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声の国から

声の国から

… 芹乃栄(せりすなわちさかう)頃 
 2025年1月の朗読… 約5分
 文:四国三郎
 朗読:miko.watty 
 音楽:音符の樹

筆先に小さな春をひそませてふつくら画(ゑが)く里の野山を *①

歌会始の歌 「野」お題に
日本経済新聞 2017年1月13日

平成29年(2017年)の「歌会始」で紹介された千葉県の斎藤和子さんの歌です。
宮中に清澄で荘厳な声が響きました。
新年らしい幸福感が 平易な口語で表現され すがすがしい印象をうけました。
「歌会始」の日本語 この年「始めに聞く声」です。

読ぞめに古今和歌集の春の哥  川崎展宏(かわさき てんこう)*②

https://haikudatabase.com/haikus/11270

かつて 教養ある家庭では新年 父親の前で男子は漢籍 女子は和歌などを朗々と読み上げたと ものの本にあります。
読初(よみぞめ)です。
一方で 庶民が馴染んだのは さしずめ「かるた」でしょうか。
正月三日 京都・八坂神社で「かるた始め式」*③があり 百人一首を読み上げる声が神殿に響きます。
八坂神社は 短歌を初めて詠んだと伝えられるスサノオノミコトが祭られています。
それに因んで「かるた始め式」は正月恒例の行事です。
かつて 正月の静寂を破って聞こえてくる「かるた遊び」の歓声に 晴ればれとした寿ぎを感じたものです。
本来は 歌を声にして「読み上げる」ということに意味があったというのが和歌の世界の通説です。
短歌が「詩」ではなく 「歌」と呼ばれる理由もそこにあります。

そこで 声を合わせてお馴染みの一首を・・・

 君がため春の野に出でて若菜つむわが衣手に雪は降りつつ (光孝天皇)

一月といえば 国技館では大相撲の初場所が開かれます。
館内に 呼び出しの凛とした声が冴え渡ります。
古めかしくも雅びな言葉が 新年に聞くにふさわしく感じられます。

初詣の神社の神殿で 「お祓い」を受けている人がいました。
老若男女が 厄を払ってもらっているのです。
ここでも 祝詞(のりと)が恭しく「読み上げられ」ます。

話は変わって 新年のスポーツと言えば サッカーやラグビーです。
右手を高々と挙げた代表が 「選手宜誓」をします。
「怯まず 正正と闘うことを誓います」と力強く 宣誓の声を上げます。新年にふさわしい凛凛しい響きです。
そして 試合前の円陣で 肩を組んだ両チームの選手が「オー」と力強く声を合わせて フィールドに散っていきます。
試合後 優勝チームに表彰状が手渡されます。
ここでもまた 声高々と表彰文が「読み上げられ」ます。

新年つくづく 日本は「声の国」という思いを強くします。

… 2025年1月の朗読「声の国から」 背景:銀朱 文字:白色
写真:尾道 高見山より望む

🔸追伸:詩は声に出して読む 谷川俊太郎さんのこと

   四国三郎

🔸付録:尾道駅の構内アナウンス(日本語・英語)

*①日経新聞、毎日新聞より
歌会始の歌 「野」お題に 
2017年1月13日 12:00
https://mainichi.jp/articles/20170113/k00/00e/040/271000c

 新春恒例の宮中行事である「歌会始の儀」が13日、皇居・宮殿であり、天皇、皇后両陛下や皇族方が詠まれた歌が披露された。今年の題は「野」で、一般応募の2万205首から入選した10人の歌も詠み上げられた。
 天皇陛下は、栃木・那須の御用邸に滞在中、「邯鄲(かんたん)」という鈴虫に似た昆虫の美しい鳴き声を聴こうと皇后さまたちと外に出た1999年9月の情景を詠んだ。皇后さまは、都心にありながら自然豊かな皇居・御所での暮らしを感慨深く振り返り、歌にした。

*②俳句データベースドットコムよりhttps://haikudatabase.com/haikus/11270

*③朝日新聞デジタルより
八坂神社で 「かるた始め式」
https://www.asahi.com/articles/ASR135J0HQDVPLZB015.html

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