見出し画像

「戦場の天使」の本当の姿

瀧本哲史さんが書いた「ミライの授業」という本がある。

昨年お亡くなりになった瀧本さんが、14歳の若者(そしてかつて14歳だった全ての大人)に向けて書いている本で、全編を通して「君の可能性は無限大だよ」というメッセージが伝わってくる、良い本だった。

この本では偉人たちを取り上げながら、偉人がもたらした変革を伝えている。
その中でわたしが一番興味深いと思ったのはナイチンゲールの話だった。


19世期のイギリスで「戦場の天使」として名を馳せたナイチンゲール、恐らく世界で一番有名な看護師だ。

わたしはナイチンゲールのことを「天使のように優しく看病して回った女性」だと思っていたのだけれど、それだけではなく「事実としての正しさ」を見極めて、大きな「課題発見」を成し遂げた女性であると記されている。

ナイチンゲールは裕福な上流階級の家庭に生まれ、看護師になりたいという夢を両親に打ち明けると猛反対を受ける。当時、看護師は社会的身分の低い職業だとされ、最高の教育を与えられ、なに不自由ない暮らしをしている上流階級の家庭の娘が選ぶような職業ではなかったから。

でも、ナイチンゲールは夢を諦めきれず、医学に関するレポートや衛生局のパンフレットを読みあさったり、病院や救護所を見学に行っていたそう。そして31歳でドイツへと渡り、看護の訓練を受けて晴れて看護師となるのだ。

その頃イギリスはロシアとオスマン帝国の間で勃発したクリミア戦争に巻き込まれており、戦地では医師や看護師が極端に不足していたそう。そこで34歳になったナイチンゲールは看護師団を率いて戦地に向かった。

彼女は不眠不休ともいえる熱心さで患者たちの看護にあたったのだが、のちに彼女はこの時のことを振り返り「看護の仕事は、わたしが果たさなければいけない仕事の中でもっとも重要度の低いものだった」と語ったそう。

それはなぜか?

「戦死」という言葉を聞くと、銃弾や砲撃にさらされた兵士が亡くなっていく様をイメージするが、実際のところ死因の多くは別のところにあったそうで。

それは、前線で負傷した兵士たちが、不衛生極まりない病院に送り込まれ、ここで感染症に罹ってしまうことで本来助かったはずの多くの命が失われてしまうこと。

ナイチンゲールとしては、この現状を変えたい。
そこで、「戦地の衛生状態を改善してほしい」と政府に対して訴えたいが、ともすれば「あなたたちは兵士を無駄死にさせている」とも捉えられかねず、普通のやり方では改善はされない。

そこで彼女が使った武器が、看護師の道に進む以前に学んできた数学であり、統計学だったそう。

最初にナイチンゲールはクリミア戦争における戦死者の死因を「感染症」「負傷」「その他」の3つに分類し、それぞれの数を月別に集計。また、「コウモリの翼」と呼ばれる独自のグラフを作成し、死因別の死者数をひと目でわかるようビジュアル化した。

画像1

他にも様々な統計データを揃え、ヴィクトリア女王が直轄する委員会に1000ページに及ぶ資料を提出したんだとか。
どんな権力者でも決して反論できない、客観的な「事実」を突きつけたのだ。

その結果、衛生管理の重要性が知れ渡ることとなり、看護師という仕事が大きく評価され感染症の予防にも大きく貢献していくことになったそう。

ナイチンゲールがもし、目の前の患者だけに向き合い続けただけだったら。
それも勿論尊いことではあるけれど、根本的な解決とはならずもっともっと多くの戦死者が出ていたかもしれない。

世の中の当たり前に流されず、自分の信念を持って進み続けたナイチンゲール。
わたしが知らなかった彼女の気高さと知性に感銘を受けました

またnoteでも取り上げるかもしれないけれど、自分の子供にも是非読ませてあげたいと思える素敵な本だったので、よかったら手に取ってみてください。

366日note更新チャレンジ中。よろしければサポートお願いします!いただいたサポートはモノではない特別な体験に使いたいです。