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結婚する前に知っておくべき7つの法的ルール

「好きな人と結婚したい」
「ずっとこの人と一緒にいたい」
「養ってもらって、仕事をやめたい」
「この人に財産を残したい」

結婚に対する価値観や動機は人それぞれです。
そしてそれを阻む法的な規定は、基本的にありません。

しかしながら、結婚は国の制度ですので、望む・望まないにかかわらず、色々な権利を得て、義務を負うことになります。

そこで今回は、

①これから結婚しようとする人
②結婚しているけど夫婦関係を改めて確認したい人


に向けて、結婚の際の、法的に定められている主なルールについて、説明していけたらと思います。

<7つの法的ルール>
1 姓の統一
2 相続人としての地位の取得
3 同居義務
4 協力義務
5 扶助義務
6 貞操義務
7 夫婦財産


■1 姓の統一

第750条 
夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

現在の民法では夫婦の氏(姓)についてこのように規定されており、夫婦で異なる姓を称することは許されていません
そのため、婚姻時においては、夫婦は、どちらの姓を称するかを話し合う必要があります。

古くは「戸主及び家族は其の家の氏を称する」といった規定が置かれていたため、「氏」は家族の呼称として定められていました。
しかし現在の民法では、「家の氏」とは規定されていないため、生活共同体として夫婦が一体であること示すものにすぎないと理解されています。

近年では、晩婚化に伴う影響のひとつとして、結婚前に夫婦がそれぞれ社会的生活を営むようになっていることから、婚姻により姓を変更しなければならない負担が大きく、この規定の是非については現在も様々な議論が展開されています。


■2 相続人としての地位の取得

第890条
被相続人の配偶者は、常に相続人となる。

前提として、亡くなった人を被相続人と呼び、その財産や負債を受け取る人を相続人と呼びます。
民法では、配偶者は、亡くなった人の子供、親、兄弟の有無にかかわらず、常に相続人となることを定めています。

かつては、家の主を原則的に父、跡取りを長男と定め、長男に全ての財産を相続させていた制度が採用されていました(家督相続といいます)。
しかし、時代を経て、配偶者の生活を維持させるなどの目的から、相続に夫婦共有財産の分与という側面を持たせた現在のような規定になりました。


■3 同居義務

752条
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

民法では、夫婦には同居の義務があることを定めていますので、同居しないことは認められず、夫婦の一方はもう一方に対して同居の請求ができます。

しかし、これは夫婦の協議に基づいて定めたところでの同居を意味していますので、夫婦の一方が強制的に「ここに同居してほしい」ということまで請求できるものではありません。
また、夫婦の一方がもう一方に対して虐待を行った場合など、同居の請求が正当な理由を欠く場合にまで、同居請求が認められるわけでもありません。

とはいえ、民法では夫婦の同居が義務付けられていることは意外に思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。


■4 協力義務
夫婦共同生活は夫と妻の分業によることになるから、民法では夫婦間における協力義務が定められています
そのため、夫婦は主に家事、育児、財産について、お互いが協力しなければなりません。

ただし、どの程度負担しなければならないのかについては、各家庭での夫婦の事情によるため、一般的な協力義務があるからといって、具体的な行為を直ちに請求できるわけではありません。

感覚的・感情的にも、夫婦間に協力すべき義務があることについては、多くの人にとって違和感がないように思われます。


■5 扶助義務
民法では、夫婦間において相手の生活を自分の生活と同一の内容のものとみなして保障する、生活扶助義務があります

例えば、一方が稼ぎ、もう一方が家事のみをおこなっている場合、後者は稼ぎがないため日に日に困窮していくことになるわけですが、民法はこのような事態を認めていません。

稼いでいる者が経済的に豊かな生活をしているのであれば、もう一方にもそのような生活をさせることを義務付けており、これは、「夫婦生活が精神的・物質的に苦楽をともにするもの」という考えからきていると理解されています。


■6 貞操義務
民法には直接的な規定が設けられていないものの、夫婦は互いに貞操を守る義務を負っていると理解されています。
貞操義務(ていそうぎむ)は、配偶者以外と性的関係を持たないことを意味しています。
これは結婚の本質からして当然のことであるとされ、不貞行為を離婚原因としていることも間接的に貞操義務の根拠となっています。

ただし、貞操の義務があるにすぎず、配偶者との性的要求に対して応じなければならない義務があるわけではありません。
当然、相手方の合意なく無理に性的要求をし性行為に至れば、刑法を始めとする法律に違反し、処罰される場合もあります。


■7 夫婦財産

755条
夫婦が、婚姻の届出前に、その財産について別段の契約をしなかったときは、その財産関係は、次款に定めるところによる。

現在の民法では、夫婦の財産関係について、婚姻届を出す前に契約にて定めることを認め、これがない場合に民法による処理を行うことを定めています。

762条1項
夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産とする。
2項 
夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。

また、夫婦における共通財産を認めず、夫婦別産制を採用しています。

しかしながら、上記762条2項が存在するため、実際には夫婦間における財産の多くが共有となることもあり、離婚となった際に、それぞれの財産についてどう分与するかが実際の問題としてよく出てきます。
特に、夫婦間の財産の取り決めをせずに、「自己の名で得た財産」といえない財産は夫婦間の共有となることには、十分に認識する必要があります。


まとめ

以上、結婚をするにあたっての7つの主な法ルールをご案内しました。

最後に、本noteは法ルールの良し悪しについての個人的な意見ではなく、昨今の多様な結婚観、夫婦・パートナー関係、家族観がある状況の中で、今現在の法ルールのご案内のために作成したものとなります。

みなさまの何かしらのご参考になりましたら、幸いです。



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