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「田舎に可能性を感じる人」と「バイタリティある三豊の人」が共創できる場にしたい | LAC三豊コミュニティマネージャー・橋村さんインタビュー

「LivingAnywhere Commons三豊」(以下、LAC三豊)は、香川県三豊市伊尾地区にある拠点です。

水面を鏡のようにして写真が撮れることから、インスタ映えスポットとしても名高い「父母ヶ浜」までは徒歩3分!

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▲夕暮れ時の父母ヶ浜

瀬戸内海に落ちていく夕日が美しいことで有名な父母ヶ浜ですが、晴れた日は陽の光が降り注ぎ、ワーケーションに最適な場所です。

LAC三豊のコミュニティマネージャー橋村 愛希葉(はしむら あきは)さんは香川県高松市のご出身で、フランスの日本国総領事館に勤めた後に香川へ戻り、三豊を拠点に時代に適応する生き方・働き方を追求する「Independent Producer」という肩書でご活躍されています。

フランスから香川に戻ってくるきっかけや、なぜ高松ではなく三豊だったのか、コミュニティマネージャーであり自ら移住者でもある橋村さんに、三豊の町や拠点となるLAC三豊の魅力についてお話を伺いました。

(※現在は別の方がコミュニティマネージャーを担当しています)

多様性を認め合う姿に惹かれて海外へ、フランスの日本国総領事館に勤務

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ーー今回橋村さんにインタビューさせていただくにあたって、事前に経歴を拝見したのですが、フランスの在ストラスブール日本国総領事館にいらっしゃったんですね

はい。大学卒業後、2年ほどフランスのストラスブールの総領事館に勤めていました。

ーー総領事館ではどういうお仕事をされてたんですか?

官房班と広報文化班という班に兼属し、会計等のバックオフィス業務、公務出張のオーガナイズ、現地での日本文化イベントの企画・運営などの業務に携わらせていただきました。

ーーすごい…。幅広く活躍されていたんですね。
いきなり海外で働くってなかなかできないと思うんですけど、結構早い段階から海外へのあこがれみたいなものはあったんですか?

香川県で生まれ、小中高と香川県で過ごしていたんですが、ずっと同じところにいてちょっと疲れてしまって。コミュニティが小さいと言うんでしょうか…香川県は一番ちっちゃい県ですし。それで海外に出たいと思い「海外に行くには留学しないと!」と、関西にある外国語大学に通いました。

ーーなるほど。地方から都会に出たいという話はよく聞くのですが、いきなり海外だったんですね。

「みんな一緒。こうでなければならない」というのが嫌だったんだと思います。

高校はチアリーディング部で、もちろん好きで入ったんですけど、チア以外にもスケボーやギターもやっていたんですね。でもそんな人私は以外にいなくて。
そこにも「こうあるべき」みたいなものがあってなんか肩身が狭かったです。

その当時に見ていた海外ドラマで多様性を認め合う姿に惹かれたのが、いきなり海外に出たいと思ったきっかけでしたね。

ーーひとくちに海外と言っても様々な国がありますけど、なぜフランスだったんですか?

大学に入ってカナダへ留学し、カナダ在住のフランス人コミュニティに入ったんですね。そこで初めて、年齢・経歴・学歴を聞かれず建設的な議論を経験できたんです。

フランスは歴史上の経緯からいろんな民族がいることもあって、「フランス人」の定義が難しいんですよ。だから「フランス語を喋る人がフランス人」と言われるように、その人自身の価値観を問うカルチャーがあります。

例えば日本だと、意見を聞かれたときに「○○さんと一緒です」と言うことがあると思うんですが、フランスだと「全く同じ意見を持ってる人なんて居る?あなたはどうなの?」というスタンス。ちゃんと個性を評価してくれる。

それが卒業後にフランスへ行くきっかけになりました。

フランスで気づいた地元・香川のポテンシャル

ーーフランスに行かれて総領事館で働いていたのに地元に帰ってくる。ある意味真逆に感じるのですが、どんな気持ちの変化があったのですか?

