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『母親xマネジメント』~母親がマネジメントを学んで考えたこと~

2022年6月、私は所属するオンラインコミュニティ「母親アップデートコミュニティ(以下:HUC)」で部活を立ち上げました。
その名も「マネジメント研究会(以下:マネ研)」。

「母親」と「マネジメント」
この二つの言葉の組み合わせに一体何の関係があるの?と多くの人の頭にハテナマークが浮かぶのではないでしょうか?

私も二人の娘の母親として、初めてこの問いに接した時に同じ疑問を持ちました。
でも、私の尊敬する先輩の女性たちが実体験として語ってくださった「母親とマネージメントの仕事は驚くほど似ている」という真意を探求してみたい!という思いでHUC内でマネ研を立ち上げ、賛同してくれるメンバーと一緒に約1年半かけて学んできたことをシェアしたいと思います。

マネ研を立ち上げた経緯や思い、そして序盤学んだことについてはこちらの記事でお話ししているので、よかったらご参照ください。



マネ研を通じて学んだこと

改めて、私たちはHUCで「マネージメントを研究する会」と銘打って月1回のペースで、『人の気持ちが分かるリーダーになるための教室』という本にある課題図書を読み、語り合ってきました。

約1年半かけて読んだ本は14冊。
仕事や家事に加えて、母親という役割を抱えながらなので、夏休みや年末年始といった長期連休を避けながら、夜の部・昼の部と毎回2回開催で延べ100人以上のメンバーが参加してくれました。

本を読んでの感想はもちろんのこと、メンバーそれぞれの子育て体験、自分が育てられた時の思い出、会社でマネージメントをする立場やされる立場として感じたこと等々様々なことを話し、この本が伝えたい本質的なことを色々な角度から考えることができたと感じます。

エモくないですか?
ただでさえ時間がない母親たちが、細切れ時間を使って読書し、貴重な土曜日の夜や平日の昼間の時間を使って「学びたい!」という意欲だけで集まるなんて?!

こんな母親たちの向上心があれば、日本の未来は明るいですよ(^^)
私もそんなメンバーの姿を見ているからこそ頑張って来れました。

マネ研で扱った本は、古今東西問わず、名著と呼ばれる有名な本もあれば、このブックリストになければ一生手に取ることもなかったかもしれない本もありました。
所謂マネジメント本と呼ばれるような本はほぼなく、ハウツーが紹介されているわけでもありません。

私たちがこの1年半マネ研を通じて学んだことはたくさんありますが、ここでは私自身最も印象に残っていることを3つ挙げてご紹介します。

・ものを見る見方

私たちは一人一人違う生い立ちを持っています。
母親になって改めて感じるのは、同じ両親のもとに生まれたとしても、子供の個性は親とも兄弟とも全く違う「持って生まれた何か」がそれぞれあるということ。
それに加えて、出会った友達、先生などの関わった大人、その時の社会状況や学校の雰囲気等々、ありとあらゆる偶然の要素によってその人が出来上がっているはずです。

私も、あなたも、他の人もそれは全く同じ。つまり、私たち一人一人が別々の個性と「価値観」を背負いながら生きていて、その両者で関係構築していく必要があります

誰もが「ひとそれぞれ」という言葉を頭では理解できていると思いますが、実際は「何でこんなことをするんだ!」とか、「こうして欲しかった…」などの喜怒哀楽を感じるのは自分の価値観が作り出した相手への期待値と現実のギャップによるものではないでしょうか。

とはいえ、自分の価値観で相手を判断するということは、生物として人間が獲得してきた脳のデフォルト仕様。
瞬間的に湧き起こる感情反応を取り払おうとか、回避することは困難です。
それでも、一呼吸おいて相手がその行動に出た意図とその背景の価値観、その感情を抱くに至った自分の価値観、背景に思いを馳せるということはできます

人それぞれの正しさやその背景があることに気づくことで、自分の心も落ち着きますし、相手に合意できなくても理解しようという姿勢があれば、たとえ価値観が違ったとしても共有できる目的を見出し、それに向かって協力することができるようになるのではないでしょうか。

・自らを内側から支えることの大切さ

そして、この姿勢は自分自身にしっかりと軸があるからこそ成せるもののように私は強く感じます。

私自身、会社員として働いているときに母親になり、一番堪えたのが「誰からも認められない」ということでした。

学校、会社など、それまで生きてきた世界では、努力した結果が成果として認められ、評価を得たり、報酬を得たり、それによってまた頑張るというサイクルが出来上がっていた気がします。

一方、育児は母親がどれだけ努力しても、子供は思い通りになりません。泣き止んでくれないし、寝てくれない…

学生時代の友達や会社の同僚は仕事で成果を出していたり、プライベートで楽しんだりしている一方、頑張っても思い通りにならず、私自身の成果と呼べるものもなく、褒められもしない、報酬もない、自由な時間もない、育休中の私。

まるで私だけ時間が止まった空間の中にいるようでした。

この状況の中で、幸い私はコーチングを受けて、ようやく自分自身を認めてあげることができるようになったのですが、このトラップにはまって自己肯定感を下げてしまっている母親は多いと感じます。

「自己基盤」という言葉が近いのかもしれませんが、自分の価値を外的評価に依存するのではなく、自分の内側に拠り所を持つことの大切さを実体験と重ねて考えることができたことはマネ研で得た大きな気づきでした。


