見出し画像

酔っぱらいの反省

久しぶりに酒をしこたまのんだ。家の鍵をまとめたキーホルダーが壊れていたがなぜだか思い出せない。酔っぱらった翌朝にはよく物が壊れている。
一緒に飲んだ友人から、体調を聞くメールが入っている。これは明らかに向こうより私が酔っ払っていたからだ。なんとも恥ずかしい。もう子供じゃないと自分に言い聞かせていても、ついあほみたいに酒をのんでしまう。
ウイスキーがいけない。私はウイスキーに目がないので飲み始めるとやめられない。それもするすると入っていくのでおそろしい。
 大酒を飲んだ翌日の夕方4時ぐらいまではだいたい反省しているのに、夜になるとけろっとビールを飲んだりしている。酒飲みとはそういう生き物だから救えない。
 スコットランドにウイスキーを飲みに行く旅行をしたことがある。
ウイスキーを片っ端から飲みまくり幸せな時間だったことは確かなのだが、記憶の詳細がない。なぜならば、ずっと酔っぱらっていたからだ。
 エディンバラのスコッチウイスキーミュージアムのバーだかカフェだかに朝っぱらから座り込んでカフェが閉まる5時ころまで飲み、さらに別のパブに飲みに行ったのが一日目。町の印象より酒の事ばかり思い出す。次の日はウイスキーの工場に行きまた試飲と称して午前中からぺろぺろ飲んで、ウイスキーは命の水、とうたいながらパブをはしごして更に飲んだ。工場やミュージアムでは製造過程を何回も見せてもらったはずだがそれについてもぼんやりとしか思い出せない。ということは、ミュージアムの入り口や、工場見学の出だしから私は酔っていたことになるので、一体いつから飲み始めたのかよくわからない。映画のロケ地なんかも見に行ったし、海にも行った。けど全体的に記憶がぼーっとしている。記憶が鮮明じゃないからいつかまたスコットランドに旅行に行きたいが、どうせまたじゃぶじゃぶ飲むにきまっているので、スコットランドはいっこうに私の記憶のなかでぼーっとした印象の国から抜け出さないことは想像に難くない。
 
 酒飲みの周りには酒好きが集まる。悪い友達が、メールをよこすのだ。今夜あそぼうぜって。昨日だって私の好物がウイスキーだと聞きつけた一人がいいバーを知ってる、あそこはお前のすきなものなら何でもあるぜ、とささやいたのだ。5人でバーに行って私とその人だけががばがばウイスキーをあおり、帰り道、もう一軒パブによろうと言い出したのも、その人だ。
 悪い職場の同僚もたくさんいる。うまい白ワインが手に入った、と私にメールをよこす。これはそろそろ寿司パーティーやろうぜという、隠喩だ。うまい酒をちらつかせると、私がよろこんで寿司を巻くことを彼らはお見通しなのだ。このように私は酒とずぶずぶの関係で一向に足を洗えるようすがない。
 私がどれほど誘惑に弱い哀れな生き物か、お酒を飲まない皆さんにもきっとお分かりいただけたはずだ。軽蔑のまなざしをやめて、すこしばかり私の二日酔いに同情していただきたい。


 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?