ウェグナー、モーエンセンと日本の新しいスタンダード
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ウェグナー、モーエンセンと日本の新しいスタンダード

こんにちは。1925年(大正14年)創業、福島県郡山市にある家具屋の3代目、渡部信一郎です。

初代はタンスや箱火鉢(長火鉢)、机をあつらえる指物師(さしものし)でした。2代目は高度経済成長期、婚礼家具・箱物全盛の時代に製造業から仕入れ販売する小売業へと転換。1989年(平成元年)に家業を受け継ぎ、「渡部家具店」から「ラ・ビーダ」へとリニューアルし「先人たちが育てた森が生み出す木材で、次の世代も使い続けることができる家具」の製造と販売を手掛けています。

家具屋をついで30年、日本の民藝やヨーロッパの骨董、デンマークの家具に触れ、それぞれの国の文化を理解することで、家具と人、自然との関わりを学んできました。なかでも近年は北欧の人々の、心地よい空間や時間を大切にする「ヒュッゲ」な暮らしに強く共感しています。

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4脚の椅子に実際に座ってみると...

「食べる」「眠る」「くつろぐ」。日々の暮らしのなかで、人の肌が触れる場所に必ずあるもの、それが家具です。ブランドやデザイン、価格に惹かれて購入してみたものの"一緒に暮らし始めてみたら想像していたものと違っていた"などという体験をした方がいるかもしれません。もちろん、一目惚れした美しいデザインの椅子が部屋に一脚にあるだけで、暮らしが華やぐこともあるでしょう。でも椅子は実際に座って自分で感触を確かめてみることが大切です。

そこで、北欧の椅子を語るうえで欠かすことのできないボーエ・モーエンセンの「J-39 シェーカーチェア」とハンス J. ウェグナーの「Yチェア」、そして私が日本の暮らしの新しいスタンダードになると考える2脚の椅子を用意して、その座り心地を味わってみました。

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写真左からボーエ・モーエンセン「J-39 シェーカーチェア」、ラ・ビーダ「aチェア」、ハンス J. ウェグナー「Yチェア」、カンディハウス「WING LUX LD サイドチェアー」

70年にわたって世界の人々を魅了し続ける理由

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モーエンセンとウェグナーは1914年4月生まれの同い年。ともに10代の頃から家具職人として修行、マイスターの資格を取得してコペンハーゲンの美術工芸大学に入学し、友人となりました。

その後モーエンセンはデンマーク王立芸術アカデミーに所属、教鞭をとるようになり、1942年にデンマーク生活協同組合連合会の家具部門(FDBモブラー)の主任となりました。一方ウェグナーはデンマーク家具の巨匠アルネ・ヤコブセンの事務所に所属後、独立。母校で教師をしながらモーエンセンのFDBモブラーの家具もデザイン、1944年には2人の共作となる「スポークバッグソファ」を発表しました。

J-39 シェーカーチェア

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モーエンセンが1944年に発表した「J-39シェーカーチェア」は、国民のための椅子として良質で低価格、シンプルなデザインが特徴で、"ピープルズ・チェア(みんなの椅子)"と呼ばれて親しまれています。この椅子はイギリスからアメリカに渡ったシェーカー教徒の質素で美しいライフスタイルが色濃く表れています。

一見すると華奢な印象がありますが、部材を組み合わせる部分を太くするなど、細部を眺めると考え抜かれたデザインであることがわかります。

Yチェア

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ウェグナーの「Yチェア」は1950年に発表されました。発端となったのは1944年発表の「チャイニーズチェア」。ウェグナーが中国・明(みん)王朝の官僚の椅子に影響を受け、アームと背もたれを一体にするという斬新なデザインとなっています。

背骨に沿った優雅な曲線を描くY字形に整形された背もたれ部分やアーム部分など、優しい印象のある椅子ですが、脚部には角を落としたしっかりめの補強材を使用するなど見る角度によってさまざまな発見があります。まさに椅子好きにとっての"憧れの一脚"といえるでしょう。

はたしてその座り心地は?

