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詩 「しりとり」

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2024年6月の記事一覧

群青 _ 詩

群青 _ 詩

終わり紅の頬を伝う
思い出すだけで今でも痛む
切り傷さえも残しておこう
さよならなんて認めない
みんな諦めて生きている
夜明けを寝ぼけて見つめてる
借り物の夢が剥がれても
生きたいなんて思わない
ならなぜそこに涙は流れ
やれ恋だ嘘だと謳うのさ
群青色に立て篭もる僕は
さよならなんて認めない

了解 

ワンダリング _ 詩

ワンダリング _ 詩

怖くて羽根も開けない
飛ぶ空があるかもわからない
錆びた釘が抜けないように
鯨の群れに隠れるように
愛が何かと叫んだら
誰が答えてくれるのか
帯電しては知らないふりで
なかったことにしてきたな
画面に残る言葉の雨を
記憶に積もる想いの山を
心に居座る貴方の影を
なかったことにできたとて

トワ _ 詩

トワ _ 詩

たい焼きを半分こする時は
尻尾側で構わない
立方体のチーズケーキなら
対角線で等分がいい
藍染の茶碗お揃いにしても
きっといつか割れてしまうから
発泡酒でもノンアルコールでも
二人で交わせる夜がいい
言葉なんか一瞬で
気持ちなんか一時で
だから僕は勘違いしよう
永遠はここにあったと言おう
そしてそのまま誓いを立てよう
神様も眠る深夜25時

ライト _ 詩

ライト _ 詩

綺麗事を言うのなら
汚れた服を着たままで
百年の孤独歌うなら
本当の孤独を知ってから
人の痛みを憂うなら
背中の傷を晒したままで
心の炎を燃やすなら
周りの臓器が焦げつく程に
誰かを背負うつもりなら
わらじも要らぬ覚悟にて
詩人の声を聴くのなら
文字が見せない裏の裏まで
仔猫を待ち伏せたいのなら
路上駐車でライトを消して

月夜の晩に閉じ籠ったなら _ 詩

月夜の晩に閉じ籠ったなら _ 詩

筆跡で愛を描けども
切先が肌を切り裂いて
紅く流れるそれを見て
とかく愛だと勘違い
真っ先に君に伝えたい
きっかけなんてなんでもいい
深く憐れむ誰かなんかより
近く隣で微笑む君に
電気を消して目を閉じて
耳も塞いで梯子を降ろし
一歩一歩降りて行こう
ずーっと心の奥深く
一切合切混ぜて仕舞えば
すーっと言葉が導いて

歪 _ 詩

歪 _ 詩

可視ばかりを求めては
愛をわかった気になって
ダイナミックな言葉でもって
見えない君を希う
会いたがりと知りながら
差異を測った輪になった
プラスチックな心はもっと
会えない時を慈しむ
同じ円を描いた僕らの
ズレた一ミリの内心は
絶えず崩れて揺れ動き
消えず痛んで擦り切れて

グラビティ _ 詩

グラビティ _ 詩

雪が似合うねって君が言うから
私は溶けずにあれから数年
月が光るのって太陽があるから
私は溶けずに君をなくしても
横断歩道信号の下
ぽつりと伸びる一人ぼっちの影に
思い知らされる青空の下
重さで伸びる淡い期待と髪に
やぁ元気にしてるかい?
まぁそんなもんだよね
私はなんとかやってるよ
そう言えたらいいのにね
気づけばまたライトは赤くて
私は動けずに君をみつめて

トーキング _ 詩

トーキング _ 詩

ごめんねって春を歌って
ありがとうって夏に焼け
おはようって秋が吹いても
さようならって冬が積む
目一杯を重ねたよ
心の底から叫んだよ
分かり合って朝が来て
分かち合って夜が落ち
つもりになって期待して
積もり積もって蓋をして
もう一回と嘆いても
光も届かぬ地面の底へ
重なる羽根で大きく見えたの
羽搏く音で夢から醒めたの

トゥーレイト _ 詩

トゥーレイト _ 詩

深海まで沈んだ僕は
光も忘れ涙も果てて
そもそもとっくに目は潰れていて
肺にまで愛が流れ込んでは
酸素も自由も泡と消えてく
限界まで弾んだ胸じゃ
もう1ミリも浮かべなくって
そもそも僕は助かりたいのか
この愛という名のビーカーの底で
血も骨も溶けて混ざりたいのか
この海の最も暗い部分を
君の両手が掬い上げたなら
この僕の最も弱い心を
君の両目が映し出したなら

スーパーアパート _ 詩

スーパーアパート _ 詩

アパートにいれば大丈夫
雨も風も言葉も孤独も
まるで存在しないみたい
ぬるいコーラに氷を沈めて
炭酸の泡が纏わりついても
きっと僕は生きていけるさ
アパートフロムユーだって
愛もキスも温度も思い出も
まるで幻だったみたい
気づけば溶けて色も薄まり
閑散とした心も沈んで
きっと僕ら終わってるんだ
こんなに壊れた部屋の隅っこ
こんなに離れた世界の端っこ

レインボードロップス _ 詩

レインボードロップス _ 詩

涙がひとつ溢れて
気づけばそれは不透明で
僕は慌ててたくさん泣いた
どれも確認してみたけれど
透明なものは一つもなくて
僕はやっぱりたくさん泣いた
窓から射し込む陽の光が
涙の海に反射して
歪(ひず)んだ虹が揺れては弾け
過去から伸びた影の長さも
未来の分だけ千切れては
七色の後、笑顔に染まる

詩してなお踊れ _ 詩

詩してなお踊れ _ 詩

歌を歌っているつもりが
どうやら君を苦しめていたようだ
餞でもなんでもなく、
ただ君を笑顔にしようと
ただそれだけだったのに
タイルが割れて壁が滲んで
カーテンも千切れ暖炉も崩れ
この部屋以外碌でもなく、
当て字にでもしておかないと
まだそれ以上を期待するから
写真ももう燃やしてしまおう
記憶ももう潰してしまおう
どうせ文字は消したところで
錆びた釘のように抜けないけれど

雨のち星 _ 詩

雨のち星 _ 詩

雨季の青空湿気を纏い
心は晴れず肩を落とした
一晩眠れば元通りだと
甘く描いた分だけいっそう
月の星空眠気を誘い
瞼は落ちて心を鎮める
昨晩感じた深淵な闇も
淡く滲んでふわりと散ってく
空と月と星で満たされて
僕の心は季節に交わる
夏が夢が君が生き返り
夢の続きが無限に想える

ユートピア _ 詩

ユートピア _ 詩

わだかまりをトースターに
バターをのせて
ハチミツかけて
くだらない話をしながら
コーヒーと一緒に流し込み
飛行機の音で窓の外見れば
晴れ渡る青に白い海
もう大丈夫と笑い合ったら
龍の背中に飛び乗って
はしゃぐあなたの横顔につられ
交わすくちづけ甘すぎて