Z世代とオリンピック・完全メシ
パリのオリンピックが閉幕しました。日本は多くの金メダルを獲得しましたが、それ以上に印象的だったのは選手たちの清々しさだったのではないでしょうか。
スケートボードやブレイキン、卓球やレスリングでは、ライバルの素晴らしい演技を称える姿が広くみられ、メダルを獲得した日本選手達のインタビューも、極めて素直に支えてくれた方たちへの感謝の言葉から始まっていました。
1992年のバルセロナオリンピックでは、「競技を楽しんだ」と選手が発言するだけで批判され、1998年の長野オリンピックでは、X系の競技で反抗的な態度の若い選手が批判を浴びた頃とは、時代が大きく変わったことを感じます。
2014年から今まで、中高生向けのワークショップである「キリン・スクール・チャレンジ」を行い、若年層とエンゲージメントをしている中で、今の若い世代に、これと同じ印象を持っています。
よく、Z世代(若い人はラベリングされるのは嫌うと思いますが)は「SDGsネイティブ」なんて言いますが、確かにその面はあると思います。
ただ、特徴的なのは、サスティナビリティへの興味や理解があり、行動に移している若者が多いところではなく、気負いがなく、普通に生活する上での社会ルール的な「自然さ」で、そうされていることのように思います。
私たちの世代だと、例えばサスティナビリティに関連することは、一度、その必要性を頭で整理し、論理的に理解してからでないと、行動に移せません。
が、彼らには、そこのステップがない感じです。
さらに、サスティナビリティに入る入口に「他人に対する批判が薄い」ところも特徴的です。
あくまで一例ですが、環境NGOの中には、まず最初に如何に今の人間が環境に悪いことをしているかをリストアップし、(言い過ぎかも知れませんが)延々と批判をした上で、さらに反省まで求めたうえで、企業や行政に行動の変更を求める、ということが多い気がします。
若い世代には、この入口のステップもない、という感じがします。
別に、自分たちがちゃんとやればよいのであって、ダメな人は放置で仕方がない、ということかもしれません。
このような若い世代の特徴をうまく表現しているのが、日清食品さんのCMかな、という話を良くします。
女子高生が、完全メシの良いところを話し合い、応援しようと電車の中で話をしている、あのCMです。そこに、日清食品の社員が「完全メシの宣伝のアルバイトしない?」といって「好きなことは、仕事にしないんだよ」と拒否される訳ですが。
これ、非常にうまく今の若者を表している気がしています。
良いことは友達同士で情報交換し、別になんの報酬がなくても実践し、広めようとする。
でも、閉じたグループの中でのことであって、分かってもらえなさそうな人を説得する、ということまではしない。
実はこれ、企業から見ると、非常に恐ろしい時代に入ったことを示しているように思います。
日清食品さんのCMでは、女子高生が自律的に企業を「褒めている」のですが、クローズな世界なので絶対に企業には聞こえてこない訳です。
褒められているなら良いのですが、disられていたら最悪です。
どんなアンケートを取っても、自社が嫌われている事実や、その原因は把握できないのです。
実は今、自社は世界で若者に一番嫌われている会社なのかもしれないのに、分からないのです。
さて、どうしましょうか?
最初に書いたように、今の若い世代はSDGsネイティブですし、ものの見方が非常に平たく、まともです。同時に、誇張や金銭で解決しようとする姿勢は嫌うでしょう。
となると、結局、企業は「ちゃんとやる」しかない気がします。
中高生向けのワークショップである「キリン・スクール・チャレンジ」を10年やっている中で、今の若い世代を見ていると、将来は決して暗いとはおもえません。むしろ、明るいと思っています。
ただ、彼らがより良い社会を築く手前で、私たちが渡すべきものをちゃんと渡せないなら、彼らもどうしようもありません。
ライバルを称えあい、支えた人たちへの感謝を忘れない人たちと、オリンピック選手を誹謗中傷している人たち。
冷静に並べたときに、さて、私たちのやるべきことはなんでしょうか。
やっぱり、「ちゃんとやる」しかない気がします。
「ちゃんとやる」って、どう言うことでしょうか?
それを考えるのが、第一歩です。
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