心療内科に行ってみた②
心療内科の門をくぐると、優しい優しいおじいちゃん先生に出会えた。不眠症と自律神経失調の診断を受けた。でも、休職の勧めは拒否してしまった。
超過勤務で産業医の面談
6月に120時間の超過勤務(残業)をしてしまったので、産業医の面談があった。人事の担当者も同席していた。初めて行った心療内科でH先生に診てもらった翌日のことだった。
「寝られてます?」
「いや、眠れないんです」
「食べられてる?」
「いや、食欲もなくて・・・」
なんせ面談時間は15分だけで、しかも昨日、H先生と40分も話をしたこともあり、かいつまんで症状を話した。
「顔つきは明るいけどねえ。でも、君みたいな人がポキっと折れてうつになるんですよね。心療内科の先生はなんて?」
「診断名はまだなんですけど、このままだとうつになるって。体から赤信号のサインが送られてるって言ってました」
「どうする?役職を配置転換する?」
その頃は社内のサツ担の中でも重要な役職を任されていた。誰でもできる仕事ではないと、自分の中では努力してその役職にたどり着いたプライドもあった。けど、体は悲鳴を上げている。
「デスクや先輩たちは仕事に配慮してくれているので、でもちょっと考えます」
入社以来、たまに会う人事の担当者もびっくりしていた。
「忙しいとは思っていたけど、それほど症状が出てるとは思わなかったよ。一度、私から編集に話してみますね」
自分からは言いにくかった。「人事の担当者が言ってくれるなら有り難い。現場の働き方を変えながら、体調を戻しつつ、頑張ろう」。そう思った。
早すぎる戦力外通告
産業医の面談の翌日、社会部長から電話があった。すぐに話がしたいと言う。次の日にアポを入れた。
アポでは洋食店に行った。食欲がなかったけど、オムライスを頼んだ。部長が美味しそうにフライを食べる様子を見て、私も少し食欲がわいた。そのオムライスはすっごく美味しかった。「ご飯食べられてるし、私元気になってるかも!」と思った矢先・・・
「あの、人事から産業医面談って体調が悪いって聞いて。どんな感じ?」
ここでもまた、部長に体調不良の話をした。「いつも元気!明るい!にこにこ!」印な私から、頭痛やらめまいやらの話が出て、びっくりしている表情だった。
「それでね、サツ担、代わってもらおうと思うんや。これ以上、サツ担を君には任せられない」
結構、ショックだったので、なんて言われたかはっきりとは覚えていない。でも、代わってもらう、任せていられないと言われた。戦力外通告やん。対応が速いなあ。
「とりあえず、診断名がほしいんや。早めに心療内科行って来てほしい」
配置換えにも診断名が必要なんや。頑張ってこの役職までやってきたのになあ。けど、私もう限界っぽい。しんどいもん。そう思って、心療内科を再び訪ねた。
自律神経失調の診断を受ける
初めての受診から4日後、診断を受けに再び心療内科へ。H先生は今日も優しく出迎えてくれた。
「大変なのに来てくれてありがとうございます」
優しすぎる。この日は前回に加えて、どれくらいの睡眠が取れているのか、朝起きた時の気分はどんな感じなのか、などを聞かれた。これまでの検査結果の資料とお薬手帳を持ってきてほしいと言われたので、持参した。
H先生が血液検査の結果を読み取ってくれる。若い割に腎臓の値が悪く出ていて、「飲酒の結果じゃないですか。気をつけた方がいいよ」と言われた。その後、お薬手帳を見た先生は驚愕。
「T先生(漢方医)、ちゃんと体調のこと聞いてくれたんですか。ちょっとあなたの話と薬の種類が合いませんねえ」
「実は、T先生に悪霊がついてるって言われて、それが嫌でもう行ってません」
「(H先生苦笑い)まあ、美的感覚で漢方を出す人もいるから、分かるんやけどねえ。でも、この薬はあなたの体質に合ってないですよ。毒を飲んでいたようなものです。
この漢方、一口でさらりと飲めましたか?体にあった漢方っていうのは、のど越しがさらさらしていて、薬から進んで自分の体に入ってきてくれる感覚があるのです」
そういえば、T先生のところでもらう漢方はいつも飲んだ後、口の中にザラザラと顆粒が残り、何度水を飲み込んでも口からにおいが消えなかった。ゲップもたくさん出た。合点がいった。
「じゃあ、診断書なんですけどね。不眠症と自律神経の乱れですね。いわゆる自律神経失調症なんですけど、そういう病名はないのでね。けど、これでは休職するには少し弱い。
お見受けするに、今あなたの状況は『うつ』といっても過言ではありません。『うつ』の診断を出しましょうか」
「診断書は休むこと前提ですよね。それが先生、私、次の人に引き継ぎをするまでは休めません」
「私は休むことをおすすめします。でも、どうしても仕事をすると言うなら、会社には絶対に行かないで。在宅勤務をしてくださいね。それから、耳に入る雑音は全てシャットアウトしてください」
そう約束して、十全大補湯と桂枝加菊薬湯の漢方薬を2種類出してもらった。漢方の説明もすごく丁寧で安心した。のど越しはするりと入ってきた。
今の状況は甘えですか?
最後に先生に聞いてみた。
「精神的な病って甘えなのかなって思うんです」
「あなたは自分が甘えてると思いますか?」
「体はしんどいです。でも、しんどさにかまけてるのかなとも思います」
「医師の私が診ても、あなたの体調は好ましくありません。ぎりぎりの一歩手前、いままさに限界の線を渡りかけという状況です。
甘えというのは、周りを気にするから思うことなんですね。もしかしたら、100人いたら2人くらいは甘えという人がいるかもしれませんね。でも、その人があなたの人生に何の関係があるんですか。
甘えだ!と言ってくる人なんて、あなたから関係を避ければいいんです。言わせておけばいい。医者の私が甘えではなく、体調の不良が精神の不調を招きかけていますよ、と言ってるんです」
H先生の口調が少しだけ強くなった。週明け、部長に包み隠さず報告しようと思った。
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