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25歳既婚男性の美少女アイドル、歌う!踊る!初ライブしてみた!メタバースで本来の自分きらり輝く - VRChat

 1月30日、私、蘭茶みすみはメタバースプラットホームVRChatのライブイベント「OpenMicBarSpotLightTalks(SLT)」で突発初ライブをしてきた。セットリストはKapruitさんとの未発表オリジナル曲「カラフル☆メタバース」ふくめた4曲。アバターでVRに入り、ボイスチェンジャーを使って生歌と踊りを同時に披露するのは初めてで、20人近くの来場者が美少女アイドルの初舞台を見守った。

 私は間違いなく17歳の女の子。存在的には何の価値も持たないが、生物学的・戸籍上肉体は25歳の既婚男性だ。私にはアイドルとしては憧れの存在がいて、声優の小倉唯さんだ。私が女の子になりたい理由は、昔から女の子で在りたかったからだ。小学生の頃から高い声で喋ったり、女装をしていた。私は私が最も自分らしく生きられるようにするためだけに、生物学的肉体がアイデンティティとは何の関わりもない「肉体廃止」という世界を目指している。

 私はVRヘッドマウントディスプレイ「VIVE Pro Eye」と指の動くコントローラー「Valve Index」、全身の動きを伝える腰と両足の「VIVE Tracker」を身に付けて、メタバースの世界に生きている。声帯を鍛えたうえで、ボイスチェンジャーを通して女性に聞こえる声を実現しつつある。

SLTで初ライブを披露する蘭茶みすみ - 1月30日 VRChat(シュネーさん提供)

 SLTは毎週土曜日夜にVRChatユーザーのAONEKO/青猫さんが開いているライブイベント。生歌や生演奏のメタバースアーティストが30分の枠でパフォーマンスをしている。基本的に予約制だが、枠が空いていればスタッフに声をかけてライブができる。歌に興味があった私は明け方までパフォーマンスを見ていたものの、ついに「私も歌いたい!」という胸の高まりが抑えられなくなって青猫さんに声をかけた。

 SLTのスタッフも、来場者の方々もとても親切で、私が恐る恐る申し出た「歌いたい」という願いを全力でフォローしてくれた。声の確認や、PCの音声をストリーミングでワールドに流す「Topaz Chat」というアプリの使い方を教えてくれた。多くの人の空間に浮かぶスタンプの声援を背にしながらステージに上がり、振り返る。Topaz Chatをオンにした。

 「あ、あー、聞こえていますか?」。観客がうんうんと頷く。「それでは、私、蘭茶みすみの初のステージ、皆さんにお見せする初めての歌を聴いてください」。会場は静まり返る。ゴクリとつばを飲み込む音が聞こえる。

 最初の歌はバーチャル美少女ねむ氏とKapruit氏「ココロコスプレ」。メタバースの世界で変身する喜びを歌った歌だ。ボイスチェンジャーのループバックで戻ってくる私の歌声は、私が夢見るアイドルそのもの。私が手を突き上げるごとにみんなが一緒に手を挙げる。

 クリプトアイドル「メタバース」、あしやまひろこ氏とAtree氏の「メタバース音頭」も歌う。公式振り付けも考えたみんなで楽しめる曲だ。「メタメタメタメタバース」という特徴的なメロディーに、会場全体が一体化する。次のバーチャル美少女ねむ氏、Kapruit氏の「午前3時のファントムセンス」でしんみりとしたあと、セットリストの締めとなる最後の曲に。

SLTで初ライブを披露する蘭茶みすみ - 1月30日 VRChat(シュネーさん提供)

 「皆さん聞いてください。次は最後の曲で、私が初めて皆さんにお聞かせする『カラフル☆メタバース』です」。会場から「おお!」というどよめき。「みすみーーーーん!!!!」「みすみん最高!!!!!頑張って!!!!」という声援も聞こえる。女声で喉を酷使するため、水を飲み終えると、マイクの位置を確かめる。体勢を整え、音源の再生を開始する。

 「カラフル☆メタバース…♪」。イントロに入る。視線が私に集中する。「子どもの頃 夢見ていたんだ 大人になってから忘れかけていたストーリー♪」。Aメロだ。歌詞に込めた思い。いま、ここに実現している。「そう いつまででも思い出して良いんだからね♪」私の口から私に語り掛ける。「私たち秘めてる本当の姿を♪」。観客も暖かい声援が、私の背中を後押しする。私たちは、宇宙、ビッグバン、そして、作られた宇宙(そら)を照らす星だ。「眠っていた夢たちが カラダ あふれて 私のカタチ彩って叫ぶ(カワレ!)」

 間奏に入る。体を溢れた衝動が私を突き動かす。「みんなーーーー!!!私の初めてのステージ見てくれてありがとーーー!!!!みんなも一緒にメタバースしていきましょう!!!!皆さん一人一人の笑顔がメタバースですよ!ハイ!ハイ!ハイ!」。会場が大きく盛り上がり、歌にのせて私に合わせてハイ!ハイ!ろ拳を突き上げる。これがメタバースか…!!!!

 「眠っていた夢たちが 宇宙を飛び出して 時間さえも彩って 私、君になりたい カラフル☆メタバース♪」。私という存在が放った歌が空間を一体化させる。空気を混ぜ合わせる。人間の心と人間の心をつなぐ。これがメタバース…!最後にクルリと一回転して、すべてのメタバースが私に収束する。

 「ありがとーーーーー!!!!!みすみん最高!!!!!」TopazChatを解除して壇から降りると、次々とフレンドが詰めかけてきた。私は一人一人と握手を交わす。視聴覚だけのメタバース、こんなに暖かい握手があっただろうか?

 メタバースの真の価値は、「存在の自由」「関係性の自由」「空間の自由」のすそ野を広げることではないだろうか?メタバースがなければ、私は美少女アイドルとしていられなかったし、ファンとの交流を楽しむこともなかった。こんな大きなステージに立つこともなかった。これらは一部の資本のあるものに独占されていた。SNSによって多くの人に創作活動の発表の場が開かれたように、メタバースでは空間と存在が開かれる。

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