍するテニススクールの生徒でした。当該レッスンでは,コーチが球出しを行い,ベースラインに立った生徒2名がバックハンドを打つという基本的な練習をしていました。ただこの時,コーチは残りの生徒に対し,球出しのボールが途切れないようにボール拾いを指示していました。  する

          テニス中の事故と法的責任 4/4「過失が認められた事例」

          テニス中の事故と法的責任 3/4「過失が認められなかった事例」

           さて、これまでテニス中の事故にまつわる法的責任の根拠や、「過失」概念についてお話してきました。  今回は、具体的な事例をもとに、それが実際に裁判でどう適用されているかについて覗いてみたいと思います。 今日紹介するのは,テニススクールの練習中に起きた事故の事例です。  横浜地判平成10年2月25日(判例タイムズ992号147頁)  【事案の概要】  本件は、テニススクールの最上級クラスに所属していたプレーヤーが原告となり、加害者となったクラスのプレーヤーに過失があるとして

          テニス中の事故と法的責任 3/4「過失が認められなかった事例」

          テニス中の事故と法的責任 2/4「過失」

          前回の記事では、テニスのプレー中に生じた事故によって法的責任を負う場合の、責任の根拠について記載しました。 そこにおいて、しばしば「過失」という言葉が出てきました。 今日はこの「過失」という概念についてお話ししたいと思います。 「過失」というのは、一般的な用語だと、ミスです。 もちろん法律用語というのは一般的な用語に即して作られているので、ざっくりいうと、「ミス」と理解していただいたいいのですが、実は法学では、過失をいくつかの要素に分解して考えることが多いです。 過失概念に

          テニス中の事故と法的責任 2/4「過失」

          テニス中の事故と法的責任 1/4「責任の根拠」

          弁護士の山本と申します。 私は個人ブログ「弁護士山本衛 on Court」  https://yamamoto-defender.com/ というブログを持っているのですが、この度noteを始めました。 「テニス関係者の法律相談室~弁護士の視点~」 というマガジンを、テニスを愛してやまない弁護士たちで書いていこうというプロジェクトを立ち上げたのがきっかけです。 個人ブログでの情報発信は引き続き続けていこうと思いますが、こちらのnoteの方は比較的ライトに読めるような記事を心

          テニス中の事故と法的責任 1/4「責任の根拠」