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キキとのかくれんぼ

ポートランドは今日も雨模様。どんよりとしたグレーの雲が空を覆い、一日中小雨が続く。そしてそんな天気にもかかわらず、窓の外からは時折ザッブーン、と誰かが敷地内のプールに飛び込んだ音が聞こえてくる。プールに入るかどうかの基準は、ここでは天気じゃなく気温なのかと変に感心してしまう。


そんな雨の日はキキにとっては退屈極まりない日だ。散歩の時間や頻度が少ない日はやはりフラストレーションが溜まっているようで、ベッドを噛んで遊んだり、靴を持ち出してきては私と夫を困らせる。

レインコートを着せて散歩に出る選択肢もあるのだろうが、唯一持っていた犬用のコートはキキが噛んで破壊してしまってから新しいものを買っていない上、私の体調もイマイチで雨の中ガッツリ歩きに行こうと思えない。

思いきり遊ばせてあげられない罪悪感をこねくり回した結果、かくれんぼする?という半ば意味不明な提案をしてみた。キキにおすわりと待てをさせている間に私がどこかへ隠れる。隠れ終わったところでキキを呼んで探してもらう、という単純な遊び。これが意外にも楽しくて、ついもう一回、もう一回、と続けてしまっていた。

待てのまま私が隠れに行く先を見つめるキキと、見られていることお構いなしに身を隠せるような限られた場所で息を潜める私。
「見てもうてるやん。」
リビングで仕事をしている夫は苦笑いである。


しかし、待ての間は言われた通りにおすわりしたまま待ち、私の掛け声で探しに行っていいこということをキキはすぐに理解した。我が子ながら飲み込みが早い。隠れに行く私を一部始終見ているにも関わらず、呼ぶとトコトコ歩いてきては「みーっけ!」と言わんばかりに嬉しそうに飛びついてくる。そんな顔で見つけられたらこっちも嬉しくなってしまうし、隠れ甲斐もある。


そんな単純なかくれんぼを何回繰り返しただろうか、流石に隠れ場所もネタ切れで同じ場所に隠れざるを得なくなってきた頃、キキも飽きてしまったのか、探すのやーめた、といったそぶりで床にゴロンと横になった。と思うと、次の瞬間にはことんと寝落ちているから、こちらは拍子抜けである。

ちょっとは楽しんでくれたかな、と思いながらキキの寝顔を見る。不覚にも私もいっとき無心で遊んでしまったではないか。できるなら毎日外で思い切り歩いたり走ったりさせてあげたいけれど、家で過ごす日も一緒に楽しく過ごせたら、それはそれでいいのかもしれないね。

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