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高校の英語教師です。理論と実践を大切にした授業づくりを目指しています。ここでは、英語教…

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高校の英語教師です。理論と実践を大切にした授業づくりを目指しています。ここでは、英語教育に関することを理論に基づいてまとめようと思います。少しでも日本の英語教育が変わることを願い、日々奮闘しています!

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    英語教育についてまとめました。

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英語教師が「理論」を学ぶ理由

 私は現在、公立高校で英語を教えています。大学時代に言語習得研究(Second Language Acquisition, SLA)について学ぶ機会があり、外国語学習に興味を持ち、その後も大学院に通い、継続的にSLAについて学んでいます。  もう世の中には、たくさんの英語学習についての教材があります。書店には参考書、ネットには動画があります。これだけ多くの人が英語を勉強しても誰もが英語学習で成功しているわけではありません。それらの多くが個人的な体験談に基づいたものになっている

    • 英文法を教えるということ

      はじめに 「あれだけ言ったのに!なんで間違えてるの?」テストが終わり、採点をしている職員室でよく聞くこのセリフ。先生たちは一回は絶対に言うであろうこのセリフ。 ここでは、Second language acquisition mythsをもとに、「なぜ人は同じ文法の誤りをしてしまうのか」紹介していこうと思います。 文法の授業の効果はその時だけ 授業で教えたことが、中々生徒に伝わらないことや、理解してもらえないことがあります。そして、試行錯誤を繰り返し、丁寧に説明して、

      • 文法は学ぶのではなく、気づくことが大切

        Focus on FormsとFocus on Form  文法について勉強するとなるとどのような学習や授業を思い浮かべるでしょうか。おそらく、ワークブックにある( )に適語を入れたり、英単語を並べ替えたりして、それについての説明を聞くことが考えられるのではないでしょうか。  しかしながら、Ellis(2006)は、「明確な説明やドリルで文法を教える従来の指導では習得につながる可能性は低い(p.102)」と述べています。ドリル学習を通しても、文法事項を理解できないことが多

        • 評価は何のため?

           評価は何のためにするのでしょうか。学習者の成果を把握するためだけでしょうか。これまでは、学習者がどれだけやったのかということに重きを置き、どれだけ知っているかということが評価の対象となりました。 ここでは3つの評価について書きます。 ①Assessment of Learning  生徒がどれだけ知っているか。生徒が他の生徒と比べてどうなのか。平均点から見てどこに位置するのか把握します。今の生徒の学習状況を評価することです。総括的評価(summative assessm

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        英語教師が「理論」を学ぶ理由

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        記事

          外国語学習の動機づけ②

          The bridge between reality and a dream is work. -Jared Leto-  GardnerとLambertの研究の後、Dörnyei(2005)は、可能自己の理論に基づいてL2 Motivational Self System(L2MSS)の理論的フレームワークを開発しました(p. 105)。 可能自己というのは、Markus and Nurius(1986)が提唱したもので、可能自己とは、人がなろうとしている可能性のある姿で

          外国語学習の動機づけ②

          外国語学習の動機づけ①

           外国語学習に成功する理由と言えばなんでしょう?おそらくその一つがモチベーションです。持続的な高い動機付けのある学習者が外国語学習に成功することはおそらく間違いないと思います。したがって、動機付けについての研究はいつも教育の中心的な話題になります。「動機は、L2学習を開始するための主要な推進力を与え、後に長期的な学習プロセスを持続させる原動力を与えます」(Dörnyei&Ryan、2015、p。72)。多くの外国語教師は、学習者に言語を教える方法を考えがちです。しかし、動機と

          外国語学習の動機づけ①

          Communicative Language Teaching(CLT)

           コミュニケーション能力を上げるにはコミュニケーション活動が必要です。現代の英語教育で注目を集めているのが、Communicative Language Teaching (CLT)というアプローチです。このCLTでは、基本的な原理を設定しながらも、どのような教授法であるかは、具体的に示されていません。原理にしたがっていれば教師の創意工夫により、より効果的な指導ができるというものです。しかしながら、このCLTは、名前だけを知っていても意味がありません。コミュニケーション活動を

          Communicative Language Teaching(CLT)

