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加速しているハイテックハブにあるアパート家賃の下落(21/02/01配信予定分)

新型コロナ禍で、全米アパート賃貸市場が悪化傾向にあります。昨年12月時点で上位100郡のうち37郡で1ベッドルームの家賃が昨年同月比下落しております。3月時点で6郡、11月時点において36郡で、家賃下落する地域が拡大しております。2ベッドルームでは28郡で家賃が下落しました(3月および11月ともに12郡に留まっていた)。特に下落幅が大きい地域は、主に、巨大IT企業が集積し地域経済が堅調なハイテックハブで起こっております。特にSFベイエリアでは最大の下げ幅となっております。その他、NYマンハッタン・ボストン・シアトル・ワシントンDCも大きな下落をしております。

それでは1ベッドルームタイプで家賃下落/上昇で全米トップ5を見てみましょう(郡名のあとは、2020年12月時点の中間家賃、カッコ内は前年比下落率/上昇率)。
【下落地域】
1. サンフランシスコ郡[SFベイエリア都市圏] $2,750(-25.5%)
2. ニューヨーク郡[NY都市圏] $3,100(-18.4%)
3. サンマテオ郡[SFベイエリア都市圏] $2,395(-17.6%)
4. サフォーク郡[ボストン都市圏] $2,500(-17.6%)
5. キング郡[シアトル都市圏] $1,726(-14.5%)
【上昇地域】
1. ニューヘブン郡[コネチカット州、イェール大学がある学園都市、NYおよびボストンから電車で約2時間] $1,625(+16.1%)
2. モンロー郡[NY州、NY都市圏郊外、NYから電車で2.5時間] $1,075(+15.0%)
3. マリオン郡[インディアナ州、インディアナポリス都市圏] $966(+13.8%)
4. グイネット郡[ジョージア州アトランタ都市圏郊外、アトランタから車で0.5時間] $1,198(+12.5%)
5. サクラメント郡[加州SFベイエリア郊外、シリコンバレーまで車で2時間弱] $1,455(+12.4%)
Studioタイプ、および、2ベッドルームタイプについても、同じ傾向が見て取れますので、巨大IT企業が主導している「全面的在宅勤務(完全リモート)」が生活費の高い巨大IT企業そばの密を回避し、より広いスペースを求めより家賃の安い、会社からかなり遠い郊外(別のエリア)に移り住むようになったことが考えられ、その現象が現れていると言えましょう。この流れがこれからも継続し、新型コロナが収束してもそのままの状況に留まるのかは予想ができません。

一方、前回のメルマガでも触れましたが、戸建て売買市場は活況を呈しております。全米リアルター協会の発表によると、2020年12月時点の過去1年間の中古売買件数が過去14年で最高の6.76百万戸となり、前年比22%増加となりました。この背景には住宅ローンが超低金利(この1年で30年固定金利ローンが3.6%から2.77%に1%近く低下)になり、より広い戸建てを郊外にセカンドハウスとして購入し、現在住んでいるものを賃貸に出す動きが増えているようです。さらに拍車をかけているのは戸建て住宅在庫の不足です。昨年12月の戸建て住宅在庫は、前年比23%少ない1.07百万戸となっております。この水準は過去最低水準で、販売戸数の2カ月分の水準でしかありません。

最大の問題はリーマン危機以降薄利多売体質の戸建て建設業者群に対して十分キャピタルが資本市場から投下されてこなかったことです。現在はそれを補うかのように、大手PEファンド群が直接住宅開発プロジェクトに資本を投下し出したことで数年先には十分な住宅供給が期待されておりますが、一方でバイデン政権が推し進める大型財政投資が数年のうちに米国景気を過熱させる危険性もはらんでおり、インフレによる金利上昇がいつから始まるのか目が離せない状況となりました。

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