フランスで過ごしたのがストラスブールという都市圏人口45万人の地方都市でした。
そこに住んでいる人は自分の土地に誇りを持っているんですね。

私が友人に「休日にパリに出かける」と言うと「なんでパリに行くの?私はここでぶどうを摘んでワインを作るのよ」と。「地元で楽しめるのになんでパリへ行くの?」というくらい地元を愛してるんですよ。

ちょうどそのころインバウンドの盛り上がりや、瀬戸内国際芸術祭などで、地元が国際的に評価されはじめていた時期で「あれ?香川ポテンシャルあるやん」と思い始めたんです。

ーーストラスブールの人の地元愛に感化されて香川の良さをあらためて知ったわけですね。

ストラスブールの人たちは、バカンスの過ごし方ひとつとって見ても、人が集まるような観光地に行くことはなく、穴場を見つけて暮らすような旅をしていたんですね。

そういう経験からも、観光地化されてない香川県のポテンシャルの高さを感じたんです。

世界一バカンス好きなフランス人が旅行するときに重要視する天気の良さ、そして山、里、海、島、美味しいご飯、歴史・文化的背景のある土地、それらが全部ある。

ストラスブールでは若者が自分の土地に誇りを持っているし、若い人が第一次産業に携わっている。その姿がかっこいいと思えました。

ずっとそれまでは、外に行けば無いものが見つかると思っていたけれど、無いものを自分たちで創ろうとしない姿勢が受け身だったなと思いましたね。

三豊はセルフプロデュース力の高い人たちが「無いなら自分たちでつくる」という土地柄

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▲少し離れた位置から父母ヶ浜と「LAC三豊」がある仁尾地区を望む

ーー日本に戻ってこられた際に、なぜ地元の高松ではなく三豊だったんですか?

高松は市場が飽和していて挑戦が難しかったんですね。
私は三豊の空気感が好きだし、もともと土地が持つパワーがすごい。

「賀茂神社」というところがあるんですが、そこに「注連石」というのがあって、漁船の航行に邪魔だった石を樽に乗っけてここに置いたらしいんですよ。

ーー(実際に連れてってもらいました)す、すごい…。

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▲賀茂神社にある注連石

これは明治時代の話なんですけど、この時代から自分たちでなんとかする気質があった。
セルフプロデュース力の高い人たちが「無いなら自分たちでつくる」という土地柄なんですよね。

またもともと漁港の町なので人を受け入れる気質もあって、地域内外・年齢・経歴問わず、手を取り合ってチャレンジする人を応援するし、自分もチャレンジする。

ーーチャレンジする人を応援するだけでなく、自分もチャレンジするという環境は良い刺激になりますね。

行政もそれに応えてくれます。同性婚を認めるのもすごく早かったんですよ。(※三豊市は令和2年度の「SDGs未来都市」にも選ばれています)

町自体が多様性の受け入れも推進していますし、規模が大きくないので、意思決定のスピードがものすごく速いんです。
民間で見ても行政で見ても、三豊はいいですね。

実は総領事館時代の仕事が活かせるコミュニティマネージャー

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ーーLACのコミュニティマネージャーになったきっかけは?

この場所は「瀬戸内ワークスレジデンス"GATE"」という施設で、運営している瀬戸内ワークスさんから利用者である私にお話をいただいたのがきっかけです。

今年1月からLACの拠点としても運用していますが、初日から来訪される方がいるなど、LACの拠点になったことで来られる方は確実に増えたと感じています。

ローカルを「ダサい」「野暮ったい」と捉えるのではなく、違う目でいいなと思ってくれる人が来てくださっている感じですね。

コミュニティマネージャーは今までの経歴からするとまるで違う仕事のように感じられると思いますが、実は総領事館にいたときも、来訪される方に町の案内をするというのが仕事の1つだったんです。なので意外と仕事に違和感はありませんでした。

ーーちゃんと流れがあってなるべくしてコミュニティマネージャーになられた感じがします。

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▲三豊の魅力を力説してくださる橋村さん

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▲教えていただいた三豊の古い町並み

古い町並みの入口に位置するLAC三豊。移住希望者の入口にもなる、まさに「GATE」と言える場所

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ーーLAC三豊の魅力はなんだと思いますか?