・人を育てることの根底にあるもの

さらに、マネージャーの大切な仕事として、人材育成があります。
子供を育てることと共通する点ですが、これは私が育った時代と、今では家庭でも社会でも大きく違うということを肌で感じます。

私は昭和生まれで、学校では偏差値の高い学校が「いい学校」とされて、そこに進学することを目指し、誰かに言われたわけではありませんが、卒業したら「いい会社」に入ることが既定路線だと思っていました。

成功するには正解があって、自分の弱点を修正し、成功している人のやり方を見習って努力するという方法しか知らなかった気がします。

でも、今は違いますよね。

VUCAと呼ばれる時代になり、誰も正解が分からない、むしろ答えなんてないかもしれないことばかりで、過去の成功パターンも経験も通用しないかもしれない世界。

だからこそ、自分でやり方を探さなければならない時に、ここでならチャレンジできる!という自己効力感を育んでくれる環境が必要だと思うのです。

自分の強みを活かしたやり方を応援してくれる誰かや、例え失敗したとしても、もう一度挑戦できるエネルギーをチャージしてくれる人というのは、母親や父親や家族であり、組織においてはマネージャーがその役割を果たすべきだと私は思っています。

それは、成績を上げているから・可愛いからというような「条件付き」ではなく、無条件に認められるということが大切。
とはいえ、これは何でも許されるという甘えの関係とは違うのだということは強調しておきたいと思います。

無条件の愛をただ受け取るだけのTakerの姿勢では、信頼関係は構築できないもの。その環境を作ってくれている周囲の人たちに貢献したい、という主体的な姿勢こそが関係性をより強固なものにしていくのに欠かせないはずではないでしょうか。

「エンゲージメント」という言葉は、「婚約」という言葉からも分かる通り「約束」という意味があります。

組織におけるエンゲージメントも、親子関係におけるエンゲージメントも「無条件の愛」x「それに応えたいという姿勢」によってより強固なものになっていくように思います。

「マネージメント」や「エンゲージメント」の視点をもって、自らを成長させていく道は、時に苦しい時もあると私自身感じていますが、物事を多面的に考え、自分の内側に拠り所を持ちながら、愛をもって相手と関わるという姿勢が、まさに母親であり、皆がこの人についていきたい!と感じるマネージャーの理想像ではないでしょうか?

改めて母親とマネジメントを考える

「よき母親 and/or よきマネージャーを目指す」というテーマを掲げてマネ研を立ち上げてみて、そもそもテーマ自体見直した方がよいということにも気づきました。
それは母親、マネージャーという役割以前、私たち一人一人が「よき人間」を目指すべきということ。

役割の仮面をかぶっている時だけ発揮される力は偏りがあったり、無理が生じたりするもののような気がしています。

母親という役割や社会的な肩書、性別や国籍のような属性以前に、人としてどうあるべきか、という問いに応え続けることで、「あり方(Being)」が鍛えられ、考え方や行動(Doing)が変わってくると私は感じています。

例えていうなら、小手先でどのアプリやソフトを選ぶか以前に、自分を動かしているOSを常にアップグレードし続けていくことで、どのような役割もこなしていけるようになれるはずというイメージ。

そして日本語では「マネジメント」という言葉はビジネスシーンに紐づけられているため、「管理する」というニュアンスが強いような言葉になっていますが、英語ではもう少し幅広い使われ方をしていて、"I will manage that." だと「なんとかする」ことを意味します。

まさに母親業は毎日がマネジメントだと言えますよね。

私たち母親は、ほぼ毎日予期せぬ出来事に遭遇しています。
ちなみにこれを投稿する数日前、我が家の娘2人同時にインフルエンザに感染し、連休の予定が全部パーになったという悲劇に見舞われましたが、色んなところに電話でキャンセルやリスケをお願いし、元気になった子供たちが家で退屈しないように手を変え品を変えネタを用意し(Amazon神!)てるという状態…

私もここまでまぁ偉そうなこと書いてみましたが、実際は日々発狂してますよ(^^;)

子供を持つことはムリゲーとか罰ゲームと言われる昨今、私も目の前で繰り広げられるケンカにイライラしたり、こちらが良かれと思って言ったことややったことにキレられたり、子供の都合で仕事が思い通りに進まなかったり、母親業をやっている中で、仕事も人生もいろいろありますが、マネ研と実生活で頭と心を鍛えることが、人生をより味わい深くしていくような気がしています。

もっとついでに言うと夫に対しても直近で色々思うところがありましたが、マネ研を通じて学んだことで、自分でも驚くほど捉え方が変わりました。

最後にブックリストの中で私が最も心の中で反芻した言葉をご紹介したいと思います。

誰かを愛するというのは、激しい感情ではない。
決意であり、決断であり、約束である

エーリッヒ・フロム『愛するということ』

愛というのは甘く優しいものではないからこそ深いんですね。

多分、子供たちからは一生学び続けさせられるでしょう。
だから、私は何度生まれ変わっても母になりたいと思うのです。

なお、HUCでは2023年1月からマネ研2巡目を開催します。
もしご興味ある方はぜひHUCにご入会下さいませ(^^)
一緒に学べるのを楽しみにしています。


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