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ゆらぎの中で、新しい発見が生まれる

どうやらサイゼリヤは、最近1円値上げをしたらしい。
「コロナ影響で売り上げも落ち込んでいるから値上げか・・」と思ってしまいそうになるが、そんなに単純な話でもないそうで。

――改革の象徴の1つが、ミラノ風ドリアの「1円値上げ」などの価格改定ですね。
価格改定の効果は思った以上にあって、面白いし、びっくりしている。
最大の意図は、コインの受け渡しを削減することにあった。コロナ禍によって、顧客も従業員もコインのやり取りをなるべく避けたい。すべての商品の価格を50円単位にすることでコインの受け渡しを6~8割減らせると想定し、実際にその通りになった。

会計にかかる総時間も30%減少した。ぴったり払いやすい金額になったことで、釣り銭を渡す時間が減った。自分が食べた分の金額が500円、600円などとキリのいい金額なので、レジに来る前にグループでまとめてくれることも多くなった。価格改定で個別会計は25%減少した。

――予想以上の効果ですね。
さらに面白いのが客単価が上がったこと。当社の客単価は700円台前半だったが、50円や100円刻みの値段設定にしたことで、ちょうど合計1000円を目安に注文する顧客が増えた。

加えてTwitterなどで「1000円ガチャ」(サイゼリヤのメニューから1000円ちょうどになる組み合わせをランダムで表示するWebページ)が話題になった。あれを見て、1000円ちょうどになるように注文する顧客が増えたのかもしれない。1000円ガチャ様々だ。

ミラノ風ドリアをはじめ、大半の商品は1円値上げになったが、一方でライスは169円から150円へ、ランチドリンクバーは110円から100円へ大きく値下げした。そのため、客単価が下がると恐れていたが、全然関係なかった。

価格改定は大正解。他社にもおすすめしたいぐらいだ。ただ、当社はずっと税込みの価格表示にしてきたからすぐに改定できたが、税抜きの価格設定をしているところは、税込み価格を50円単位にそろえるのは難しいだろう。

ただ「単価を上げて売り上げを伸ばしましょう」という話ではなく、コイン受け渡しの削減が狙いだったそう。狙いは的中し、生産性も向上し、結果的に客単価も向上した。

こうした施策の起案は、おそらく平時ではなかなか決裁が下りづらいものなのだと思う。競合との差別化ポイントであっただろうし、「299円」というイメージがもう既に定着し、ブランドも確立してしまっている。そんな中で、例えキリが良いとは言え1円値上げすることで客足が遠のくリスクがあるのではないか、と。

コロナウイルスという未曾有の危機が訪れ、営業利益60億円の赤字という恐ろしい数字に直面した。そんな中で、果たして何ができるのか。変わらなければいけない、と強い危機感を持ってこの施策を実行したのだと思う。

ピンチをチャンスに変えられる人や企業は強い。
想像もしなかったような物事が起きた時、そこには必ずゆらぎが生まれる。
今まで正解だと思っていたことがもしかしたら正解ではなかったかもしれない、前提から崩れてしまうかもしれない。
そこで、そのゆらぎを正しく捉えて、「じゃあどうしたらいいか?」と考え続けることができるのであれば、例え一時的に落ち込んだとしても、どんな環境でもやっていくことができるのだろう。

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