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【クリエイターの法務】図解・要約本を著作権から見てみる

図解などをTwitterやInstagram含めて書かれる方って増えましたよね。そのうえで、著作権侵害でファスト映画という映画の要約・紹介動画がひと騒動を巻き起こしましたね。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210826/k10013223621000.html

今回は、その辺の本だとかについて著作権の観点から整理したいと思います。

1  図解すること

図解するというのは、著作権的には、作品を図などとしてまとめるということになりますが、複製だとか翻案になり得るところです。

ざっくりといえば、そのまま載せるのは複製にあたる可能性があり、一部を略したりなどしていった場合には翻案にあたる可能性が出てきます。

著作者は、その著作物を複製する権利を専有する(法21条)。
複製「印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいい、次に掲げるものについては、それぞれ次に掲げる行為を含むものとする。」(2条1項15号)
著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する(法27条)。
翻案とは、「既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持つつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為」(最判平成13年6月28日:江差追分事件最高裁判決参照)

ファスト映画の話が取りざたされたのは最近ですが、裁判になったものとしては、コメットハンター事件(東京地判平成13年12月3日)などです。

①コメットハンター事件
 有限会社コメットハンターが、速読本舗というビジネス書の要約文を紹介するサイトを開設し、会員に対し、書籍を要約したメールを送信したり、会員募集目的でホームページ上に書籍要約文を無料公開するなどしたことで、江口克彦、竹村健一、田原総一朗をはじめとした要約の対象となった書籍の著者が著作権侵害を理由として提訴した事件(東京地判平成13年12月3日)※被告は出頭せず、自白が成立して終了したため、裁判所の判断はなし)

そのほかには、ウォールストリートジャーナル事件があります。

②ウォールストリートジャーナル事件
 ウォールストリートが、日本において「全記事抄訳サービス」と称して、新聞記事を抄訳した文書を作成・頒布する相手方に対し、編集著作物の著作権を侵害するものであるとして、その作成・頒布の差止めの仮処分を申し立てた事件(東京地判平成5年8月30日)※差止めの仮処分認容に対し、相手方が異議を唱え、この異議が棄却されたというもの。

著作権に限らずですが、有料の配信サービスなどで得た収益が他社の著作物にフリーライドしていると思われる場合、裁判もそうですが、警告などを受けるということがままあります。

フリーランスとして始めた仕事について、こういう警告を受けたという相談もあったりするところです。

2 要約本

いろいろな書籍について、その内容を要約した書籍も多く出版されているところですが、これについても同じように著作権に触れる可能性があります。

ただ、著作物の要約=ただちに違法ということではなく、内容をかみ砕くようにし、その表現自体を用いるのではなく、アイデアなど表現ではなくその根底にある考えなどが似通うだけでは翻案などに該当しない可能性が出てきます。

というのも、アイデアだとか考えのみでは、創作されていないということで著作権で保護されるものではないという形になるからです。

しかし、この辺りの線引きが難しいところなので、要約本を出したりマネタイズするときにはそれを専門家にチェックしてもらうなどしておいた方がいいかと思います。

3 まとめ

電子書籍などの増加に鑑み、出版社を介さずに自身で出版することも増えてきましたが、そうなってくると編集段階などである意味出版のプロの目が抜けることになっていきます。

そういった中で、わかりにくい著作権のトラブルというのは今後も増えていくと思います。

まずいかもというセンサーだけでも身に着けていただき、必要に応じてそのあたりを実際に相談する、調査するという意識をぜひ持っていただきたいと思います。

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