椅子の座り心地は体型に大きく左右されます。"良い椅子"として知られているものが、必ずしも自分にとって良い椅子であるかどうかはご自身で体験して判断するしかありません。

特にこの2脚は座面の高さがJ-39で46.5cm、Yチェアで45cmと標準的な体型の日本人にとっては少々高めになっています。120mのペーパーコードを編み込んだ座面(Yチェア)は、使用するうちに座面中央が沈み込みがちに(相対的に座面前部の枠の位置が高く)なり、太ももの裏側が圧迫されるケースも考えられます。

またアームと背もたれの位置も高めのため、座り方によっては背骨が当たったり、肘を置いても肩が上がってしまい長時間座ると肩が凝ることもあります。脚部を数cmカットして自分の体型に合わせることはできますが、背もたれとアームの高さは変えることができません。やはり実際に座ってみることをおすすめします。

世代を超えて日本の暮らしを支え続ける椅子になる

"日々ともに暮らす相棒"という意味で私が注目しているのが、これから紹介する国内で作られている椅子です。

カンディハウス WING LUX LD サイドチェアー

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カンディハウスのwebサイトより
 → https://www.condehouse.co.jp/products/detail.php?product_id=317&category_id=10

カタログ等で"「理想の低さ」と安定性を求めた"椅子と謳(うた)われていますが、これは日本人にとっての理想的な座面の高さを追求したという意味で、実際に座った瞬間にその志の高さとゆったりとした座り心地に一瞬で恋に落ちてしまいました。

座面高は 40.5cm(44cmのタイプもあり)、北海道産のナラ材を贅沢に使用しながらデザインと強度のバランスをとっており、家具の製造を手がける私から見ても非常に手の込んだ製品です。これだけのバリューとクオリティを持った製品が80,000円台から手に入るという点で、カンディハウスは今私がもっとも注目しているブランドです。

ラ・ビーダ aチェア

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手前味噌とはなりますが、弊社の製品である「aチェア」です。日本の木材資源の活用を促進する優れたプロダクトや建築、プロジェクトなどに贈られる「ウッドデザイン賞2015(JAPAN WOOD DESIGN AWARD 2015)」を「木製品分野 ソーシャルデザイン部門」で受賞しました。
  → https://www.wooddesign.jp/db/production/268/

1997年、私がデンマークに買い付けに行った際に現地で購入した「J-39 シェーカーチェア」は当時38,000円でした。その後日本で北欧家具がブームとなり、この椅子に80,000円前後の値段がつくようになりました。そこでモーエンセンの"ピープルズ・チェア"という本来のコンセプトを、日本の暮らしに向けて日本の木材で実現したらどうなるか、メンテナンス性を含め工夫を凝らして製品に仕上げました。国産の木材を国内で加工・製造することで、製品の持続性だけでなく林業や木工業の持続性にも配慮しています。

座面の高さは43cm、小柄な方でも無理なく座れる万能選手。価格も50,000円台からとお手頃です。
  → http://www.lavida.co.jp/furniture/chair/

椅子は自分で座って選ぶことが大切

ネット通販で価格やポイント、送料などを比較して購入するのも良いですが、家具屋に出かけて自分で座り心地を確かめてみると、それぞれの椅子が驚くほど違っていることに気づくと思います。

座り心地が多少悪くても実物の作りこまれたディティールを目の当たりにすると、その椅子がますます好きになってしまうかもしれません。経験豊かなお店のスタッフから、その椅子の経年変化についてのエピソードを聞くこともできるでしょう。そんなさまざまな体験を通して、"あなたの暮らしを変える一脚の椅子"に出会ってください。

良い椅子は、選んでいる時間もまた豊かな心持ちになります。

座って体感! 暮らしが変わる一脚の椅子フェア

東北自動車道郡山I.C.から車で5分、ラ・ビーダでは2021年10月10日まで「座って体感! 暮らしが変わる一脚の椅子フェア」を開催しています。今回紹介した4脚の椅子のほか、これからの日本の暮らしを支える国内メーカーの椅子を取り揃え、座り心地の違いをご自身で感じていただくことができます。

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この機会にぜひご来店いただき、家具好きのみなさんとお話ができれば嬉しいです。

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福島県郡山市の家具に恋した家具屋です。 地球にやさしい家具は 人にもやさしい。 http://www.lavida.co.jp/index.html