
意味のストライクゾーン2 不定詞は本当に意味がたくさんあるのか?
中学校で不定詞って習いますよね?
to +動詞の原形で
名詞的用法 「〜すること」
形容詞的用法 「〜するための」
副詞的用法 「〜するために」
みたいに意味が分かれるんだよって習いますよね。
ところが高校に入ると、その枠に収まらない不定詞が出てきます。
例えば「結果を表す不定詞」
My grandfather lived to be 100.
これなんかは中学校の時のように訳そうとすると、「私の祖父は100歳になるために生きた」なんておかしな訳になってしまいます。
さらに「be to 不定詞」なんてのも出てきて、
予定 義務 可能 意図 運命
と5つの意味があると教えられるわけです。
さらにさらに、不定期なのに to が無い原形不定詞なんていうのも出てきて、じゃぁ不定詞って何なの?と言う疑問を持った方も多いのではないでしょうか?
To はTo じゃない?
最初に to という単語が出てくるのは、おそらく
I go to school.
みたいな文ですよね。
この場合の to は言ってみれば矢印→のようなある到達点に向かうことを前提とした方向感を持ったベクトルのようなものだと思います。
そのニュアンスで不定詞の様々な文を解釈してみます。
① I went to Italy to study art. (副詞的用法)
私は行った(到達地点は)イタリア、(さらにその到達地点は)美術の勉強
② I want to eat something. (名詞的用法)
私は欲しい(その気持ちの到達地点は)何か食べる
③ I need someone to help me. (形容詞的用法)
私は誰かが必要(その到達地点は)私を助けてくれる
④ My grandfather lived to be 100.
私の祖父は生きた(その到達地点は)100歳(結果)
⑤ We are to have a meeting tomorrow.
私たちは(到達地点が)明日会議がある(予定)
⑥ He was never to meet his mother again.
彼は(到達地点が)二度と彼のお母さんに会わなかった(運命)
⑦ He was to pass the exam.
彼は(到達時点が)試験の合格だった(可能?予定?)
⑧ I am to attend the meeting.
私は(到達地点が)会議に出席する(義務?予定?)
⑦と⑧の場合はこの文だけ取り出したのではどんなニュアンスだかわからないですね。
もともと同じ表現で、そっちに向かうっていうニュアンスでしかないので、状況によって意味を感じ取れればいいわけです。
細分化することの功罪
ここでは不定詞を例に取りましたが、日本人が英語を学習するに時に一つの単語や表現が様々な意味で使われることに戸惑いや面倒臭さを感じる人も多いと思います。
私はできるならば英語の core meaning から教えるようにしたいと思ってできるだけそうしていますが、現実には core meaning を言語化するのは非常に難しいことです。
我々日本人が外国人に「どうも」の意味を教えようとしたら、やっぱり場面ごとに、この時は「ありがとう」、この時は「すみません」ですよ、って教えちゃうと思うんですよね。
ネイティブは大量にインプットされた情報による「暗黙知」としてある特定の語のストライクゾーンを感覚的に認識しているので、それを言語化するという経験がほとんどありません。
「英語を日本語に訳さずに英語のまま理解すべき」ということも良く言われますが、私は個人的にはそれってかなり難しいことなのではないかなと思っています。
できなくはないけど、途方もない時間が掛かってしまいます。
留学とか海外での生活経験のある人は膨大なインプットを通じてその「暗黙知」を感覚的に形成するまでに至るかもしれないですが、普通に学校でしか英語を学ばない人にとっては物理的にそんな時間は取れないので、やはり学習者が「ああなるほど」と理解できる説明のノウハウの構築は必要なのではないかなと思います。