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仕事と定年〜肩を張らずにフランス153

 フランスでは最長で67歳まで働ける。

 年金がもらえるようになるのは64歳から。これは1968年以降に生まれた人について。それ以前の場合(自分はここに入る)62歳から64歳までの間となる。

 フランスに来てかなり経ってから今の仕事に着いたので43年間なんてとてもじゃないが働けない。普通に大学を卒業してすぐに職にありつけて定年まで働き続けたとしても、64歳より前に定年はできない。

 というわけで余程のことがない限り67歳まで働くことにしている。ここまで行くと43年間働いていなくてもペナルティはない。納めた額が少ないので年金も少ないが、往復ビンタだけは避けられるということ。

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 最近揺らいでいる。

 何が?

 決心が。

 仕事そのものに不満はない。分野が分野なので趣味のような気分でやっている。

 ただ試験や演奏会のように普段以上の集中力が必要な場になると、心身の衰えを感じるようになってきた。

 一番ひどいのが集中力。意識して食らいつかないと「ふっと」シラフに戻ってしまう。これが怖い。シラフになると周りを意識してしまう。周りを意識すると失敗したくないと思う。失敗しない方に気が行ってしまうのは逆効果。集中しているとトチっても「何のその」という気になれるところを、シラフだと「しまった!」と引きずってしまう。歳をとってこの集中力が自然には続かなくなってきた。

 次に目。視線が早くピタッと定まらない。何十分の一秒のことで、見誤ることが多くなった。これは練習量で補うしか解決策はない。

 最後に手。思ったところに手がいかないことが多くなった。ズレる。これも1cmか2cmのことなので体に覚えなおさせるしかない。

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 元々趣味でしかなかった音楽がいつからか仕事になったので内容で辛いと思ったことはなかったのだが、仕事として板についた今、少しばかり苦痛に思える場面が多くなると、このあとまだ何年もやれるんだろうか?という疑問が湧いてくる。家で好きな楽譜をペラペラやっている方が気楽で楽しい。フランスに来るまでの音楽との付き合いはこうだったと思い返し懐かしく思う。

 あと何年かで定年できる年になる。最後の3年間はやりたければやればいいし、やりたくなければやめてもいい。

 そこで問題なのが年金の額。実はこの3年が大きい。ペナルティなしに毎年かなり上がる。目を疑うほどの上がりようなので、正直わがままは言っていられない。まあ、64歳までいったらあとたった3年なので、実際にキツイのは今から64歳までなんだろうなぁと思っている。

 我慢比べのようになるが、今は何とか64歳まで心身が続くことを祈るしかない。その後はマラソンの折り返しのように少し気が楽になりそうな気はしている。

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