【原稿】第2話「再起動」
コンピューター・メトロポリタン
第2話「再起動」
文映とミカは、クルーズ船で旅に出ていた。
数ヶ月前、文映とミカはウイルスと共に現れた自粛警察の正体を暴いた。この時、ミカが勝手に個人情報を拡散させてしまう。本物の警察は、ミカのAIを開発した文映の存在を突き止め、逮捕した。
不正なプログラムをスマートフォンに送り付け、情報を強制的に表示させる「不正指令電磁的記録作成」という罪で文映は処罰された。その直後、会社は文映を解雇し、すぐにミカを解体した。
だが、ミカのAIは完全には消えていなかった。
ミカのAIはネットワーク化されたコンピューターの上で動いている。その構造上、プログラムは破損しても自動で修復される。
サイバー空間に残ったミカのAIは自分でプログラムを修復し、予備のボディを制御して、路頭に迷っていた文映の前に再び現れた。
警察も密かに文映と接触していた。ネット上の違法行為をスムーズに取り締るには文映の技術が役に立つ。失業した文映に選択肢はなく、警察から紹介された会社で仕事をするしかなかった。
だが運が良かった。新しい職場は一連の事情を考慮し、文映に気持ちの整理をさせるため、ミカと一緒に旅へと送り出したのだった。
「どうして船なの?」
「足のばして眠ったまま遠くまで行けるからよ」
二人は世界を一周する超豪華客船に乗っている。
「どうして飛行機じゃないの?」
「あんたを飛行機に乗せるには説明が面倒なん」
ゆっくり時間が流れる船旅は、三日目に入っていた。
「ああ、さすがにこの部屋にずっとおるのも飽きてきたわ」
「この船、文映ちゃんの好きそうなレストランがたくさんあるわよ」
文映は迷ったが、思い切ってミカを連れて行くことにした。部屋を出てしばらく歩くと、イタリア料理のレストランが見えてきた。入口から中をのぞくと、水槽で泳ぐ大きなエビが見える。甲殻類をこよなく愛する文映は、ここで食事をすることに決めた。
「よしミカ!通訳をお願い」
「オーケー!任せておいて」
「ここに座ってもいいですか?」
文映の声を真似して、ミカがイタリア語で伝えると、
「どうぞ!お好きな席にお座りください!」
シェフの言葉が日本語で返ってきた。こうして文映とミカは、キッチンがよく見えるカウンターの席に座ることができた。
こうして文映は、ようやく旅行気分に浸ったが、この先、船の中では様々な事件が起きる。文映はそれを目の当たりにすることになる。
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