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フランス語(その3)〜肩を張らずにフランス5

会話でのフランス語がさほどとりつき難いものではないと書いてきた。この点では日本語もそうかもしれない。話は逸れるがいよいよ日本語では単語を羅列するだけでも十分意味は分かってもらえる。多少滑稽に聞こえるのは仕様がないが、日本語を習いたての外国人がデスマス調で話すのを聞いて同じように滑稽に思ってしまうのは自分だけではないだろう。

さて会話レベルではハードルの低いフランス語も書くとなると全く別物。あまり強調すると脱げ出す人だらけになりそうなのでサラッといっておくと、書き言葉としてのフランス語は難度が桁違いで高い。「フランス語は話す書き言葉」と言われるほど理路整然としている。恐らくラテン語の名残なんだろう。何十年と住んでいても間違いなしに1文書けることは稀で、どこか何か忘れている。言い回しの話(Go⚫︎gleに翻訳させるとおかしいと)をしているのではない。純粋に文法のレベルでの話。

昔(90年代) « Les Dicos d’Or »というテレビ番組があった。 « dictée »の全国コンクールだ。また余談だが、この番組意外と面白かった。 « Zéro faute! »と言う雄叫びと津波のような拍手は今でもはっきり覚えている。このコンクールで1番になるような人の趣味はなんだと思う?辞書を読むことだ。丸暗記でもしていないとエラーなしはありえない訳で。

話を元に戻す。現代の学校教育では減ってきたが « dictée »はいわゆる書き取り。今でも健在でフランス語教育の特徴であり根幹の一つだ。さっきも話した通りコンクールになるくらいに複雑でわざわざエラーを誘う課題を持ってくる。学校レベルのテストでも普通の単語一つに「あれっ?」と思わされることもしばしばある。

大学1年で習う « ver, vers, verre »。日本語の「橋、端」みたいなものだろうか。聞こえていない綴りが至る所にある。想像を超える綴りだったりもする。全部聞こえるってさっき言っていたのになんだ!と憤慨されてもしかたがない。実際発音しない綴りなのだから聞こえていないのは当たり前。それに同じ音でも多種多様な綴り方がある。ここは丸覚えと文脈で判断せざるを得ない。記憶をまさぐるだけでは正解には程遠い。書き言葉のフランス語が桁違いに難しいと言った所以だ。

加えて発音しない複数のsとか性数一致とかもあるので、基礎文法を完璧にマスターしていないと « dictée »で必ずボロが出る。3人称複数の -entは発音しないというのがフランス語習いたて最初の障害物だった記憶がある。1回目の « dictée »で「トマ」と聞こえたので « toma »と分からずに書いたら « Thomas »だったというのが今だにトラウマになっている。サラッと書くつもりが愚痴のようになってしまった。

書き言葉としての日本語も煩雑極まりないのは周知の通り。フランス語も日本語もそこは割り切って、コミュニケーションの手段としてオーラルに特化した覚え方をすればいいと思うのだけれども、どうなんだろう?


さて次は何をテーマにしようか?

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