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ファブリケ・アン・フランスとメイド・イン・ジャパン〜肩を張らずにフランス40

バブル崩壊の影響はフランスにも当然降りかかった。90年代は一時期の日本と同じで「安かろう悪かろう」が一般に浸透した。スーパーには « premier prix »最安値商品が押し合いへし合いし、ハードディスカウントの店が乱立した。当時は原産地を明記する義務がなかったように記憶している。どこの誰が何を入れて作ったのかも定かでない商品が飛ぶように売れた。

"premier prix"の例

有機農業製品 « bio »もちらほら現れ始めていたが安値には敵わず、生協などの専門店でしか手に入らなかった。定かではないがこの傾向は2000年を超えるあたりまで続いたと思う。個人的には流石に最安値商品には手をつけず、かと言って有名マークも贅沢に思えたので、大抵真ん中の製品(店の名前で売っているやつ)を買っていた。品質的に安心感が持てるのと、やはり値段で財布と折り合いがつけやすかったのが理由。今でも食料品の基本は店のマーク(bioも含む)を選ぶことが多い。

"bio"有機農業表示

最近のこの辺りの事情はどうなった?

« premier prix »は影をひそめる傾向。ハードディスカウントの店は健在。ただハードディスカウントではなくなった。既存スーパーに倣い自社マークの製品を並べ、ディスカウント商品が残ってはいるが、普通のスーパー然としてきた。「安かろう悪かろう」は中流階級から消えたと言っていいと思う。

選択の幅が広がったんだろう。店のマークの製品、複数の有名マークの製品、 « bio »。これだけで価格帯が3つに分かれる。最近では « bio »の値段が下がってきたので、有名マークとどっこいどっこいのの価格で手に入る。それも同じ店内なのだから時代は変わったものだ。 « bio »だからと言って全信頼を寄せられるかと言えばそうでもないことは「スーパー」の中ですでに話した。フランス内で生産されたものは流石に割高で、ヨーロッパの人件費が低い国から来ることが多い。需要があるので価格も下がり、中流階級の一般市民にも手の届くものになった。

さてこう言った流れの中での « fabriqué en France »。庶民からどう見られているのか?

グローバル化 « mondialisation »。フランスも例に漏れずその影響を20年以上前から受けている。国内企業が海外に拠点を移すとか、人件費のかからない外国から安価な製品を大量に輸入するとか。100均屋に似た店なんかは30年近く前から存在している。

その上現大統領がもともと企業家で国外生産を推し進めてきたこともあり、数年前からその傾向に拍車がかかっていたという経緯がある。

ところが近年のコロナや戦争でグローバル化の弱点が庶民レベルで顕わになってきた。ストックが届かないので陳列台が空になることなんかなかった。食品と話は違うが、機械類の部品が何ヶ月も届かない状況が普通になってしまった。

数が月前のマスタード陳列台、、、

そこで今特に注目されているのが国内生産商品。« fabriqué en France »フランス産。日本人が made in Japan を絶対的に信用する感情と同じようなものをフランス人も自国産の商品に持つようになってきている。ここでは特に食料品の話をしている。昔からアパレル関係や高級品では名の通った « fabriqué en France »。一般民衆には関係ない世界だが、食料品となると関心の無い庶民はいない。

生鮮食品のコーナーには原産地(フランス)が明記され、肉、魚(フランス産ではないが北大西洋だとかノルウェーとか)、野菜はどこから来たのか一目で分かるようになった。ポテトチップスのようなものにも、フランス産はドーンと目につくところに明記されている。地方まで明記されることもある。これがフランスの消費者に与える安心感は半端ない。

それもそのはず。ヨーロッパ内で生産され流通された生鮮食料品その他の商品が必ずしもフランスと同等の衛生基準で作られているとは限らないから。スーパーで野菜を見ていた時「それはやめときな。スペイン産だから」と見知らぬ若者に言われ、なぜかと尋ねたらそのように答えられた。スペインをけなすつもりは微塵もないが、食品に細心の注意を払う人には十分買わない理由になるのだろう。個人的にはそこまでマニアックな買い物はしない。ただ先ほども書いたように、「フランス産」が明記してあるだけで安心して手に取ってしまう。

企業も最近では「品質」を売り文句にするくらい原料や製造方法に気をつけるようになった。全体的に値段が上がった印象はあるが印象止まりで、生活に困るほどのものではない。傾向としては、 « bio »の普及と同じく好ましいものだと思う。(ただしこの数ヶ月のインフレは例外。とりわけ生鮮野菜や果物は、数ヶ月前の値段を覚えているだけにカートに入れるのを躊躇ってしまう。この傾向は一時的なものであってほしい。)

最後に余談だが、フランス人も made in Japanは好き。Un⚫︎qloはパリにも店舗があり、インターネットでも購入できる。テレビ、ラジオなどの電化製品、カメラなどの精密機械は品質で選ぶと日本製。値段は高めでも性能と寿命の点で他と比べられないと何十年前に既に言われた。日本製品に対する盲信的な感情は日本人に限られてはいないということだ。

Uni⚫︎loオペラ店


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