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フランスでは認められていない安楽死ですが〜肩を張らずにフランス186

 フランスでは認められていない安楽死。永久不変のテーマ。高校の頃に森鴎外の「高瀬舟」に衝撃を受けた記憶が蘇ってきます。

 終わる間際にある命をどうしたい?本人が?周りが?医者が?社会が?

 自宅介護ができる環境で、皆にその覚悟ができているなら自宅でやったらいいんでしょう。ではそれに限界が見えてきたら?

 具体的な話になりますが、今義理の母がその状況にいます。自宅介護を始めて4ヶ月。看護師が毎日のように訪問してくれているのですが、どうも隅々まで見えてはいなかったようで、うちの奴がおととい現場を見て驚愕していました。

 宅配されてくる食事は手付かずで腐ったまま積み上げられている。ベッドから転げ落ちるのか、身体中傷だらけ。最後にいつ体を洗ったのかもわからない。爪も伸び放題。トイレまで5メートルほど移動するのも這って行けるかどうか。

 まともに食事もとっていなかったようで、ミイラのように痩せ細ってしまっている。胃が受け付けないのか嘔吐も止まず、排泄物と混ざった異臭が部屋にこもっている。

 実は義父も同じ家にいるのですが、こちらは痴呆症がかなり進んでいて全く当てにならない。というより自立できる状態ではないので施設に入るのが最善策に思えます。長年連れ添った伴侶がこんな状態なのに現実逃避でバカなことばかり言い、やっている。

 問題は、当人たちが家を出るのを拒んでいること。流石に今回は義母を入院させることになりましたが。

 « service gériatrique »と言います。「老人科」

 ここで « soins palliatifs »「緩和ケア」という特別な治療を受けることになります。言葉には出ていないですが、回復する見込みの無い老人を看取る場所ですね。

 義母の状態だと、ガン治療なんてもってのほか。食事が喉を通らないなら点滴が必要だろうし、病院なので体を清潔にもしてもらえるでしょう。からだ中パイプだらけになるかもしれません。

 こうなると「老人科」を出る見込みがあるのかは分かりませんが、一応その後の施設への入居手続きもしておかないといけない。状態を聞くに、病院を出ることは難しいと思いますが。

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 仕事の同僚の奥さんの両親が同じような状態だという話は以前しました。あちらはオーストラリアなんですが。

 この同僚自身も同じようなことを考えていて、「もうダメだとなったらスイスに行く」と言っていますね。

 実は現大統領が「安楽死」を合法化するしないの議論の必要があると言っています。これが国会で議論され、法として確立されるのかどうかはわかりません。Goサインが出たところで自分のケースに当てはまるのかもわからない。

 「安楽死」が合法化されたからといって、バッサバサ切っていくというわけではないと思うんですが。スイスや他のヨーロッパの国から過度のニュースが入ってこないところを見ると無茶なことはしていないのでしょう。

 これ以上個人的な問題はないと思うんですがどうなんでしょう?動けなくなっていく体と薄れていく意識をどうするかくらい自分で決めさせてくれ!って言いたいんですが。

 「自分」の前の世界は、あっても知らなかったし、「自分」の後の世界は、あるだろうけれど知る由もない。「自分」という窓を自分で閉じるくらいの判断はしたいものだと思っています。

 義父、義母を見ていてそう思いました。

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