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フランスにいる日本人って…

 パリに住んでいないし人生の半分以上がフランスの地方なので、「かつて日本人だったフランス人庶民」が内から外から見た印象みたいなものと思っていただけたらいいか。

 身の回りにも結構いると気づいたのは割と最近。なんと職場の同僚が3人(自分を含む)と生徒が1人!こんな小さな世界にこれだけいるとは驚いた。そのうちの古くからいる同僚の話によるとまだまだ何人もこの街にいるらしい。それも旅行者ではなく定住者だと言うんだからいよいよ驚いた。ひょっとするとこれまでにすれ違うことがあったかもしれないと思うと、自分が井の中の蛙だったことをよく知らされた。

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 そういう事実はさておいて、まずこの人たちを観察してみよう。

 いちばん「日本人らしい」のは先日初めて会った生徒さんだった。生徒と呼んでも30代のご婦人。フランス人のご主人がいる。いつからフランスにいるのかは知らない。日本人特有のどこかキョドった立ち振る舞いで言葉も短い。 « courbette »とフランス人が(軽蔑的に)呼ぶ、日本人の象徴とも言える礼の仕方も目に付く。モジモジと前で手を握る様子も全く日本人の « cliché »そのまま。自分もを30数年前にはこんなだったのかと思うとなんだか気恥ずかしい。

 その横にはさっき話した同僚もいた。こちらもフランス人のご主人がいて(実は昔生徒だった)フランスは長い。職場なので慣れているのもあるだろうが、やはりずっと落ち着いている。デンと地に足がついている感じ。日本語で話していてもしっかりとストレートに言ってくる。彼女はフランス人になってしまったようだ。

 もう1人は今年からこの職場に来たこれもまた女性。週2日しか来ないので未だに一度しか会っていない。フランス人の彼氏と同棲でパリに10年ほどいるということだった。言葉数は少ないが口を開くとどこか凄みがあり、フランス人になりつつある感じだった。

 3人とも女性。統計があるのかどうか知らないが日本人男性とフランス人女性のケースは格段に少ないみたい。


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 性格の部分が大きいし内向的とか外交的とかが当然あるので、個人差を言い始めると元も子もない。
 それでも一般論ができるほどに日本人のイメージはしっかりと出来上がっている。角が立たないようにハッキリ物を言わず、態度も引きがち。それに加えてペコペコするのでこちら(フランス人)から見ると異星人。
 喧嘩の売り買いをするわけでもないのだから、堂々とハッキリとモノを言った方がお互いに分かりやすいはず。言葉の壁があるのでいよいよそうなるのだろうが日本人同士の会話でもそれほど違いはない。日本人は何故あんなにも言葉を濁すのか?

 フランスに長くいるとどんなに内気な日本人(自分のこと)でもものを言うようになる。ハッキリ言わないと分かってもらえない。

 最近では相手の目を見ながら話すように心がけている。これは難しい。手放しで綱渡りをする感覚になる(やったことはないけれど)。青い目でガンと見られるのには今だに慣れない。その状態でハッキリ物を言うには、言うことがハッキリしていないとできない。詭弁じゃなく全くその通りで、頭の中に具体的なものがないと出るものも出ない。これは自分にとっての訓練だと思っている。

 初めて会う日本の人でも少し話せばどのくらいこちらにいたのくらいは分かる。舞台慣れした芸能人のように堂々としている人もいれば、借りてきたネコのようにうずくまってしまう人もいる。自分もまだその中間のような気がしている。


 多分一生そんなものだろう。

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