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その63)総合芸術でバズる若者たち

※これは、作者が想定するベーシックインカム社会になった場合を想定した、近未来の物語です。

ベーシックインカムの時代は創作に打ち込む若者たちも大勢現れた。

フルヤさんは生成AIを使い、対話だけで簡単なプログラムを作れるようになった。マイティさんは生成AIを使って素早くイラストを描いている。いかにAIを使ったっぽくしないかがミソらしい。
シナリオライターのアズマさんも作品のプロットはAIにネタを打ち込んで、出てきた案の中から使えそうなものをブラッシュアップして作っている。自称マルチタレントのイノウエくんはAIでいろいろな役を作って、一人ホームドラマという自主映画を作った。これは全て自分が演じているのだが、声や姿を置き換えて合成しているのだ。
音楽制作をしているミートさんは、楽器は弾けないがAIと対話しながら音楽を作っている。

彼らは普段はアルバイトやパートタイムで生計を立て、それ以外の時間は寝るか食べるか用を足すか創作をしている。もっぱらその仕事も少なくなりつつある。

ベーシックインカムになって、雇用労働の時間が減ってきたので、より時間をかけたり、AIを活用してより素早く完成度の高いものを作れるようになっていった。そんな中、クリエイターが集まるWeb上のサロンで、お互いがディスカッションする機会があった。それぞれの作品を披露し合っているうちに、みんなで力を合わせてなにか作ってみようかという話になった。

5人でコンセプトや伝えたいことや設定などを決めて作業にかかった。作業はAIに任せる他、他のクリエイターにも募集した。ギャラはバズったときの成功報酬である。著作権の確認や経理作業、必要な契約書の作成などはAIにやってもらうことにした。今は対話でAIにやらせることができる。5人はそれぞれ得意なことが違うので、それぞれのグループでホスト役となって運営した。お互いがお互いの分野で決定権を持つようにした。

5人は新しい問題が出るたびに相談し合ったりして作品の品質向上に励んだ。永遠に作り続けてしまうリスクを避けるため、予算と締切をしっかりと守るようにした。お互いをサポートしあいやすいよう、懇親イベントを何度も行った。こうして力を合わせて作る作品は段々と精度が上がっていった。

そうやって、繰り返し作って行った作品の中からものすごく再生された作品が生まれた。それによって収入が発生し、彼らの新たな創作意欲の糧になっていったのだった。ファンも増えて、新作を期待する声も高まった。彼らは人気バンドのように次々と新作を作り、人気を得ていった。

ベーシックインカムの時代は人気を得ることもまた収入を得る有効な手段であると言えるかもしれない。

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