LAC三豊はさきほどお伝えしたとおり「瀬戸内ワークスレジデンス"GATE"」という施設なんですけれど、名前のとおりちょうど古い町並みの入口に位置しています。

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▲「GATE」を横から見たところ。旧道との分かれ道に立地。

「GATE」は移住のハードルを低くするために、地域の「仕事」と「住まい」と「コミュニティ」が用意されていて、住む家が見つかるまでは建物の2階に住むことができます。(※LAC会員が利用できるのは1階のみです)

さらに地元のパートナー企業さんが運営する施設で、週末に就業体験ができる「Weekend Works」という制度があります。実際にLACの会員さんで、カフェのアルバイト体験をしていただいたこともありました。

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▲「ホストカンパニー企業」のみなさん 「瀬戸内ワークスレジデンス"GATE"」のホームページより

「GATE」には地元の多くの企業さんや事業主さんが関わっているので、私もここに滞在するようになってから、より多くの人とつながることができました。

ここには私の大学時代の友人も一緒に住んでいるのですが、まだ来て数ヶ月なのに彼女の勤務先にここで知り合った人がたくさん来て、彼女の同僚がびっくりするというエピソードもありました(笑)

ーーそれは面白いですね(笑)。橋村さんがお話されていた人を受け入れる気質「地域内外・年齢・経歴問わず」というのがよくわかるエピソードだと思います。

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▲「GATE」のコミュニティスペースにある手作りの地図には、訪れた人やここを拠点にする人たちのひとくちメモが

私は2020年10月から「GATE」に入居しているのですが、三豊市内に住む場所が見つかったのでこの4月で退居するんです。
住む期間に期限はないんですけれど、あくまで「GATE」なので自分が占拠しちゃいけないなと。4月からは別の方の入居が決まっています。

ーーまさに三豊の「GATE」として機能しているんですね。4月以降もコミュニティマネージャーは続けられるんですか?

はい。「GATE」は退居しますが近くに住みますし、引き続きコミュニティマネージャーの活動は行っていきたいと思っています。

競争ではなく、共創できる場にしたい

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ーー今後、LAC三豊をどんなスペースにしていきたいですか?

LACの拠点になってから、ローカルをポジティブに捉えてくださる方が多く来てくださっています。その方々と、バイタリティというか生命力のある地域の人をつないでいきたいですね。

都市部だとどうしても競争になってしまいがちですが、この町にはまだまだスキマがあるので、そこをいっしょに埋めていく、共創できる場になっていけばいいなと思っています。

土地と人のパワーを感じてほしい

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ーー最後に、LAC三豊にこれから訪れようとしている方へのメッセージをお願いします。

三豊は異色な人が多すぎてそれが「普通」になってしまう町なので、土地と人のパワーを感じて欲しいです。

距離感が近いのでキーマンになる人にすぐ会えますし、都市部以上にスピード感があってワクワクできる。町ができていく過程が見えるので、長期滞在して時間をおいてもう一度訪れると、変化が感じられる場所だと思います。

ちょっと停滞していたり、悩んだりしていても、来てもらえばパワーを持って帰ってもらえる。
その人が役に立つ何かしらのスキマがあるし、地方創生・ローカルビジネスの面でも勉強になると思います。

ローカルだけど最先端の町、三豊にぜひ来てください!

LAC三豊は、今まさに発展途上にある「町のハブ」になる場所

取材中、早朝に散策した父母ヶ浜周辺に何件かカフェやレストランがあったのですが、空きスペースでは今もなお新たな施設が建設中でした。

都心部でもないのに、開発が進んでいる様子はとても新鮮に感じました。

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▲父母ヶ浜沿いにある3月末に新たにできる土産物屋さん

また海岸沿いにあるキッチンカーのコーヒーショップには、店主の出身地でもある三豊を愛するメッセージが。

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▲「僕の大好きなこの町を、少しでも好きになってもらいたい」というメッセージをかかげるキッチンカーのコーヒーショップ

観光地に出店しているお店を地元の若い人がやっていて、さらに「この町が好き」というメッセージを掲げているのを見たことがなかったので、これもとても新鮮でした。

LAC三豊の周辺を散策するだけでも、「土地と人のパワー」を実感することができました。

観光地として訪れただけでは決して知ることのできなかった魅力を教えてくれた、コミュニティマネージャーの橋村さん。

橋村さん自身コミュニティマネージャーの活動以外にもいろんなプロジェクトに挑戦されていて、橋村さんのお話を聞くだけでもパワーと可能性を感じました。

LAC三豊は移住希望者を受け入れつつ、新しい人が来ることで今まさに発展途上にある「町のハブ」になっていく場所だなと思いました。

土地と人からパワーを感じられる町にあるLAC三豊。ぜひ訪れてみてください。

【LivingAnywhere Commons三豊 公式ホームページ】

《ライター:山﨑 謙

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