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日本人の言葉を交わす作法の在り方について

日本人のコミュニケーションにおける独特の文化と特徴

1854年、2回目のペリー来航の際にアメリカ人の乗組員は日本人を見て言ったそうです。
「日本人はとてもスローである」
黒船が水平線に来ているにも関わらず、日本人は「けっこうなお天気で……」と話しがはじまりゆっくり話し始めるとのことでまったく危機感がないというのです。

日本人というのは言葉というものは語彙が多く表現もあり、繊細な物言いができるのにコミュニケーションにおいてはその役割が発揮されないという性質があるのではないかと考えているのです。
日本人の言葉とは書き言葉や話し言葉としても一方的に伝える事に関しては表現の豊かさとしての評価の対象として持ち出されますが、これがコミュニケーションとなるとまったくなのです。
ここでの考え、仮説としては言葉というのは相手の空気感を感じるための儀礼的な措置のひとつに過ぎないのではないかということです。
つまりは言葉の内容にはあまり意味を見出しておらず、その声の雰囲気からの相手の機嫌や距離感を主観的に測り、自分での理解においてコミュニケーションを行っていくという文化なのではないかということです。

言葉がどうも通じないそんな事を感じることが時折あるのです。
『僕』が優れているとかそういう話しではなく、むしろ劣っているという捉え方をされるかも、されているかもしれません。
しかし、相手と話していても主語がなかったり主題としての結論がどこにあるのか、この修飾はどの単語、言葉にかかっているのかというのがわからない人がいるのです。
もちろん、全ての人ではないのですが冒頭の通り時折。
そんなときに言葉の語彙選びにおいて、またこれまで述べてきた日本人のコミュニケーションについて少し疑問をもち考えを今回、まとめてみたという次第なのです。


日本人の言葉のやり取りは、単なる情報伝達やコミュニケーションの手段としてだけではなく、形式的な礼儀や作法を重んじるパフォーマンスとしての側面が強いと言えます。
言葉の意味そのものよりも、相手の声の調子や空気を読み、その場に合わせて振る舞うことが重要視されるのです。

この特徴的なコミュニケーションスタイルは、日本人の文化や価値観と深く結びついています。日本社会では、「和」の概念が重んじられ、人々は互いに協調し、争いを避けることが美徳とされてきました。この「和」を保つためには、相手の気持ちを察し、場の雰囲気に合わせて行動することが求められます。

そこで重要になるのが、「空気を読む」という能力です。これは、言葉に明確に表れない微妙なニュアンスや場の雰囲気を感じ取り、それに合わせて自分の言動を調整する力を指します。日本人は幼い頃から、この「空気を読む」ことを無意識のうちに身につけていきます。

例えば、会議の場で意見を述べる際、日本人は自分の意見を直接的に主張するよりも、周囲の反応を見ながら徐々に意見を述べていくことが多いと言われています。これは、自分の意見が場の雰囲気を乱すことを避け、全体の和を保とうとする配慮の表れだと考えられます。

また、日本人は「察し」の文化を持っていると言われています。これは、相手の言外の意味を汲み取り、言葉に出さなくてもその意図を理解しようとする姿勢を指します。「以心伝心」という言葉がありますが、これは言葉を交わさなくても心と心で通じ合えるという、日本人の理想的なコミュニケーションの形を表しています。

この「察し」の文化は、日本特有の「世間」という概念とも関連しています。「世間」とは、個人を取り巻く社会的な関係性や評価を指す言葉です。日本人は「世間体」を気にして行動することが多く、周囲からの評価を重視する傾向があります。「察し」の能力は、世間の目を意識し、周囲との関係性を円滑に保つために必要とされてきたのです。

しかし、このような日本人のコミュニケーションスタイルは、グローバル化が進む現代社会において、課題を抱えていると指摘されることもあります。国際的なビジネスの場では、明確に意思表示をすることが求められます。「空気を読む」ことに慣れた日本人は、自分の意見を主張することが苦手だと言われることがあるのです。

また、「察し」の文化は、時として誤解を生むリスクもはらんでいます。言葉に出さずに相手の意図を汲み取ろうとすることで、かえって相手の真意を見誤ってしまうこともあるでしょう。コミュニケーションにおいては、明確な意思表示と相互理解が欠かせません。

とはいえ、日本人のコミュニケーションスタイルには、独自の価値があることも事実です。相手への配慮や、場の調和を大切にする姿勢は、円滑な人間関係を築く上で重要な要素だと言えます。また、非言語的なコミュニケーションに秀でている点は、日本人の強みでもあります。

大切なのは、自分の文化的背景を理解した上で、状況に応じて柔軟にコミュニケーションスタイルを使い分ける力を身につけることではないでしょうか。グローバル社会では、多様な価値観を持つ人々と協働していく必要があります。日本人のコミュニケーションの特徴を活かしつつ、明確な意思表示や相互理解のスキルも磨いていくことが求められているのです。

また、日本人のコミュニケーションを考える上では、日本語の特性にも目を向ける必要があります。日本語は、主語を省略することが多く、文脈に依存する傾向が強い言語だと言われています。この特性が、「察し」の文化を生み出す土壌になっているのかもしれません。

加えて、日本語には「曖昧さ」を許容する側面もあります。はっきりとモノを言うよりも、婉曲的に表現することが好まれる傾向があるのです。この「曖昧さ」は、場の空気を乱さないための配慮であり、相手に対する思いやりの表れでもあります。

しかし、この「曖昧さ」が、コミュニケーションの障壁になることもあります。特に、異文化コミュニケーションの場では、明確さを欠く表現は誤解を招くリスクがあります。日本人は、自分の言葉の特性を理解し、状況に応じて言葉を選ぶ努力が必要だと言えるでしょう。

日本人のコミュニケーションスタイルは、長い歴史の中で培われてきた文化や価値観を反映したものです。「和」を大切にし、「空気を読む」ことを重んじる姿勢は、日本人ならではの美徳だと言えます。しかし、グローバル化が進む現代社会では、これらの特徴がコミュニケーションの障壁になることもあります。

大切なのは、自分の文化的背景を理解しつつ、柔軟にコミュニケーションスタイルを使い分ける力を身につけることです。日本人の強みを活かしながら、明確な意思表示や相互理解のスキルも磨いていく。そうすることで、多様な価値観を持つ人々とも円滑にコミュニケーションを図ることができるはずです。

日本人のコミュニケーションの在り方は、時代とともに変化していくものでしょう。しかし、相手を思いやる心や、場の調和を大切にする精神は、これからも受け継いでいきたい日本人の美徳だと言えます。私たちには、自分の文化的な特性を理解し、それを強みとしながら、新しい時代に適応していくことが求められているのです。

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