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“MADE IN いわき”のこだわり。五感で楽しめる拠点|LACいわきコミュニティマネージャー・北林由布子さんインタビュー

場所やライフライン、仕事など、あらゆる制約に縛られることなく、好きな場所でやりたいことをしながら暮らす生き方「LivingAnywhere(リビングエニウェア)」。

今回取材をさせていただいたのは、LivingAnywhere Commonsいわき「FARO(ファロ)」です。

LACいわきは、もともとコミュニティマネージャー(以下コミュマネ)の北林さんのご両親が営んでいたお店を、地域の人々や町を訪れる人々と共にDIO (Do It Ourselves)の精神で作り上げられた拠点です。

​​1階はカフェラウンジ、2階はゲストハウス、3階はイタリアンレストランとなっています。

今回は、コミュマネの北林由布子さんご自身のストーリーやLACいわき拠点が誕生した背景、LACいわき拠点の魅力などを伺いました。

<北林由布子(きたばやしゆうこ)>
福島県いわき市平出身。大学進学を機に上京。2004年に帰郷し、もともと住居であったビルの3階にイタリアンレストラン「La Stanza(スタンツァ)」を開店。
ご両親の引退を機に、旅人と地元の人がつながれるゲストハウス「FARO(ファロ)」をオープン。

戻るつもりのなかったいわきでゲストハウスを始めた理由


▲​​ LACいわきの外観

ーゲストハウス「FARO」をオープンされる前は、イタリアンレストラン「La Stanza」をオープンされていますね。お店をオープンしたきっかけを教えてください。

実は、もともとイタリアンシェフを目指していたわけではないんです。
いわきに戻るつもりはなく、大学を機に東京に行って、学生のときにアルバイトをしていた会社でそのまま働いていました。

ステージやイベント、お笑いライブの企画開発や映像制作など、いろんな仕事をしていたのですが、帰省のたびにいわきの街が少しずつ寂しくなってきたのを感じたんです。
商店街の中で商売していたのが実家ということもあり、次第に何か街が元気になるようなことをしたいという気持ちになりました。

両親が洋品店をやっていたんですけど、後を継ぐにも自分にはできないし。人が集まる場所・人を呼べる場所にするために、みんなが来たくなるような飲食店を作ろうと思ったんです。

自分がシェフになるつもりはなかったんですけど、料理人を雇うにしても自分が全然知識のないままではダメだから、とりあえず勉強しようと料理学校に行って、料理と飲食の経営を学びました。

▲北林さんが魅了された「イタリアンバール」の文化を取り入れたLa Stanza(スタンツァ)

ーゲストハウスをオープンしようと思ったきっかけや理由を教えてください。

両親が年を重ねてそろそろ引退したいとなったときに、ビルをテナントで貸す話が出ていたんです。
ですが、街のど真ん中にあるビルなので、「何かおもしろいものがないと他のところと同じく商店街の元気がどんどんなくなってしまう」と思いました。

そこで、以前からいわきに初めて来た人といわきの地元の人が話す機会や、コミュニケーションが新しく生まれる場所を作りたいという思いがあったので、人と人が勝手に出会うゲストハウスを作ろうと思ったんです。

まったく知識や経験はなかったんですけど、「ゲストハウスやりたい」といろんな人に言っていたら次第に仲間が増えてきて、気づいたらオープンしていました。

ーLACとの提携はどのような経緯で決まったのでしょうか。

私がゲストハウスを作りたいと言いだしてから、みんなで「ここにゲストハウスができたら」「みんなで語り合えるラウンジができたら」っていう“妄想飲み会”をしていたんです。

その頃に出会った方がLAC拠点開発の担当の方と飲み友達だったらしく、たまたまFAROの話になって、その流れで紹介してくださいました。

ゲストハウスを作るにあたって私1人じゃできないし、知識もなければやったこともないからっていうのもあるんですけど。おもしろい場所にしたいと思ったときに、いろんな人が関わる場所にならないとつまらないと思ったので、地域の人も巻き込んで作っていったんです。

実際にリノベーション作業のお手伝いだけではなく、使っている素材やロゴデザインなどは、すべて地元の方々やクリエイターに関わっていただいて、いろんなものを“MADE IN いわき”で作り込んでいきました。その経緯や理念がLACにピッタリですと言ってくださりました。

▲壁塗りワークショップの様子
▲もともとは洋品店だった2階部分

FAROは誰でも居心地よく過ごせる場所

▲ダイニングスペースの様子

ー木の温かみを感じる統一感のある内装が印象的です。こだわっていることはなんですか?

