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善悪を超越したマルジャーナ【6】(追考編・3)/『アリババと40人の盗賊』

 追考編3回目はマルジャーナの突破力について考えてみました。
 マルジャーナは奴隷だったので、世間の心無い人から日常的に何かしら迫害を受けていたかもしれません。
 ほがらかに毎日を過ごしたいと思っても、境遇が境遇なので、どうするのが善でどうしたら悪なのか、その都度に的確な判断をしていても、主の気まぐれ次第で先行がどうなるか分からない理不尽な立場だったと言えるかもしれません。
 物語の最初に、「カーフ山の麓の町」と場所の明示があります。神の領域内での出来事という前提だと思います。物語はマルジャーナの信仰にはふれていませんが、盗賊がマルジャーナとのめぐりあいで破滅したことを考えると、彼女は人生経験から一心の突破力を知っていて、その覚悟はお腹の底の信に徹して生き抜いてきた力なのでしょう。
 平生の言行の大切さを知らない盗賊は、他を顧みることがなく、自己中心的な考えしか持たなかったので、善悪を超越した奴隷の存在は予想だにもしなかったことでしょう。
 人間が生きられるのは、飲食と金銭だけのことではありません。空気、光、気持ちも必要です。心性の如何にも関わらず盗賊にも与えられていました。
 しかし人間は自分が感得しただけのことしか分かりません。外的事物に執着するほど、心の底からのくつろぎから遠ざかる、という物語でもありました。

(了)
 
 

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