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せなか

僕、たくさん悪口言われてきたし。

悪口を言われ過ぎると人は強くなるのだろうか。
明るく、強かで、どこか飄々としているいつもの姿からは見えない、影が一瞬見えた気がした。

私が落ち込む理由の九割は思い込みだ。
あの時こんなことをしなければ良かったかな、もしかして嫌われたかな、そんなことを少しでも思うと、止まらなくなる。
私がこうやって気にしている時、「そうやって気にするのが悪いところだよ、大丈夫、うるさいなぁ」って少し嫌そうに言いながらも、いつも受け止めてくれる。
気がついたら後ろで、私の肩を肘掛け代わりにして立っている。
いつの間にか安心感に包まれて、何を気にしていたか忘れる。

考えれば私はいつも話すばかりで、なかなか話を聞いてこなかった。
周りの人の悩みを温かさで消すような人の、悲しそうでやけに冷静なあの一言は、頭の中で消し去ろうにもなかなか消えてくれない。

彼の温かさは、人一倍悲しい経験をしてきたが故のものなのだろうか。
割り切っているから悲しさが表面には現れないのだろうか。
そもそも性格が最初から明るかったのだろうか。

普段彼を見ても悲しさなんて言葉、一切出てこないのだけれど、ふと後ろから見た時たまに悲しくなることがある。

私が彼の後ろに回っても、肩に肘が届かない。
いっそのこと悲しさごと彼を抱きしめたくなる。

もし後ろからぎゅっとしたら、彼はなんて言うだろう。
悲しそうだったからと言ったら「気にしすぎだよ、そういうところが悪いところだよ」って少し嫌そうな顔で言われるんだろうな。


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この物語はフィクションです。

あとがき
筆者はあまりボディタッチが好きではない。
もし、この話のように後ろからぎゅっとされようものなら、全力で怒り狂うかもしれない、、。




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