【エッセイ】トルコの友人 Dike 1.「トルコへようこそ」3/3

 しかし事はDikeの言葉とは違う方向で進んでいた。 なんだかハラハラ、リラックスできない状況。 百も承知。予定はあくまで予定である。

 写真の男性にもう一度目をやる。

 ー 優しそうな印象を受けるが、到着したばかりのこの地で、現地の男性の顔が上手に見分けられるだろうか。 万が一写真と違って、眼鏡なしで登場された時には、お手上げである。

 それよりも、いったい彼は何者なのか。弟なのか、同僚なのか。 それさえ分からないままとりあえず待つ。

 私は黒いバックパックを背負い、小さな青いリュックを抱えている特徴を伝え、頼まれた通りに自撮りも送った。大丈夫だろうか。

 その後渋滞で15分遅れるという情報を手にし、安心と、やはり不安の気持ちをぬぐえぬまま、ただ彼女を信じて待っていた。

 ー 5分経過。

 いきなり、Omar 登場。

 こちらめがけて何のためらいもなく一直線に向かって歩いてくる。なぜあんなに遠くからすぐに分かったのだろう。 写真を送ったから?いやそれよりもそもそも、こんなところにアジアの女一人立っていたら目立つにきまっている。確かにそうだ、急にふと思い出した。私は外国人だ。

—「Lea! Omar。」

 彼は挨拶をした。

 この瞬間、私の中の不安というもの一切が、一気に、一気に吹き飛んでいった。(彼はしっかり眼鏡をかけていた。)

 Omarは優しくゆっくり、しっとりとした言葉の発し方をする。

 物腰の柔らかさと、話し終わった後ににっこりするその表情、急かすことのない余裕のある優雅な振る舞いが、私に安心感を与えた。

 私は案内されるがまま素直に後部座席に荷物を置き、さっと助手席に乗り込んだ。

 そこで彼はあらかじめ用意しておいたであろう、Google Translate の画面を、私に見せた。

ー なるほど、彼はDikeの旦那であった。そしてこう書かれていた。

「Lea、私のWifeのOfficeにこれから私の車で行きます。

トルコへようこそ。」

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