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田舎に住むとこんな危険も!〜肩を張らずにフランス65

日本には「G」がいる。黒くてデカくてすばしっこくて飛んでくることさえある。日本人の大多数が恐怖する「G」。例に漏れず日本にいた時代の一番のトラウマだった。

トラウマになったきっかけがいくつかある。もちろん今でもはっきり覚えている。イメージとして脳裏に焼き付いてしまった。

多分小学校に上がりたての頃だっただろう。寝るために二階に上がり電気をつけようとした時、向かってきた。それも顔に。一直線に空を切って。

恐怖新聞をご存知の方が多いと思う。つのだじろう先生の名作恐怖マンガだ。その中のエピソードに「G」を炊飯器でコメに混ぜて炊いて云々というのがあった。今考えるだけでもゾッとする。

北海道に移住する理由になるとも聞いたことがある。ただ昨今の気温の上昇で「G」も北上する可能性がある。そうなると日本に逃げ場はない。

幸いなことにフランスには日本に生息する「G」はいない。5mmくらいのがいるにはいるが、威圧感はまるでない。これだけでも夏場の安らぎは得られる。

もとより蜘蛛、ネズミ、蛇、トカゲを怖いと思ったことはなかった。最近になって昆虫を気味悪いと思い始めたもののトラウマになるほどの嫌悪感はない。

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心の安寧を脅かす存在がある。避けようがあるので「G」とは別物だが、向こうが好いてくれないみたいなので近寄れない。

« frelon »スズメバチ、とりわけ« frelon asiatique »アジアスズメバチ。初夏から盛夏にかけて辺りを飛び回っている。巣を作る場所を探している。換気のために窓を開けているとフラフラと入ってくることがある。何もしなければそのまま出ていってしまうが。

ここに越してきてから2度消防隊に連絡をして駆除に来てもらった。当時は無料だった。

1度めはガレージのてっぺんだった。建設中の半球状の巣を取り払ってもらった。

2度目は入口の大きな柱の割れ目の中だった。列をなして行き来するのを見かけ、訝しく思い寄ってみると、いるわいるわ。ブロックを組み上げて作った柱(80cm x 80cm)だったので中が空洞だった。全くの盲点だった。駆除に来た消防士のヘルメットを攻撃する奴らの「コツコツ」いう音が5m以上離れた位置からでもよく聞こえてきた記憶がある。

実は3度目もあった。いつの間にかまたガレージに巣が出来上がっていたが知らぬ間にもぬけのからなっていた。全く訳がわからない。

バスケットボールくらい?

そして今度が4度目。基礎工事中に気がついた。またもやガレージのてっぺん。開けた窓から入ってくる回数が多いなとは思っていた矢先のことだった。よく見ると確かに忙しく動いている。今対処しないと今回は業者を呼ぶことになる。

ちょうど夕刻でもあり曇り空でもあった。ご存知かもしれないが、奴らは夕刻から早朝にかけては動きが緩慢になる。やるなら今しかない。

ということで以前から用意してあったスズメバチ用の殺虫剤を取り出した。よくある噴霧剤ではなく液体が飛び出す。3mほどの射程距離。近寄りたくはないが背に腹替えられない。脚立に乗って狙いを定めて一気にかけると飛び降りて一目散に離れる。1時間ほどして行ってみた。遠くからでも地面に落ちているのが確認できた。ひとまず成功したらしい。息の根を止めて上を見る。まだ何匹かいるがさっきほどではない。その後もう一度殺虫剤をかけ、その日はそのままにした。翌日もう一度確認するとまだ何匹かウロウロしている。念には念を入れ再度殺虫剤をかけた。流石にもう寄りつく奴らもいない。一安心。

20cmのお皿くらい?これだけ見るとまるでヒマワリ

ハチという生き物は人の恐怖心を認識すると聞いた。どこまで信憑性があるのかはわからないが、スズメバチにしても怖気付くと返って追ってくる。素知らぬ顔をするのが一番。

近年アジアスズメバチが害虫としてスポットを浴びている。かなりの速さで繁殖し、ミツバチの減少の理由の一つにもなるらしい。天敵がいないため野放図に増えてしまっている。この季節になるとガレージあたりに行くと自然と上を見る習慣がついてしまった。

田舎に住む快適さは今更強調する必要はないだろうが、思わぬ危険が潜んでいることも忘れてはいけない。

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