          社会文化論と第二言語発達①

           みなさんはヴィゴツキーという心理学者を知っていますか。ヴィゴツキーは37歳という若さで、1937年に亡くなってしまいますが、彼の研究やその成果は未だに注目されています。  彼は、「人の発達は周りの人や物に助けられている」と考えました。その考えのもととなるのが彼の一番有名な理論であるzone of proximal development (ZPD)「発達の最近接領域」というものです。 人の能力には、自分一人でできる能力と人の協力を得てできる能力には差があると考えました。以下

          社会文化論と第二言語発達①

          未だに根強い古典的英語の授業(ALM)

           英語の教授法の一つにオーディオ・リンガル・メソッド(Audiolingual Method, ALM)というものがあります。以下にその例を挙げてみましょう。 don't want to ~ anymore 「もうこれ以上~したくないです」 問:例文に習って文を変えて言ってみましょう。 例文:I don't want to eat anymore. to sleep ⇒ I don't want to sleep anymore. to study ⇒ I do

          未だに根強い古典的英語の授業(ALM)

          コミュニケーション活動とは?

           コミュニケーション能力について以前の記事で書きました。では、コミュニケーション活動とは何を意味するのでしょうか?コミュニケーションを取ることが大切と言われていますが、コミュニケーションを取るとはどいうことなのでしょう?  Savignon(1998)はコミュニケーション活動について述べています。 表現すること、理解すること、伝え合うこと​  つまり、誰かが考えや要求を表現し、その意味を相手が理解します。その時、部分的にわからない部分を聞き合いながら理解していく。この行

          コミュニケーション活動とは?

          お互いが憧れの存在 Near Peer Role Models (NPRMs)

           学校や職場で前向きに頑張っている人の多くには、自分の憧れの存在が周囲にいます。例えば、学校であれば、それは部活の先輩だったり、クラスメイトだったりします。職場で言えば、上司や先輩でしょう。外国語教育に幅広く研究しているTim Murpheyは以下のように述べています。  "Presenting role models who are from the same culture, near the students' ages, and using English succ

          お互いが憧れの存在 Near Peer Role Models (NPRMs)

          学校教育で身につけたい知識(宣言的知識と手続き的知識)

           知識には、2つの種類があると言われています。1つ目は、情報を理解したり、知ったりする「分かる知識」です。2つ目は、自転車に乗ったり、箸を使ったりする「できる知識」です。  1つ目の「分かる知識」のことを宣言的知識と言い、英語学習においては、単語を覚えたり、文法を意識的に勉強することです。この「分かる知識」は、言葉で説明することができます。例えば、過去のことを表すには、動詞にedをつけると説明することができます。  一方で、「できる知識」のことを手続き的知識と言います。あ

          学校教育で身につけたい知識(宣言的知識と手続き的知識)

          いつ子供は英語を習い始めるべきか

           目標がネイティブのように英語を使うことであれば、できるだけ早く英語学習を始めた方がよいでしょう。  人には臨界期というものがあり、自然と身につけられる能力にはある特定の期間でしか身につかないとされています。例えばLとRの聞き分けができるようになるのは生後1歳前後10か月までとされています。  このように、人には身につけられる能力には臨界期があり、早期英語教育の話題もこのことが話題によくされます。何歳まで言葉を自然に身につけられるのかという研究もされており、およそ12、1

          いつ子供は英語を習い始めるべきか

          理解可能なインプット(Comprehensible Input)の重要性

           英語学習の際に、どのような長文を読めば効果的な学習ができるのか、レベルや長さなどいろいろ迷うことがあると思います。 今回取り上げるのは、理解可能なinputの重要性です。  言語学者であるKrashenは理解可能なインプットが言語習得に必要としました。ここでは、習得(acquire)と学習(learn)を使い分けています。特定の言語に焦点を当てなくても、理解可能なインプットを通すことで言語習得することができ、特定の言語の形や規則については学習することができるとしています。

          理解可能なインプット(Comprehensible Input)の重要性

          外国語教育におけるコミュニケーション能力(Communicative Competence)

           英語教育の中で、「コミュニケーション能力」という言葉が頻繁に使用されています。しかし、そもそもこの「コミュニケーション能力」はどういった意味なのでしょうか。この定義が曖昧なままでは、学校教育の目指す英語教育の目的が曖昧なままではないでしょうか。  これまでの言語学習は言語そのものに焦点が当てられてきました。例えば、1950年代には、言語の違いを比較することによって言語の構造を学習することで、言語学習に取り組みました。このことについて、Brown(2000)は、「20世紀半

          外国語教育におけるコミュニケーション能力(Communicative Competence)