【全パターン掲載】「3つのキャッシュフロー」を見れば、会社のお金の流れは簡単に把握できる③
こんにちは。現役信金マン兼中小企業診断士事務所代表の山西です。
前回、前々回と「3つのキャッシュフロー」から会社のお金の流れを知る方法をお伝えしてきました。
シリーズの最後として3つのキャッシュフロー」の組み合わせ全8パターンを解説します。
それぞれのパターンについての理解を深めれば、会社の大局的なお金の流れを簡単に把握できるようになります。
①営業CF[+] 投資CF[+] 財務CF[+]
貯蓄志向パターン
全てのCFを手元現預金の貯えに回しているパターンです。
一見、手元の現預金が増えているので良さそうですが、非常に不可解な状況です。
なぜなら、本業で稼げている中で、手元の現預金を貯めるために借入をしているからです。
基本的に借入には資金使途があります。運転資金とか設備資金とかですね。しかし、このパターンの場合、営業CFも投資CFもプラスなので、ただ借入をして手元に置いているだけの状態です。
もちろん、今後何か大きな資金流出が見込まれるのであれば問題ありませんが、一般的には戦略が曖昧で余計な資本コストがかかっている状態なので、以降に紹介するパターン③④のいずれかを目指すと良いです。
②営業CF[+] 投資CF[+] 財務CF[−]
返済重視パターン
こちらは、本業で稼いだお金と固定資産の売却資金(要はフリーCF)を返済に充てているパターンです。
固定資産を売却していることから、返済負担が大きい可能性がありますが、借入に頼らず、比較的健全な資金繰りの状態です。
大きな問題は無いですが、可能であれば、以降に紹介するパターン③か④を目指すといいでしょう。
③営業CF[+] 投資CF[−] 財務CF[+]
積極投資パターン
こちらは、本業で稼いだお金と借入で設備投資をしているパターンです。
成長期〜成熟期に見られる形で、非常に健全な資金繰り状況です。適切な設備投資であれば、同パターンを継続できますし、成熟するに当たってパターン④に移行していくのも良い流れです。
④営業CF[+] 投資CF[−] 財務CF[−]
堅実経営パターン
本業で稼いだお金を設備投資や借入返済に充てているパターンです。こちらは非常に堅実で、事業として安定しています。
このパターンで現預金が増えている場合は、特段優れている会社と言えます。多くの場合、③か④のパターンを目指すと良いでしょう。
ここからは本業で稼ぎが出ないパターンです。
⑤営業CF[−] 投資CF[+] 財務CF[+]
赤字補填パターン
固定資産を売却し、お金を借りて事業を回しているパターンです。
売却&借入のフルで資金調達をする必要性がある状況を考えると、資金繰りが切羽詰まっている状況だと判断できます。
早急に全ての経費を見直して、固定支払を縮減する必要があります。
⑥営業CF[−] 投資CF[+] 財務CF[−]
自転車操業パターン
資産を売却して、何とかして赤字補填と借入返済をしている状況です。当然資金繰りは厳しく、設備売却もいずれ出来なくなるため、資金ショートの懸念があります。
⑦営業CF[−] 投資CF[−] 財務CF[+]
無謀拡大パターン
借入により、赤字補填と設備投資をしているパターンです。再生フェーズの企業に多く見られます。本業の稼ぎがないため、返済の目処がない状態で借入しているので資金繰りに懸念があります。
ただし、ベンチャー企業の創業期にも見られるパターンであり、売上が利益化するまで時間がかかっているフェーズ(専門用語で「ダーウィンの海」と言います)の場合もあります。
こちらの場合は赤字状態の新規借入でも、今後の動向次第では大きく成長できる可能性があります。
⑧営業CF[−] 投資CF[−] 財務CF[−]
資金危機パターン
本業で稼ぎが無い中で、設備投資や借入している、非常に無謀なパターンです。
早急に事情内容の見直しを行い、スリム化する必要があります。
数期連続でこのパターンになる場合は、返済のリスケ等も含めた抜本的な改革を進めなければなりません。
以上、「3つのキャッシュフロー」の組み合わせ全8パターンについて解説しました。貴社のお金の流れを把握することで、適切な資金繰りを実現して下さい。
次回記事(7月15日(土)投稿予定)
「返済が苦しい会社は『借入の長短バランス』を見直そう」
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