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お薦めクラシック3

私が観客としてオペラを見るときはもちろん弾くときも笑える作品が好きだ。ジャンニ・スキッキ(Gianni Schicchi)というオペラはそのなかでも特にすきだ。プッチーニほど人の心の動きに絶妙な音をつけられる人はいないような気がする。

まず、ジャンニ・スキッキというのは人の名前だ。彼が、愛娘のために私文書偽造に手を染めるというのが大筋だ。飽くまでコメディなのだが。
彼の娘はリヌッチョという若者と付き合っているのだが、彼は金持ちの叔父がいて今死んだところだ。オペラはこのシーンから始まる。親戚が死を悼んでため息をついているにもかかわらずなんだか音楽が明るい。どこか嬉しそうにすら聞こえる。親戚一同は遺産の分け前を期待しているのだ。
それにもかかわらず部屋から見つかった遺書には全部修道院に寄付と書いてある。
この遺書を書き換えるためになんかいい方法がないか、とリヌッチョは将来の義理の父、ジャンニ・スキッキを頼る。最初は鼻持ちならない奴らに協力する気が起きないのだが、娘に世界一有名なアリアでもって、結婚できなきゃ死ぬ、と脅され承諾。これが、かの有名な私のお父さん、という歌だ。(O mio babbino caro) https://youtu.be/JXbV6DhxhV8 

ジャンニスキッキが思いついた案は、まだだ親戚以外家主が亡くなったことをしらないなら、自分が変装してまだ生きているフリをして公証人をよんで遺言状を書き換える、というものだ。
そんなバカな、と思ってはいけない。変装はオペラ名物みたいなもんだ。オペラではみんなやる。みんな変装して恋する相手に会いに行ったり、気持ちを試したり、悪いやつを懲らしめたりするものだ。基本変装は成功して、誰も気が付かないのが常識だ。だからオペラは楽しい。
果たして、ヒヤヒヤしながらも遺言状書き換えは成功して、みんなそれぞれ分前をもらえることにはなったものの、いちばん価値のある屋敷は、ジャンニスキッキに!と遺言状にしたためさせた。
泥棒!とジャンニスキッキを罵る親戚たちを家から追い出し幸せな若者二人と知恵者のジャンニ・スキッキはくらすのでした。めでたしめでたし、とオペラは終わる。いろいろあったけど、まあいっか、ちゃんちゃん!ってほんまかいな。
オペラ作品の中では短い1時間を切る作品なのでたいていは何かほかの短い作品と一緒に公演するのだが、ユーチューブにもあるので暇なときにぜひ見てください。
心理描写が音楽で的確に感じられるので言葉がわからなくても笑ってしまう楽しい作品です。プッチーニを体験するにはここが入り口です。






 


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