世界中の女の子に、人生の選択肢を。その後にWeb系スキルを。…ハ?

――世界中の女の子に、人生の選択肢を。

プラン・インターナショナルの広告が流れてくるたびに「選択肢があるというのは、なんて贅沢で苦しいことなんだろう」と”恵まれた”私は憂鬱な気持ちになるのです。

なぜなら、選択肢を与えるかどうかは環境の問題だけれど、選択肢を生かせるかどうかは個人の問題だから。

20数年生きた私は、その「選択肢を生かすかの個人の問題」とはつまり「個人の強さ」であることに気づき始めてしまいました。

プラン・インターナショナルの広告が言う、「搾取された状態の女性」が夢を叶えるまでには、3つのステップがあると思います。

①無知(の状態)
 ↓
 ・選択肢を提示する
 ・選択肢を自分の意思で選べるだけの知識を与える(教育)
 ↓
②選択肢がある(の状態)
 ↓
 ・数ある選択肢の中から”選ぶ”という行為を自律的に実行に移せるだけの強さを持つ
 ・自分の選んだ選択に責任を持って、実現させる
 ↓
③夢を叶える(の状態)

この工程の中で①から②に移れるかどうかは環境の問題。
そして②から③に移れるかは個人の問題だと思うのです。

恵まれていることに、私は客観的にみると「選択肢を与えられた女の子」でした。
①から②に移れるだけの知識を得る環境は与えてもらったし、大学に行って留学もさせてもらって、今思えば十分すぎるくらいの選択肢を与えられて育ちました。

でも、就職活動をして、だんだんと”大人”になって、私には②から③に移れるほどの”強さ”または”度胸”がないのかもしれないと気づき始めてしまったのです。
そしてその”勢い”が年齢とともに衰えていきそうなこと、開かれていたはずの選択肢がだんだんと閉ざされていきそうなことに切迫感が増しています。

今思えば遡れば遡るほど何にだってなれたはずの人生を、どんどん”普通””それなり”にしていったオトナな自分にうんざりしていたとき、とある本に出合いました。

※意訳
「人はなぜ宗教に入るのか?」
「人は生きていると、世界に存在する選択肢の多さにうんざりする。そして数ある選択肢から”選ぶ”という行為に疲れ果てたとき、人は宗教という”他人に与えられた絶対的な価値観に服従する”ことによって選択という苦労から解放される」

『完全教祖マニュアル』

※事前に一応、私自身がこの本を読んで本気で新興宗教を起こすほど、意識の高い”創始者”ではないことを弁解しておきます。(現に今も酒飲みながらこの記事を書いているし?)

要するに、男女共に高校進学率が95%を超えている我々日本人のような世界的に見れば”恵まれた”選択肢のありすぎる社会に生きる、私のような"一般人"が求めているのは、「選択肢の削減」つまりこの本の中で言う「宗教的教義」なのです。

『あたなは何にだってなれるのよ』『自分のやりたいようにしなさい』

そうやって期待されることが疲れる、というか怖い。
そういうプレッシャーを和らげるためには宗教ではないにしても、『あなたはこれになったら幸せなんじゃない?』といったくらいの"提示"が必要ではありませんか?

そしてそんな迷える悩める現代日本女性の心の支えとして現れたのが、「女性向けWeb系スキルスクール」なのでは?と思ってしまいました。

日本における義務教育と高等教育の浸透のおかげで、私たち日本人女性はかなりの程度で「なろうと本気で思えば」何にだってなれます。

しかしそんな大きな決断を10代のうちに出来るのも、周りが応援してくれたからといって実行に移せるのも、ごくわずかな勇気ある人だけです。そんな猛者ではないのに、こんな選択肢の大海に放り出された”迷える子羊”である我々一般人に君臨したのが、最近よくインスタ広告で見る「Web系スキルスクール」だとは思いませんか?

ただし私は、そんな"救世主"女性向けWeb系スキルスクールを信用しきれません。

なぜなら、こういう女性向けWeb系スキルスクールは(大義としては「女性にキャリアの選択肢を与える」的なエンパワーメント要素を押し出しているけれど、実際には)選択肢の飽和に疲れた日本の女性に、”一般的な日本人男性が進むキャリアから切り離す道”を勧めることに繋がっているような気がするから。

もし今の説明がうまく伝わっていないなら、あなたが"宗教"に対して持っている嫌悪感と重ねてみてください。

社会的に弱い立場の人を、うまい説明で口説いてコミュニティに所属させ、"希望"を与えながら定期的に金銭も回収する。

ほら…ね?

なんとなく、エンパワーメントという雰囲気で相手には気づかないような見えない力で選択肢を狭め、ジェンダーと職業をまた固定化させているような感じがしませんか?

こんな私のモヤモヤが果たしてどの程度の人に共感してもらえるのか、ドキドキしながらこの記事を切り上げます。

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