その29)タイムリッチ1・自己実現社会
国から配られるベーシックインカムは最低限の生活費しか出ない可能性があります。人は常に欲望が増大する傾向にあるので、いくらあっても足りないと感じるからというのが理由です。支給額に関しては常に不満が出る世の中になっているでしょう。
一方で、汎用AIやロボットに多くの賃金労働が代替されていくという世の中であれば、人々は自由にできる時間である「可処分時間」が増えていきます。お金は最低限の生活費しか無いけれども、自由にできる時間はたくさんあるのです。お金がたくさんあることがマネーリッチなら、時間がたくさんあるのが「タイムリッチ」と呼べます。それがBI社会がもたらす最大の恩恵と考えられます。
そんな社会になったら人々はどんな暮らしをするのでしょう。何しろ時間がたっぷりある暮らしです。今までは考えられなかったことが次々と起こるでしょう。ただ、ベーシックインカムの状況下でも自由にできる時間はその人が置かれている環境によって差が出てくるので、そこはまた別の投稿で考えていきます。
「最低限のお金しか無いけど、時間はたっぷりある人」の代表は若者です。しかもバイトにも行かなくて良いとなれば、とにかくやりたいことをするのではないかと思います。体力もあるし、少々眠らなくても大丈夫です。今の社会と違うのは学校を出たら就職するという概念がなくなっていくことです。むしろ、死ぬまでになにをするということに重きがおかれてきます。年齢なりに求めるものや求められるものは違ってくるかもしれませんが、究極の自己実現社会になるといえるでしょう。
自己実現のための行動とは、その人にとっての幸せを目指す行為です。なにかの分野でトップを目指す人はもちろんいるでしょう。読書に明け暮れるかもしれません。日本中を旅する人もいるでしょう。ベーシックインカムが世界規模になれば世界中を旅するかもしれません。自己満足の世界を追求したり、集団で何かを実現しようとする人もいるでしょう。年をとって身体が動かなくなると、体を動かさずにできる楽しみを見つける・・・そんな社会を想像しました。
生きている間ずっと青春みたいな社会になるかもしれません。
・・・と、まずはバラ色の部分を書いてみました。しかし、タイムリッチは時間がたくさんある暇な人をたくさん作る代わりに、新しい問題も次々と起きると思っています。
ベーシックインカムは何でもありというわけではなく、世の中の多くのものがコモディティ化した上に、限られた資源をみんなで維持していく超循環社会&超定番社会です。新しい社会に馴染めない人も出てきます。そのシステムを脅かす者は罰せられたり、排除されたりするでしょう。学校での教育はそのためのルールを学ぶことが基本になるでしょう。
次回は、タイムリッチ時代の自治体の変化について考えてみます。
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