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独り立ち

 卵の殻が割れて落ちた。
 その落ちた殻がみるみる形を変えて鳥になると、すぐにそこから飛んでいった。
 その場に残ったのは、見えない卵型のなにかだけ。そのものは目に見えず、触れられない。
 たまに何かがやってきて掃除したり、卵があった場所を眺めたりしてまたどこかに行ってしまった。親鳥だろうか?
 その何かは、毎日来るわけではない。ほかにする事があるのだろう。でもそこに卵があったことは忘れないようで、何も見えないその場所を綺麗に保っているようだった。
 この鳥は、飛び回るのが得意なのだが、立つのは苦手らしい。大抵は、何かに寄りかかってないと立てない。そんな不器用な鳥がひとりで立てるようになると、親鳥は遠くにいても喜びの鳴き声をあげるのだ。
「卵がかえった」。そんな風に聞こえる鳴き声で。

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