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シンプルな迷路

朝。
曇りで、さむい。
散歩に来ている。ただの散歩。

町を歩くのは、すこし罪悪感を感じる。
昔から知っている町なのに、こんな時間にフラフラとしていると犯罪の下見と思われないだろうかと。目的はない、散歩だから。あるけど、ない。
昔から知っている場所だからこそ警戒心はわかるのだ。逆の立場なら、近所をフラフラしてる人はなんとなく気にしてしまうから。見たことない人なら尚の事だ。そんなの主観的な記憶なのだが、町はそういうもんなのだ。実際に何十年住んでいようが記憶にない人なら、変な人が歩いている、となるだけ。

町と街は、違うんだなと。
ウォーキングしてます的なユニフォームは、大事なんだなと。
別にやる気の証じゃないんだと発見したことに、喜びがある。

そんなことを気にしながら墓地の中を歩く。

綺麗に並んでないんだ。何度も見たことあるはずなのに、そんなことも知らない。
墓石の横にある生前の名前だけで探せると思っていたが、「こりゃきついわ」と心の声にする。
そいつに聞こえるように。
ここのどっかにいるんだから聞こえるだろと、勝手に話しかけた。
新しいお墓で、現実的な家族だからそんなに高級そうな墓石じゃないだろうしと、そんな手掛かりしかなくてフラフラ歩いてきたぞと。
黄砂で汚くなってるかと思ったけど、そうでもなさそうだな。
大体はゲームなら、なんか調べるポイントのアイコンがでるか能力持ってるやつが主人公なんだけど、わたしはそんなの持ってないみたいだから肉眼で探してる。
すまん、無理。入口のお地蔵さんにヨロシクいっといたから。近くまで来てんだから、なんか合図くらいあるかと思ったけど、そうでもないんだな。
じゃまた。

いるかいらないか分からない知識が、常識になって大人になるらしけど、いやな面倒な世界になった。
あと時間も勝手に経過する。
「事前に場所を聞いてから行けよ。目的果たせてないなら時間の無駄じゃん」なんてことが、この世で一番聞きたくない。
目的、検索、すぐに行動に移すのが、今の常識で正解ルートらしい。
そんな世界に生きてなかったはずなんだけどな。

電話なんかしないで、「あーそぼ」って玄関をあける。
居るか、いないか。
いいか、駄目か。
そのときになるまで、決まってなかった。
それが無駄な時間なんて思わなかったけどな。石でも蹴っポリながら帰ればいい。
海外ドラマで見るように、お墓をきちんと一列に並べたほうが土地の有効活用ができるだろうな。
日本の墓地は、結構ぐちゃぐちゃだぜ。
どっちでもいいわ。
もう、この世にいないらしいな。ほんとか?

くそったれの世の中に、中指を。


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