男性でも女性でも心地よくいられるように、いわき産のスギやヒノキを多めに使い、優しい雰囲気や心地よさ、清潔感をイメージしています。

あとは、人がいなくても成立するようなおしゃれ空間というよりは、人が入って成立する空間にしたいという思いがありました。だから、あえて作り込みすぎないというのをリノベーションするときに意識していましたね。

▲いわき市内に陶芸工房を構える山崎淳司さんが制作した「常磐白水焼」の洗面台
▲「いわきを五感で楽しみながら眠ってもらいたい」との思いが込められたFAROの内装
▲階段スペースにある本棚

ー1階のカフェから2階のゲストハウスにつながる階段には本棚がありますよね。どうしてあの場所に本を置こうと思ったのですか?

「階段に本棚を作りたい」という思いからスタートしています。
今本棚になっているところは、2階が洋品店だったときにショーケースになっていて、ガラスの扉がついていたんですよ。
それを塞ぐのは簡単だったんですけど、せっかく広い階段になっているので、階段に座って本読むのとかすごくいいなと思って。

本棚にリノベーションしたときに、一枠ごとにオーナーがいて自分が置きたい本を置くのがおもしろいなと思い、それから本棚のオーナーさんを募集して、ちょっとずつ自分の好きな本とか読んでほしい本を置いてもらうようになりました。

ーリノベーションで使用した素材やカフェラウンジで提供している食材も含めて、いわき産にこだわる理由を教えてください。

イタリアで食べた料理がすごくおいしかったので、La Stanzaでは本場に近いイタリア料理を提供したいと思っていたんですよ。

でも、東日本大震災と原発事故が発生して、この辺は避難まではいかなかったんですけど、目と鼻の先の地域は全町避難になってしまったんです。「福島県の食べ物はもう食べられないんじゃないか」って言われたような時代もありました。

最初は安全性を確かめるために、「どのように野菜が作られているのか」を自分の目で確認しようと生産者さんのところに通い始めたのですが、次第に地元にこだわっておいしいものを作っている人がたくさんいることを知ったんです。

あるとき、畑で収穫されたばかりの食材をお店で料理したら、イタリアで食べた感動が戻ってきて、「こんなにおいしいものをなんで知らなかったんだろう」という気持ちになりました。これを食べてもらわないのはもったいないし、自分が1番作りたかったイタリア料理を作るには、こういった地元の食材が必要だと腑に落ちたんです。
このような経緯もあるので、ここのカフェラウンジで食べてもらうものに関しては、味噌も醤油もお米も私が大好きな生産者さんの食材を100%使っています。

若い世代にチャンスを与えられる拠点にしていきたい

▲FAROの入口

ーFAROについて、今後の展望があれば教えてください。

もともとFAROの運用に関しては、若い子たちに任せていきたいと思っています。
根本的にこの街を元気にしたいというのが私の中にあるので、若い子たちが主体となって、どんどん自分たちのやりたいことに挑戦できるような場所にしたいです。

LACユーザーの皆さんが拠点を愛して活動している姿を見て、「そういうのがいい!」と思って勉強させてもらっています。

ーFAROではイベントも活発に開催されていますが、イベントをやりたい人なら誰でも企画できますか?

もちろんできますし、今後はますますLACのユーザーの方ともうまくリンクして一緒にやっていきたいと思っています。
特に、食とかお酒に関するワークショップやイベントは相性がいいですね。キッチンもありますし。

あと、イベントは場所を貸切にしてクローズな雰囲気でやるのではなくて、カフェラウンジの一角にあるテーブルだけを貸し切ってやっています。
そうしていると、たまたま話を聞いていた人が「混ざっていいですか」と、つながりが増えていくんです。
ここにお茶をしに来たから出会ったみたいな、計算できない化学変化みたいなのがたくさん起きたらいいなと思っています。​

▲カフェラウンジで行われた過去のイベントの様子

ー最後にLACユーザーのみなさんへメッセージをお願いします。

LACいわき拠点のある場所はあくまでもいわき市の入り口だと思っていて、ここから気軽に海とか山とか温泉とか行けるので、ぜひゆっくり長めに滞在してくださいね。

時間に余裕を持ってきてもらえると、定番の観光地に加えて、地元の人が楽しむようなじんわりとした楽しみもできると思うので、それを味わってもらいたいです。
気候もいいですし、特にいわきの野菜や魚介類は1年中おいしいのでそこも楽しんでもらえればと思います。

《ライター:Haruki


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