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一人の想いから組織を動かす、共感資本主義「ストーリーテリング」とは? Pop-Up Creative Class #6 イベントレポート

北欧をはじめ欧州で活躍するゲストと共に様々なトレンドやインスピレーションを集め、共に学ぶ場と機会を提供するしてきた「Pop Up Creative Class」。

2020年6月9日(火)、オンラインでの開催6回目となる今回は、「人と組織を動かす共感資本主義的ストーリーテリング」をテーマに実施。人々の共感を生み出すストーリーについてさまざまな事例を参照しながら、それらのストーリーに見られる特徴を理解し、自分の価値観や信条に基づいたストーリーのあり方を探求していきました。

デンマークのビジネスデザインスクール『KAOSPILOT』に初の日本人留学生として受け入れられたレアの共同代表の大本綾と、「デジタル界のハーバード」とも称されるスウェーデンのビジネススクール『HYPER ISLAND』卒業生であるブランドディレクターの高橋由佳がファシリテーターを勤めました。

想いのある個人と組織とをつなぐ「共感」

イベント冒頭では、本イベントの主題にもなっている「共感資本主義」について解説していきました。

共感資本主義とは、株式会社eumo代表取締役・新井和宏氏が提唱する「共感」を資本とした持続的な経済活動、社会活動のことです。

企業活動においては旧来的な利益第一主義の経営から抜け出し、事業に関わるすべての人を幸せにする経営を目指すことが大切だと氏は主張しています。そのために大切なのは、美意識や高い人間力を持った個人を増やし、彼らが「つながり」を感じられる組織にすること。その求心力となるのが「共感」なのです。

参考:『持続可能な資本主義

組織のための「個」から、「個」のための組織へと自律分散的な流れに時代が変わっていくなかで、一人ひとりがストーリーを語り、共感を軸に周りの人々を巻き込んでいく力が一層求められています。今回のイベントでは、共感資本主義の思想をヒントに、新たなリーダーシップの形を考えていきました。

すぐれたストーリーは危機的な状況でも人を動かす

続いて、すぐれたストーリーを語り多くの人を魅了している「共感資本主義的」なブランドや個人を紹介していきました。一つ目の事例として紹介されたのは、民泊サービスを展開する「Airbnb(エアビーアンドビー)」です。

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2020年5月、某ウイルスの拡大により業績が厳しくなり、AirbnbのCEOは従業員の4分の1を解雇しなければならない状態でした。CEOは苦渋の決断のなか、従業員に向けて解雇の詳細について書かれたレターを発表。そのレターには、解雇の決断に至った詳しいプロセスを公開し、退職手当や転職サポートの内容が綴られていました。

これらのメッセージはただ事務的なものではなく、CEOの苦悩や感謝の気持ちを正直に語り、論理的でありながら感情を揺さぶるものがありました。危機的な状況にありながらも、企業に対する信頼感を高めた好事例として紹介されました。

他者が参加できる「余白」づくり

二つ目の事例として紹介されたのは、D2Cブランドです。D2Cとは「Direct to Consumer」の略で、自分たちでプロダクトをつくり、消費者に直接販売する仕組みのことを指します。

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ストーリーを通じて企業や組織が大切にするビジョンを明示しつつ、一貫性がありながらも「余白」を残したシンプルな言葉でブランドを伝えています。シンプルな語りは生活者他者の関心を生み出し、関わる人をその企業のファンにする力があると言います。

企業の美学や哲学で、消費者が意思決定する時代へ

本イベントでは他にも紹介された例がありましたが、共感資本主義的なブランドづくりとしての共通点は以下のようなものだと、ファシリテーターの高橋氏はまとめます。

・自分の想いから始まっていること
・一貫した意思が感じられること
・他者が入り込む余白があること

また、いま共感資本主義的リーダーが求められる理由について、北欧での経験を引用して大本氏はこのように語ります。

「北欧社会で暮らすなかで、商品がどのようなプロセスで出来上がったのか、企業の美学や哲学に共感できるかで購買を決めることが当たり前になっていると感じました。行き過ぎた資本主義を変えるのは力を持った国家や大企業ではなく、個人。一人ひとりがどのような未来を創りたいのかを語り、実現しようとするリーダーがより必要とされます。個人の意識が変わることで、提供される商品やサービスの質も変わっていきます」

あなたの心を動かし、記憶に残っているストーリーは?

共感資本主義的リーダーシップの概要を理解したあとは、グループワークで参加者の方々がそれぞれ心に残るストーリーを共有し、心に残った理由を考えていきました。グループで共有されたストーリーの一部をご紹介します。

「被災地のとある農家さんの話が印象に残っています。大変な状況のなかでものづくりに向き合う姿勢をみて、生産者の方の思いや真剣さが伝わり応援したくなりました」

このグループでは、「生産者の顔が見えることのよさ」の話で盛り上がりました。偶然にもグループの中に自家栽培をされている方がいらっしゃり、「思いが伝わり商品を購入してもらうことは、ただ買ってもらうよりも嬉しい」と生産者側の視点からのコメントも。ストーリーを通じて、購入することに付加価値がつき、生産者も消費者もプラスな気持ちになることはビジネスでも良い循環を生み出すと感じました。

また、あるグループでは「晩年おばあちゃん孝行ができず後悔したという経験から、視覚障害者のためのIoTデバイスをつくった同僚がいた。彼が会社内でプレゼンテーションを行い、チームを形成して事業化する姿に感銘を受けた」と、身近な人間関係のなかで共感を生んだストーリーがあがりました。

自分とチームを深く知る

個人(消費者)に支持される企業の事例や、参加者一人ひとりが大切にしているストーリーを紐解き、個人の想いを起点としたストーリーの力強さを実感。同時に、一人から始まったストーリーには「余白」を確保し、他者の参加を促すことで、大きなうねりへと変えていくことができるような意図的な設計を行うことが不可欠だと理解することができました。

今回のイベントでファシリテーターを務めた大本と高橋が主催となり、自分の想いから始まり、他者を巻き込むストーリーテリング&リーダーシップコースを実施中です。個人やチームをよく理解し、オリジナルのストーリーや世界観を形にするプロジェクトをつくるプロセスを学べます。今後の日程はnoteを通してお知らせいたします。楽しみにお待ちください!

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