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8〜14日目① 吹雪のドライブ

路上教習開始の日、ついに雪が降り始める。

田舎の夜道を走る

路上教習1時限目は夜。早速雪で濡れた路面が街灯や前照灯を反射し、光で前が見えない場面に遭遇する。

「前が見えませんねぇ」

教官に向かってボヤきつつアクセルからブレーキに右足を移す。

山形の道路は東京とは別の世界で、街灯の数がまるで違う。自転車も歩行者も東京より少ないが、夜道が暗すぎていても発見が遅れる。そのため対向車が来ない限りハイビームで走りたくなる。
夜の移動に慣れておきたかったので、なるほどこれは難しい、と学習。

吹雪の中を走る

降り出した雪はひと晩でたちまち30センチほど積もり、翌朝にはあたりは一面の雪景色になった。気温はマイナス5度。
断続的に吹雪く中で教習は続く。

視界はホワイトアウトし、地面の標示は真っ白な雪に埋もれ、アクセルやブレーキの踏み込みを少ししくじっただけで容赦なくタイヤが滑る。
がたがたとハンドルは取られ、まっすぐ走るだけのことが難しくなる。
ビビってアクセルを弱めると、足元の悪さから途端に速度が落ち、教官から指摘される。

「エンジンブレーキで速度を落とすと後続が気づかなくて危ないから、減速はフットブレーキ使って。意思表示」

なるほど、減速するつもりすらなかった。
判断できずに無意識で足がアクセルから離れているだけ。

このあたりからだんだん意識が覚醒し始める。

運転には飽きないけれど

この後卒検まで雪道を走り続けることになる。
過酷な環境にはすぐに慣れてしまった。
運転は楽しい、雪道教習なんて貴重な経験だ、とは思いつつ、ひたすら白い景色には数日もすれば飽きてくる。

「これは白いゴミです!」

とは教習中の雑談である教官の言だけれど、雪国の人にとっての雪は過酷な現実で、風花なんてロマンチックなことは、言っていられないものらしい。

(青空に舞う雪は美しかった。もう、お腹いっぱいだけれど)

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