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外国語教育におけるコミュニケーション能力(Communicative Competence)

 英語教育の中で、「コミュニケーション能力」という言葉が頻繁に使用されています。しかし、そもそもこの「コミュニケーション能力」はどういった意味なのでしょうか。この定義が曖昧なままでは、学校教育の目指す英語教育の目的が曖昧なままではないでしょうか。

 これまでの言語学習は言語そのものに焦点が当てられてきました。例えば、1950年代には、言語の違いを比較することによって言語の構造を学習することで、言語学習に取り組みました。このことについて、Brown(2000)は、「20世紀半ばは、言語の相互の違いに焦点を当てた、言語構造の科学的、言語学的分析への熱意が特徴であった」(p. 245)と述べています。つまり、言語教育は言語の構造や意味を学習することが重点的に行われました。

 日本では、平成元年に文部科学省は、「外国語で積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育てる」ことを学習指導要領のなかで明記しました。外国語を知識に焦点を当てた学習から、より外国語を実践的に使えることを目標としました。

 Savignon(2002)は、コミュニケーション能力には(1)Discourse Competence (談話能力)、(2)Socio-linguistic Competence (社会言語能力)、(3)Strategic Competence (戦略的能力)、および(4)Grammatical Competence (文法的能力)(p. 8)の4つの能力で構成されていると述べています。まず、談話能力とは、文脈を読む力です。文章をつなぎ、一連の発話から意味のある文を形成する能力です。次の、社会言語能力は、言語とその社会文化的ルールを合わせることができる能力です。例えば、日本では、頂き物を一回断ることや、敬語を用いることが挙げられます。また、戦略的能力は、ルールやその他の限られた能力に関する不完全な知識を補うために使用されます。例としては、言い換え、繰り返し、ためらいなどがあります。そして、文法能力とは、語彙の知識と言語の構造についてどれだけ使えるかという能力です。これらの4つの能力は関連性があり、どの力もバランスよく育成することが、コミュニケーション能力向上につながるとされています。

 

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