デンマーク発の学校・フォルケホイスコーレから考える「私たち」の一歩。 Pop-up Creative Class #5 イベントレポート
2020年5月26日(火)、北欧をはじめ欧州で活躍するゲストと共に様々なトレンドやインスピレーションを集め、共に学ぶ「Pop Up Creative Class vol.5」を開催しました。
オンライン開催5回目のテーマは、デンマーク発の学校『フォルケホイスコーレ』です。フォルケホイスコーレは「人生の学校」と呼ばれるデンマークの全寮制成人教育機関で、試験や成績評価もなければ、17.5歳以上であれば年齢の上限もなし。「学びたい」想いがある人に広く開かれた学校です。
近年日本でもフォルケホイスコーレの知名度が上がりつつありますが、どんな学校で、何を学べるのでしょうか。
今回は日本でフォルケホイスコーレを広める活動を行う一般社団法IFAS(アイファス)とのコラボ企画。フォルケホイスコーレやデンマーク教育に興味がある方々、フォルケホイスコーレ留学経験のある方々が一緒になって、フォルケホイスコーレの教育スピリットを共有し、民主主義的な教育のあり方について考えを深めていきました。
●ゲストスピーカー 矢野拓洋(やの たくみ)
一般社団法人IFAS共同代表/シティラボ東京スタッフ/東京都立大学都市政策科学域博士後期課程3年。2014-2017年デンマークの建築設計事務所と研究機関に勤務しながら、デンマーク民主主義教育のアイコンともいえるフォルケホイスコーレと関わりを強めIFASを仲間とともに設立。日本とデンマークを往復しながら、都市政策やまちづくり、ワークショップデザインの研究をしている。
デンマークの民主主義思想を体現したフォルケホイスコーレ
イベントの冒頭では、一般社団法人IFASの共同代表を務める矢野拓洋(やの たくみ)さんから、フォルケホイスコーレの成り立ちを共有いただきました。
フォルケホイスコーレの立役者は3人。一人目は、フォルケホイスコーレの思想を提唱したのはNFS・グルントヴィです。1800年代、近隣諸国との戦争が続き、デンマーク国力が低下していくのを目の当たりにした彼は、デンマーク人のアイデンティティを取り戻すための学校を創ろうとします。
そんなグルントヴィの意思を色濃く反映したフォルケホイスコーレを最初に設立したのがクリステン・コルです。彼はフォルケホイスコーレ以外にもエフタスコーレ(14〜17歳を対象にした、若年層向けの全寮制教育機関)も創設し、校長を務めました。
最後の人物は、ハル・コック。第二次世界大戦後に民主主義のあり方を見直すなかで「グルントヴィが目指したフォルケホイスコーレこそ今のデンマークに求められる教育だ!」とフォルケホイスコーレの価値を再認識し、デンマークの民主主義社会の土台をつくったと言われています。
フォルケホイスコーレの5つの共通価値
180年ほどの歴史を持つフォルケホイスコーレ。今もなおデンマークには約70校のフォルケホイスコーレが存在しています。学校ごとに用意するカリキュラム、掲げるテーマは異なりますが、共通している価値観もあるといいます。
矢野さんが紹介してくれたのは、多くのフォルケホイスコーレで共通する5つの価値観。秋田大学の原義彦先生がフォルケホイスコーレを研究し、インタビューを行った結果、このような5つのキーワードが浮かび上がってきたそうです。
1. Life(生きること、生き方)
2. Community(共同体)
3. Democracy(民主主義)
4. Responsibility(責任)
5. Respect(尊敬)
5つの価値観を説明した後は、矢野さんがフォルケホイスコーレの日常を写した画像を見せながら短く解説。矢野さんからの問いかけを合図に、グループワークに移っていきました。
「今見せたフォルケホイスコーレの風景は5つの共通価値観のどれに当てはまると思いますか? ここからは皆さんで考えてみましょう」
みんなでフォルケホイスコーレを考える、民主主義的プレゼンテーション
グループワークでは矢野さんに共有いただいた画像を見ながら、「写真の人たちは何をしているのか」と「5つの価値観のうちどれに対応するのか」をグループで想像していきました。
3〜4人が集まったグループで、まずはそれぞれの画像が具体的にどのようなシーンを写しているのか考えていきます。「4番目の画像は、外でごはんを食べている画像かな?」「11番目の画像は学生みんなでディスカッションしている授業風景?」のように、思いついたことをグループで共有していきました。次に、「食べることは生きることだから、4番目の画像は『Life(生きる)』を表しているかもしれないね」など、画像を5つの価値観を照らし合わせていきます。
気づけば、20分のグループワークはあっという間に終了。全体に戻った後は、グループで話したことやその時に生まれた問いを共有していきました。
共有を完了すると、「今みなさんに共有いただいた『フォルケホイスコーレ』を元に、私がもう一度解説していきます」と矢野さん。5つの価値観の要素を投影しながら、参加者の問いに答える形で再度プレゼンテーションを行いました。
講師が一方的にフォルケホイスコーレを説明するのではなく、参加者全員がプレゼンテーションのプロセスに参加する。まさにフォルケホイスコーレが大切にする民主主義的な学びを体現したイベントとなりました。
日本のフォルケホイスコーレ創設を目指し、ジャパン・フォルケホイスコーレサミット開催予定
矢野さんが共同代表を務めるIFASは、日本のフォルケホイスコーレ創設を目指しています。これまでも日本でフォルケホイスコーレを創ろうと挑戦する人は多くいたものの、見切り発車で進めたために計画が頓挫してしまう、うまく協力体制が作れないなど多くの課題がありました。そこでIFASは、日本でフォルケホイスコーレの創設を支持する人々が連携できる場として、日本フォルケホイスコーレ・サミットを開催予定です。
自分の想いや好奇心から一歩踏み出し行動を起こす「Co-Creative Activist」の輩出を目指すレアが大切にする価値観と、フォルケホイスコーレが持つ価値観には重なる部分があります。今後もレアはIFASの活動をさまざまな形で応援していきたいと考えています。
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