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エネルギーと環境について〜肩を張らずにフランス51

大袈裟なタイトルになったが大風呂敷を広げるつもりはないのでご安心を。

90年代にはまだ問題にされなかった石油枯渇への不安、ディーゼル主流だったフランスの自動車生産業、世界一の原子力発電依存。

こういった国内国外の大きな問題が自分の身の回りにどんな変化をもたらしてきたかを見てみようと思う。

フランスに永住することになって以来、エネルギーと環境の問題は具体的な形を呈し、特に興味がなくても日常に直接触れることでもあり気になる問題だから。

フランスは « Renault » « Peugeot » « Citroën »を筆頭に、ディーゼルエンジンで最先端を行く自動車産業を推進してきた。一時期うちにも3台の車があったが、全部軽油で走る車だった。今でも一台残っている。20年間走ってきたが毎年点検を欠かさないのでしっかり現役だ。7人乗りのファミリーカーだけに燃費が悪いのは仕方がない。それでも1リットル16kmは走れる。

もう一台ある方は2年前に中古で購入したハイブリッドカー。今購入するとこれか電気自動車くらいしかないので、選択の余地がほとんどなかった。期待していたほどのパーフォーマンスはなかったが仕方がない。次世代におまかせする。

3大自動車会社が長年研究を重ねてきたディーゼルエンジン。4-5年前に時の政府が環境問題を掲げ、生産中止に追いやってしまった。曰く「ディーゼルはガソリンよりも環境を汚染する」。これは大きな物議を醸した。何しろフランス製のディーゼルエンジンは性能が高くガソリン車にも引けを取らなかったのが事実。環境破壊を理由にするのは完全に政治理由。3社は嫌々ながら政府の決定に従わざるを得なかったという経緯がある。2023年をもってディーゼルエンジンを装備した新車は製造されていない。

今走っている車を廃棄に追いやらなかっただけよかった。要するにこの先ディーゼル車は絶滅の一途を辿っている。15年も経てばガソリンスタンドに軽油は見られなくなるだろう。

石油の話でもう一つ。

2008年にセントラルヒーティングが壊れた。この頃原油の価格が爆上がりしたことも考慮して、灯油式のものから薪ボイラー式に変えた。これについては以前に少し話したと思う。

薪ボイラーの仕組み

石油に頼っていたらウナギが天井を突き破る値段になりそうに思えた。薪ならフランスの土地にたくさんあるし、うちの裏は森。庭にも生垣にも枝があるので多少の助けにはなる。

現在1000リットル約1260ユーロ(税込)

この決断は正しかった。当時政府の費用援助もあったし、薪の値段も灯油の3分の1から4分の1。少し体力が必要だがそれに見合うだけの節約になった。

「木を燃やすとCO2が出る」と言い出すと何も燃やせなくなる。ヒーティングなんだからエネルギーの消費は避けられない。さもなくば電気に頼りっぱなしになる。電気だと原子力。「ほんとにそれでいいの?」となる。

薪ボイラーにした時、当時の水道屋に太陽熱温水器もつけてもらった。昨今の暑さのおかげ?で夏場はたいそう助かっている。半日で5度も上げてくれるんだから電気ボイラーも必要ない。今になって感謝している。

将来的に太陽発電板も考えている。

敷地内の少し離れたところに独立したガレージがあり、屋根の一面が東南を向いている。40m2ほどあるので使わない手はない。太陽発電板で作られた電気は契約している電気会社に売ることになる。元を取るのに10年ほどかかりそうだがそれはそれ。こういう投資はできる時にやった方が良い。

日本でもいつも議論になる原子力発電。フランスの依存率は70%はあったと思う。確かダントツで世界一。減らす話は出てもドイツのように廃止の話は出ない。ちなみにドイツは原子力発電を廃止する代わりに火力発電を増やしたらしい。簡単に比べられないが、現在の原子力発電の性能と安全性(危険性)と火力発電によるCO2排出量を天秤に乗せると、考え込まざるを得ない。

Chinonの原子力発電所

エコロジストたちも最近では原子力発電を一概に「悪」とは呼ばなくなってきている。車も含め電気が劇的に必要になってきた。エコを叫びエンジン車を廃止するためには電気を作らなければならない。それならどうやって?風力発電や太陽発電板が至る所で見られる反面、景観を損なうマイナス面も浮き彫りになった。その上投資の割に効率が悪い現実がある。今では誰も及び腰だ。

車に関していうと電気自動車以上のテクノロジーは市場に出回っていない(水素を化学反応させて推進エネルギーにするエンジンとか話には聞いたが市販化されている様子はない)。70%の電気は原子力発電が担っている。となると原子力に頼るしかない。

それと同時に安全性も向上し、フランスで電気と言えば原子力になっている。当然廃棄物の問題があるが、背に腹は変えられないのが正直なところか。

新しいテクノロジーが解決策を見つけるのはすぐ明日というわけではなさそうだ。

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