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『子どもが動く魔法の言葉』の本当の意味とは?
「iメッセージ」という言葉を耳にしたことはありますか?
SNSなどで「子どもが動く魔法の言葉」として紹介されることもあるこのコミュニケーション方法。しかし、iメッセージの本質は、相手を尊重しながら自分の気持ちや考えを伝え、対等な関係を築くことにあります。
私自身も、SNSで見かける紹介に違和感を覚え、iメッセージのルーツを調べてみました。そこでわかったのは、単なるテクニック以上の深い意味があること。
今回は、この誤解を解きながら、iメッセージの本当の使い方と意味をお伝えします。
『子どもが動く魔法の言葉』への違和感とその理由
iメッセージという伝え方を聞いたことがありますか?
「私は〜だと思います」というように、「私」を主語にして自分の要望や考えを伝えるコミュニケーションの方法です。
これとよく比較されるのが、「あなた」を主語にするYOUメッセージです。「あなたは〜だよね」「あなたに〜してほしい」といったように「あなた」を主語におくことで、直接的に指示や依頼を伝えやすくなります。
先日、SNSでiメッセージを紹介している投稿を見かけました。「子どもが動く魔法の言葉」として紹介されており、その中で紹介されていた例文がこちらです。
「宿題をやってくれないとママは悲しい。宿題してくれたら嬉しいな」
投稿には「子どもはママが悲しむところを見たくないため、ママに喜んでほしいという気持ちで行動するようになる」と書かれていました。この紹介を読んで、みなさんはどう感じましたか?
私はこの紹介にちょっと違和感を覚えました。
宿題をやらないのは子どもの問題であって、ママの問題ではないのでは?
ママは子どもが宿題をやらないことに悲しんでいるのか、それとも宿題をやらない子どもに対して悲しんでいるのか?
子どもが「ママに喜んでほしいから」と宿題をやるのは、子どもの自立を考えたときにどうなんだろう?
さらに、こんな疑問も浮かんできました。
iメッセージってどこから来たものなんだろう?
iメッセージの本当の意味って何なんだろう?
そこで、少し調べてみたところ、iメッセージには3つのルーツがあることが分かりました。
心理学者トマス・ゴードンが提唱した「わたしメッセージ」
アサーティブ・コミュニケーションとしての「iメッセージ」
アドラー心理学に関連するとされる説
これらのルーツを解説しながら、iメッセージの本質について深掘りしていきます。
iメッセージの3つのルーツ
1. 心理学者トマス・ゴードンが提唱した「わたしメッセージ」
アメリカの心理学者トマス・ゴードンは、1960年代に「親業訓練講座」というプログラムを開発しました。この中で彼は、子どもへの関わり方をパターンに分けて紹介していますが、その一つに「わたしメッセージ」があります。このメッセージは次のような3つ要素で構成されています。
相手の行動を非難せずに伝える (例 :「部屋に服が散らかっているね。」)
その行動が自分に与える影響を具体的に説明する (例 :「部屋が散らかっていると、気持ちも落ちつかないし、探し物をするのが大変なんだ。」)
自分の感情を正直に伝える (例 :「だから、ちょっと困ってしまうよ。」)
ここでのポイントは、最後に「だから片付けてほしい」といった提案はしないことです。子どもが自分の行動をどう改善するかを考えるきっかけをつくることが目的なんです。
2. アサーティブ・コミュニケーションとしての「iメッセージ」
アサーティブ・コミュニケーションとは、相手の立場や意見を尊重しながらも、自分の主張をしっかりと伝えるコミュニケーション方法です。この手法は、自己主張と他者への配慮をバランス良く保つことを目指しています。アサーティブ・コミュニケーションには次のようなポイントがあります。
誠実さ:自分と相手を同じように尊重するため、誠実な態度と言葉を選びます。
率直さ:自分の考えや感情をそのまま率直に伝えます。
共感:相手の意見や感情に寄り添い、理解を示します。
自信:自分の意見に自身をもって伝えます。
アサーティブ・コミュニケーションでは、iメッセージは、「誠実さ」「率直さ」「自己責任」といったマインドを実践する技法の1つと紹介されています。
3. アドラー心理学で提唱している説
アドラー心理学は、アルフレッド・アドラーが創始した心理学で、個人の「目的」や「課題」に焦点をあてた考え方です。
『アドラー心理学で提唱されているiメッセージ』という紹介されている記事や投稿もありますが、iメッセージとアドラー心理学は直接的に関係してはいないことがわかりました。
アドラー心理学は1911年に創始され、iメッセージは1970年代に開発されました。iメッセージは、アドラー心理学が誕生した後の時代にできたものです。両者には「相互尊重」や「課題の共有」といった共通点が見られます。そのため、iメッセージがアドラー心理学から生まれたかのように誤解されることがあるのかもしれません。
情報発信のワナ
私も含めて、多くの人がSNSを利用して情報収集を集めています。しかし、SNSの情報が必ずしも正しいわけではないということに、今回iメッセージを調べる中で改めて気づかされました。
SNSでは、情報が簡略化され、時には誤って伝えられることもあります。もちろん、正しい情報を発信されている方も大勢いらっしゃいますが、私たちもSNSの情報には頼りすぎないようにしたいものです。
まとめ :「相手を尊重しながら自分の主張を伝える」iメッセージ
iメッセージのルーツをたどってみると、それが人間関係を円滑にするためのコミュニケーション方法として発展してきたことがわかりました。その本質は、話し手と相手との対等な関係を築き、相手を尊重しながら自分の意見を伝えることにあります。
iメッセージは、主語を「私」に置き換えるだけで手軽に実践できる方法です。しかし、どんなコミュニケーションを使うにしても、それを伝える心構えの方が何倍も大切だと感じます。
子どもと接するとき、つい急かしてしまうことも多いですが、できるだけ相手を尊重する声かけを心がけていきたいものですね。
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